簿ケースで学ぶ簿記3級
目次▼

第7部 決算

第19章帳簿の締切と財務諸表の作成

毎年3月31日、帳簿の半分は「消え」、半分は「生き残る」。なぜ?

決算の最後に、売上や給料の勘定はゼロに戻され、現金や借入金の勘定は次の期へ引き継がれる。帳簿を締め切る手続きと、損益計算書・貸借対照表の完成。1年間の記録の、最後の仕上げに取りかかろう。

読了目安 45分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

この章の目次▼
  1. 012種類の勘定 ― 「フロー」と「ストック」
  2. 02決算振替 ― 収益と費用を「損益」に集める
  3. 03英米式決算法 ― 資産・負債・純資産を締め切る
  4. 04財務諸表の作成 ― 決算整理後残高試算表から
  5. 05財務諸表の表示ルール ― 「勘定科目」と「表示科目」は違う
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

決算日の深夜、帳簿の半分が「ゼロ」になる

3月31日、深夜。おかわり堂ケータリングの経理担当者は、総勘定元帳を1ページずつ締め切っていた。

売上の勘定。1年間で1,860万円が積み上がった勘定に、彼女は最後の記入をして、残高をゼロにした。給料の勘定も、仕入の勘定も、支払家賃の勘定も、次々とゼロになっていく。1年分の記録が、帳簿の上から消えていく。

ところが、現金の勘定、売掛金の勘定、借入金の勘定、資本金の勘定は、ゼロにしない。残高に「次期繰越」と書き添えて、そのまま翌年のページへと引き継いでいく。

同じ総勘定元帳の中で、ある勘定は毎年ゼロに戻され、ある勘定は何十年も残高を引き継いでいく。この違いは、いったい何なのか? そして、ゼロにされた1年分の売上や費用は、どこへ消えたのか?

012種類の勘定 ― 「フロー」と「ストック」

問いの答えは、勘定の性質の違いにある。

では、ゼロにされた1年分の収益と費用はどこへ行くのか。答えは、損益という勘定を経由して、繰越利益剰余金へ流れ込む。

02決算振替 ― 収益と費用を「損益」に集める

帳簿の締切は、次の3つのステップで行う。第18章で決算整理を終えたおかわり堂ケータリングの数字で見ていこう。

収益・費用の締切の手順

  1. 1

    収益の勘定の残高を、損益勘定の貸方に振り替える

    売上や受取手数料の勘定は、借方に同額を書いてゼロになる

  2. 2

    費用の勘定の残高を、損益勘定の借方に振り替える

    仕入や給料の勘定は、貸方に同額を書いてゼロになる

  3. 3

    損益勘定の残高(当期純利益)を、繰越利益剰余金勘定に振り替える

    損益勘定もゼロになり、利益は純資産として次期へ引き継がれる

仕訳① 収益の勘定を損益勘定へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
売上18,600,000損益18,645,000
受取手数料45,000
仕訳② 費用の勘定を損益勘定へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
損益17,245,000仕入9,460,000
給料3,600,000
支払家賃1,320,000
保険料180,000
水道光熱費480,000
通信費100,000
租税公課73,000
消耗品費186,000
貸倒引当金繰入44,000
減価償却費1,140,000
支払利息60,000
雑損2,000
法人税、住民税及び事業税600,000
仕訳③ 当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
損益1,400,000繰越利益剰余金1,400,000
損益
借方貸方
3/31 仕入9,460,0003/31 売上18,600,000
3/31 給料3,600,0003/31 受取手数料45,000
3/31 その他の費用4,185,000
3/31 繰越利益剰余金1,400,000
18,645,00018,645,000

※「その他の費用」は、支払家賃から法人税、住民税及び事業税までの11の費用(合計4,185,000円)を、紙面の都合でまとめたもの。実際の損益勘定には、勘定科目ごとに記入する。当期純損失の場合は、③が「繰越利益剰余金/損益」となる。

ANSWER ― 答え合わせ

消えた売上は、「純資産」の中で生きている

1年分の売上や費用の勘定がゼロになるのは、記録を捨てるためではない。その1年間の成績を損益勘定に集約し、差額である当期純利益だけを、純資産(繰越利益剰余金)として次期へ引き継ぐためだ。

売上1,860万円も、仕入946万円も、給料360万円も、個々の勘定としては消える。だが、それらが生み出した「140万円の利益」という成果は、繰越利益剰余金の中に積み上がり、会社の財産として生き続ける。

毎年リセットされるフローの勘定と、永遠に引き継がれるストックの勘定。その2つをつなぐ唯一の橋が、損益勘定から繰越利益剰余金への振替なのだ。おかわり堂ケータリングの繰越利益剰余金は、創業以来の利益の蓄積である158万円に、今期の140万円が加わり、298万円になった。

03英米式決算法 ― 資産・負債・純資産を締め切る

資産・負債・純資産の勘定は、残高を次期に繰り越して締め切る。3級では、仕訳をせずに、勘定の上で直接「次期繰越」と記入して締め切る英米式決算法を学ぶ。

英米式決算法による締切

  1. 1

    残高の反対側に「次期繰越」と記入する

    資産の勘定(借方残高)なら貸方に、負債・純資産の勘定(貸方残高)なら借方に、残高と同額を「次期繰越」として記入する(実務では赤字で書く)

  2. 2

    借方と貸方の合計を一致させて締め切る

    合計額を記入し、二重線を引いて締め切る

  3. 3

    翌期首に「前期繰越」と記入する

    次期の最初の日付で、もとの側に「前期繰越」として残高を記入する(開始記入)

現金
借方貸方
4/1 前期繰越380,000期中の支払い2,968,000
期中の入金3,000,0003/31 次期繰越412,000
3,380,0003,380,000
4/1 前期繰越412,000
繰越利益剰余金
借方貸方
3/31 次期繰越2,980,0004/1 前期繰越1,580,000
3/31 損益1,400,000
2,980,0002,980,000
4/1 前期繰越2,980,000

※現金勘定の期中の入出金は、紙面の都合で合計額にまとめている。英米式決算法では、資産・負債・純資産の締切に仕訳は行わない。締め切った後、各勘定の次期繰越の金額を集めて繰越試算表を作り、借方合計と貸方合計の一致を確かめる。

04財務諸表の作成 ― 決算整理後残高試算表から

いよいよ最後の仕上げだ。決算整理後の各勘定の残高を集めた決算整理後残高試算表から、損益計算書と貸借対照表を作る。第3問では、この試算表(または決算整理前残高試算表と決算整理事項)をもとに、財務諸表を作らせる問題がよく出る。

決算整理後残高試算表(×8年3月31日)
借方勘定科目貸方
412,000現金
5,357,000普通預金
2,800,000売掛金
280,000繰越商品
12,000貯蔵品
60,000前払保険料
4,200,000備品
2,400,000車両運搬具
500,000差入保証金
買掛金1,150,000
当座借越150,000
借入金2,000,000
未払消費税940,000
未払法人税等400,000
未払利息30,000
前受手数料15,000
貸倒引当金56,000
備品減価償却累計額1,860,000
車両運搬具減価償却累計額1,440,000
資本金5,000,000
繰越利益剰余金1,580,000
売上18,600,000
受取手数料45,000
9,460,000仕入
3,600,000給料
1,320,000支払家賃
180,000保険料
480,000水道光熱費
100,000通信費
73,000租税公課
186,000消耗品費
44,000貸倒引当金繰入
1,140,000減価償却費
60,000支払利息
2,000雑損
600,000法人税、住民税及び事業税
33,266,000合計33,266,000

表は横にスクロールできます →

※決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は、まだ当期純利益を振り替える前の金額(1,580,000円)であることに注意。

損益計算書(勘定式)

損益計算書 おかわり堂ケータリング株式会社 ×7年4月1日から×8年3月31日まで
費用金額収益金額
売上原価9,460,000売上高18,600,000
給料3,600,000受取手数料45,000
支払家賃1,320,000
保険料180,000
水道光熱費480,000
通信費100,000
租税公課73,000
消耗品費186,000
貸倒引当金繰入44,000
減価償却費1,140,000
支払利息60,000
雑損2,000
法人税、住民税及び事業税600,000
当期純利益1,400,000
合計18,645,000合計18,645,000

貸借対照表(勘定式)

貸借対照表 おかわり堂ケータリング株式会社 ×8年3月31日
資産内訳金額負債及び純資産金額
現金預金5,769,000買掛金1,150,000
売掛金2,800,000借入金2,150,000
貸倒引当金△56,0002,744,000未払費用30,000
商品280,000前受収益15,000
貯蔵品12,000未払消費税940,000
前払費用60,000未払法人税等400,000
備品4,200,000資本金5,000,000
減価償却累計額△1,860,0002,340,000繰越利益剰余金2,980,000
車両運搬具2,400,000
減価償却累計額△1,440,000960,000
差入保証金500,000
合計12,665,000合計12,665,000

表は横にスクロールできます →

※現金と普通預金は「現金預金」としてまとめて表示している(問題で別々の科目が指定されていれば、それに従う)。借入金2,150,000円は、借入金2,000,000円と当座借越150,000円の合計。

05財務諸表の表示ルール ― 「勘定科目」と「表示科目」は違う

財務諸表では、帳簿の勘定科目をそのまま使わず、読み手に分かりやすい表示科目に置き換えるものがある。第3問で最も点差がつくのが、この表示のルールだ。

勘定科目と表示科目の主な違い
勘定科目財務諸表での表示注意点
売上売上高損益計算書
仕入(決算整理後)売上原価損益計算書。整理後の仕入勘定の残高
繰越商品商品貸借対照表
現金・普通預金・当座預金現金預金まとめて表示することが多い
貸倒引当金売掛金などから控除して表示「売掛金 2,800,000 貸倒引当金 △56,000 → 2,744,000」
減価償却累計額各固定資産から控除して表示固定資産ごとに差し引く
前払保険料・前払家賃など前払費用貸借対照表
未収利息・未収家賃など未収収益貸借対照表
未払利息・未払給料など未払費用貸借対照表
前受家賃・前受手数料など前受収益貸借対照表
当座借越借入金貸借対照表
繰越利益剰余金繰越利益剰余金(当期純利益を加えた金額)試算表の金額+当期純利益

THINK ― 判断してみよう

投資家と銀行は、最初にどちらの決算書を開くのか?

おかわり堂ケータリングの社長が尋ねてきた。「来月、新しいメインバンク候補の銀行と、出資を検討している投資ファンドの両方に決算書を見せることになった。彼らは、損益計算書と貸借対照表の、どちらを先に見るのかな?」。あなたなら、どう答え、どんな準備をするか?

考え方の例を見る▼

答えは「相手によって違う。そして、プロは必ず2枚をつなげて読む」だ。

銀行は、多くの場合、貸借対照表から開く。銀行の最大の関心は「貸したお金が返ってくるか」だからだ。純資産は十分か(債務超過ではないか)、借入金は過大ではないか、手元の現金預金は十分か。そのうえで損益計算書を見て、返済の原資となる利益とキャッシュを生む力を確かめる。

投資家は、多くの場合、損益計算書から開く。売上の成長率と利益率から、会社の稼ぐ力と将来性を見るためだ。そのうえで貸借対照表と組み合わせて、預けたお金がどれだけ効率よく利益を生んでいるかを確かめる。

おかわり堂ケータリングの主な経営指標

売上総利益率

49.1%

(18,600,000-9,460,000)÷18,600,000

当期純利益率

7.5%

1,400,000÷18,600,000

自己資本比率

63.0%

純資産7,980,000÷総資産12,665,000

ROE(自己資本利益率)

17.5%

1,400,000÷7,980,000(期末の純資産で計算)

準備としては、この4つの指標を前期と比べた資料を用意したい。自己資本比率63%は、銀行に対して「財務の安全性は高い」と示す材料になる。ROE17.5%は、投資家に対して「預かったお金を効率よく増やしている」と示す材料になる。

ただし、どちらの相手にも必ず聞かれる質問がある。「この利益は、来年も続くのか?」。決算書は過去の通知表だ。財務の仕事は、通知表を正確に作ったうえで、そこからこれから先の見通しを数字で語ることである。

06確認問題

問1決算整理後の収益・費用の勘定残高は次のとおりだった。(1)収益の振替、(2)費用の振替、(3)当期純利益の振替の仕訳をしなさい。

売上 800,000円、受取利息 5,000円、仕入(売上原価)500,000円、給料 200,000円

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仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
売上800,000損益805,000
受取利息5,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
損益700,000仕入500,000
給料200,000
仕訳(3) 805,000-700,000=105,000円
借方科目金額貸方科目金額
損益105,000繰越利益剰余金105,000

問2決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は300,000円(貸方)、当期純利益は120,000円だった。貸借対照表に表示する繰越利益剰余金はいくらか。また、当期純損失50,000円だった場合はいくらか。

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当期純利益の場合:300,000+120,000=420,000円

当期純損失の場合:300,000-50,000=250,000円

問3次の勘定科目を、貸借対照表または損益計算書の表示科目に直しなさい。

(1) 繰越商品 (2) 前払保険料 (3) 未払家賃 (4) 前受地代 (5) 仕入(決算整理後) (6) 当座借越

解答・解説を見る▼

(1) 商品 (2) 前払費用 (3) 未払費用 (4) 前受収益 (5) 売上原価 (6) 借入金

問4英米式決算法により買掛金勘定を締め切る。期中の借方合計(支払い・返品)は4,200,000円、貸方合計(前期繰越と仕入)は4,750,000円だった。次期繰越の金額と、それを記入する側を答えなさい。

解答・解説を見る▼

4,750,000-4,200,000=550,000円を、借方に「次期繰越」として記入する(買掛金は負債なので貸方残高。残高の反対側に記入して締め切る)。翌期首には、貸方に「前期繰越 550,000」と記入する。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓収益・費用はフローの勘定。期末に損益勘定へ振り替えてゼロにし、毎年数え直す
  • ✓損益勘定の残高(当期純利益)は、繰越利益剰余金へ振り替える。これがフローとストックをつなぐ唯一の橋
  • ✓資産・負債・純資産はストックの勘定。英米式決算法で「次期繰越」と記入して締め切り、翌期首に「前期繰越」と記入する
  • ✓財務諸表は決算整理後残高試算表から作る。売上→売上高、仕入→売上原価、繰越商品→商品などの表示ルールに注意
  • ✓貸借対照表の繰越利益剰余金=試算表の金額+当期純利益
  • ✓銀行は貸借対照表から、投資家は損益計算書から読み始めることが多い。プロは必ず2枚をつなげて読む