簿ケースで学ぶ簿記3級
目次▼

第6部 国家と時間

第14章税金(租税公課・法人税等・消費税)

消費税は「預かったお金」。それを使い込んだ会社の末路

行列のできるラーメン店が、たった1枚の納付書で窮地に立たされた。会社が払う税金は、費用になる税金、利益にかかる税金、そして客から預かる税金の3種類。とりわけ消費税の仕組みを知らない経営者は、知らないうちに「他人のお金」を使い込んでいる。

読了目安 35分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

この章の目次▼
  1. 01会社が払う税金は、3種類に分けて考える
  2. 02費用になる税金 ― 租税公課
  3. 03利益にかかる税金 ― 法人税、住民税及び事業税
  4. 04預かる税金 ― 消費税
  5. 05答え合わせ ― 1,200万円は、最初から「客のお金」だった
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

年商2億円の人気店を追い詰めた、1枚の納付書

京都・四条烏丸。濃厚な鶏白湯スープで行列が絶えないラーメン店「麺屋とりの巣」は、市内に5店舗を構え、年間の売上は税込で2億2,000万円に達していた。

決算から2か月後。経営者のもとに、その年の消費税の納付期限が迫っていた。納めるべき消費税は1,200万円。

ところが、会社の預金口座には300万円しかなかった。

売上は過去最高。店はいつも満席。不正もない。それなのに、なぜ1,200万円が払えないのか。そもそも、この1,200万円は、いったい誰のお金だったのか?

01会社が払う税金は、3種類に分けて考える

問いに入る前に、会社に関わる税金を整理しておこう。簿記では、税金を次の3つに分けて処理する。

会社に関わる税金の3分類
分類主な税金勘定科目
①費用になる税金固定資産税、自動車税、印紙税租税公課(費用)
②利益にかかる税金法人税、住民税、事業税法人税、住民税及び事業税
③預かる税金消費税、源泉所得税仮受消費税・仮払消費税、所得税預り金

①は、事業を営むために払う「経費」としての税金。②は、会社が稼いだ利益に対してかかる税金。③は、会社が負担するのではなく、客や従業員が負担する税金を、会社が一時的に預かって納める税金だ。この区別が、問いを解く鍵になる。

02費用になる税金 ― 租税公課

固定資産税は、土地・建物・事業用の設備などを持っていることに対してかかる税金だ。自動車税は自動車の所有者に、印紙税は領収書や契約書などの文書を作ったときにかかる(収入印紙を貼って納める)。

これらは、事業を営むための経費と同じ性質なので、租税公課(そぜいこうか・費用)で処理する。

例題ナイトオウル交通の租税公課

(1) 車庫の土地・建物に対する固定資産税の納税通知書(年税額1,200,000円)を受け取り、第1期分300,000円を普通預金から納付した。

(2) バス20台分の自動車税1,000,000円を、普通預金から納付した。

(3) 貸切バスの代金の領収書に貼るため、収入印紙20,000円分を現金で購入した。

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仕訳(1) 固定資産税は租税公課(納付した分を計上)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課300,000普通預金300,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課1,000,000普通預金1,000,000
仕訳(3) 収入印紙の購入も租税公課
借方科目金額貸方科目金額
租税公課20,000現金20,000

※固定資産税の納税通知書を受け取った時点で、年税額の全額を「租税公課/未払金」と計上し、納付のつど未払金を減らす方法もある。問題文の指示に従おう。また、決算日に使わずに残っている収入印紙や郵便切手は、「貯蔵品」として資産に振り替える(第15章)。

03利益にかかる税金 ― 法人税、住民税及び事業税

会社が利益を出すと、その利益に対して法人税(国税)、住民税(地方税)、事業税(地方税)がかかる。簿記では、この3つをまとめて法人税、住民税及び事業税(法人税等)という勘定で処理する。

法人税等は、決算で利益が確定してから計算する。ただし、前期の税額が一定以上の会社は、期の途中で、前期の実績をもとにした税額の半分ほどを先に納める(中間申告・中間納付)。

法人税等の1年間の流れ

  1. 1

    期の途中:中間納付

    前期の実績などにもとづき、税額の一部を先に納める。まだ当期の税額は確定していないので「仮払法人税等」(資産)とする

  2. 2

    決算日:当期の税額を計上

    当期の利益にもとづく年税額を「法人税、住民税及び事業税」(費用)として計上し、中間納付額を差し引いた残りを「未払法人税等」(負債)とする

  3. 3

    決算後:確定申告・納付

    原則として決算日から2か月以内に申告し、未払法人税等を納付する

例題ナイトオウル交通の法人税等

(1) 11月、法人税等の中間申告を行い、6,000,000円を普通預金から納付した。

(2) 3月31日の決算で、当期の法人税等の年税額が14,000,000円と計算された。

(3) 5月、確定申告を行い、未払分を普通預金から納付した。

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仕訳(1) 中間納付:仮払法人税等(資産)
借方科目金額貸方科目金額
仮払法人税等6,000,000普通預金6,000,000
仕訳(2) 決算:年税額を計上し、中間納付額との差額を未払法人税等とする
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税14,000,000仮払法人税等6,000,000
未払法人税等8,000,000
仕訳(3) 確定納付
借方科目金額貸方科目金額
未払法人税等8,000,000普通預金8,000,000

04預かる税金 ― 消費税

いよいよ問いの核心、消費税だ。

1杯の牛丼をめぐる消費税のバトンリレー(税率10%で単純化)
段階売値(税抜)受け取った消費税支払った消費税納める消費税
洛北ミート → おかわり堂200円20円0円20円
おかわり堂 → 客500円50円20円30円
合計50円(=客が負担した消費税)

表は横にスクロールできます →

※実際には、食材の仕入れや持ち帰りの飲食料品には軽減税率(8%)が適用されるなど、取引ごとに税率が異なる。ここでは仕組みを示すため、税率を10%に統一している。

税抜方式の仕訳 ― 「仮払」と「仮受」で預かりを管理する

3級では、消費税を売上や仕入と区別して記録する税抜方式を学ぶ。

例題おかわり堂の消費税

(1) 洛北ミートから牛肉を仕入れ、代金440,000円(うち消費税40,000円)は掛けとした。

(2) 1日の売上は、店内飲食分が税抜500,000円(消費税10%)、持ち帰り分が税抜300,000円(消費税8%)で、代金は現金で受け取った。

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仕訳(1) 支払った消費税は「仮払消費税」
借方科目金額貸方科目金額
仕入400,000買掛金440,000
仮払消費税40,000
仕訳(2) 受け取った消費税は「仮受消費税」:50,000円+24,000円=74,000円
借方科目金額貸方科目金額
現金874,000売上800,000
仮受消費税74,000

売上・仕入は税抜の金額で記録し、消費税の部分は仮払消費税・仮受消費税として別に記録する。こうすることで、「預かっている消費税」と「支払った消費税」が帳簿の上で常に見えるようになる。

※牛丼チェーンでは、同じ牛丼でも店内で食べれば10%、持ち帰れば8%の消費税がかかる(軽減税率)。3級の試験では、問題文で示された税率(通常は10%)で計算すればよい。

決算 ― 差額が「納める消費税」になる

決算では、仮受消費税と仮払消費税を相殺し、その差額を未払消費税(負債)として計上する。

仕訳決算:仮受消費税の残高が5,200,000円、仮払消費税の残高が3,100,000円だった
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税5,200,000仮払消費税3,100,000
未払消費税2,100,000
仕訳確定申告にもとづき、未払消費税2,100,000円を普通預金から納付した
借方科目金額貸方科目金額
未払消費税2,100,000普通預金2,100,000

※仮払消費税のほうが多いときは、差額が税務署から還付される。この還付を受ける権利は「未収還付消費税」(資産)で処理する。

05答え合わせ ― 1,200万円は、最初から「客のお金」だった

ANSWER ― 答え合わせ

経営者は、預かったお金を自分の売上だと思って使っていた

麺屋とりの巣の年間売上、税込2億2,000万円。そのうち2,000万円は、客から預かった消費税だった。店の本当の売上(税抜)は2億円だ。

一方、食材や光熱費、家賃などの支払いに含まれていた消費税は800万円。差し引き1,200万円を、店は国に納めなければならない。

麺屋とりの巣の消費税(年間)
項目金額
売上で受け取った消費税(仮受消費税)2,000万円
仕入れ・経費で支払った消費税(仮払消費税)△800万円
納めるべき消費税(未払消費税)1,200万円

経営者は、税込の売上がすべて店のお金だと思い、新店の内装や設備に次々と使っていた。だが、そのうち1,200万円は、最初から国に納めるために客から預かっていたお金だった。

しかもラーメン店は、売上に占める人件費の割合が高い。給料には消費税がかからないため、人件費が多い事業ほど、差し引ける消費税(仮払消費税)が少なくなり、納める消費税が大きくなる。

税抜方式で仮受消費税を毎日記録していれば、「このお金は預かりものだ」ということが、帳簿の上で常に見えていたはずだ。

THINK ― 判断してみよう

消費税で二度とつまずかないために

麺屋とりの巣の経営者から、相談を受けた。「来年からは同じ失敗をしたくない。どうすればいいか」。あなたなら、どんな仕組みを提案するか?

考え方の例を見る▼

ポイントは、「預かったお金」を物理的にも心理的にも切り離すことだ。

  • 月次で未払消費税を計算する:毎月の試算表で、仮受消費税から仮払消費税を引き、その月に積み上がった「納めるべき消費税」を把握する。
  • 納税用の口座に毎月積み立てる:計算した金額を、毎月、普段使いの口座とは別の「納税専用口座」に移す。この口座のお金には手をつけないルールにする。
  • 中間納付を活用する:前年の納税額が一定以上の事業者は、消費税も期の途中に中間納付を行う。年1回の一括払いより、資金繰りの山が小さくなる。
  • 資金繰り表に納税予定を入れる:法人税等と消費税の納付月は、毎年ほぼ決まっている。数か月先の資金繰り表に必ず織り込み、設備投資の計画と重ならないようにする。

そして、経営判断の場では、売上を税抜で語る習慣をつける。「年商2億2,000万円の店」ではなく「年商2億円の店」。それだけで、使ってよいお金の感覚は大きく変わる。

06確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 本社建物の固定資産税の第2期分100,000円を、普通預金から納付した。

(2) 収入印紙5,000円を購入し、現金で支払った。

(3) 法人税等の中間申告を行い、1,500,000円を普通預金から納付した。

(4) 決算で、当期の法人税等が3,800,000円と計算された。中間納付額は1,500,000円である。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課100,000普通預金100,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課5,000現金5,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
仮払法人税等1,500,000普通預金1,500,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税3,800,000仮払法人税等1,500,000
未払法人税等2,300,000

問2消費税の税率を10%、税抜方式として、次の取引を仕訳しなさい。

(1) 商品を仕入れ、代金440,000円(税込)は掛けとした。

(2) 商品を販売し、代金770,000円(税込)は掛けとした。

(3) 決算にあたり、(1)(2)の消費税を整理した(ほかに消費税の取引はない)。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 税抜400,000円・消費税40,000円
借方科目金額貸方科目金額
仕入400,000買掛金440,000
仮払消費税40,000
仕訳(2) 税抜700,000円・消費税70,000円
借方科目金額貸方科目金額
売掛金770,000売上700,000
仮受消費税70,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税70,000仮払消費税40,000
未払消費税30,000

問3次のうち、「租税公課」で処理しないものを1つ選びなさい。

ア.固定資産税 イ.収入印紙の購入 ウ.法人税の中間納付 エ.自動車税

解答・解説を見る▼

ウ。法人税の中間納付は「仮払法人税等」で処理する。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓税金は「費用になる税金(租税公課)」「利益にかかる税金(法人税等)」「預かる税金(消費税・源泉所得税)」の3つに分けて考える
  • ✓固定資産税・自動車税・印紙税は租税公課(費用)
  • ✓法人税等:中間納付は仮払法人税等、決算で年税額を計上し、残りを未払法人税等とする
  • ✓消費税(税抜方式):支払った分は仮払消費税、受け取った分は仮受消費税。決算で相殺し、差額を未払消費税とする
  • ✓消費税は客から預かったお金。税込売上を自分のお金と思うと、納付のときに資金が足りなくなる