簿ケースで学ぶ簿記3級
目次▼

ケースで学ぶ
簿記3級

身近な会社の数字で、日商簿記3級の全範囲を学ぶ

目次

PROLOGUE

  1. 序章黒字倒産と、簿記を学ぶ意味

第1部 簿記というOS

  1. 第1章5つの要素と2つの財務諸表
  2. 第2章取引・仕訳・勘定・転記

第2部 キャッシュの最前線

  1. 第3章現金と現金過不足
  2. 第4章預金・小切手・当座借越・小口現金

第3部 利益のエンジン

  1. 第5章商品売買(三分法)と売上原価
  2. 第6章商品有高帳・仕入帳・売上帳

第4部 信用という名の時限爆弾

  1. 第7章売掛金・買掛金・クレジット売掛金・受取商品券
  2. 第8章約束手形・電子記録債権・手形貸付金
  3. 第9章その他の債権・債務
  4. 第10章給料・預り金・立替金・法定福利費
  5. 第11章貸倒れと貸倒引当金

第5部 未来への投資と、会社の持ち主

  1. 第12章有形固定資産と減価償却
  2. 第13章株式会社と純資産(資本金・繰越利益剰余金・配当)

第6部 国家と時間

  1. 第14章税金(租税公課・法人税等・消費税)
  2. 第15章経過勘定(前払費用・前受収益・未払費用・未収収益)と貯蔵品

第7部 決算

  1. 第16章帳簿の体系・伝票・証ひょう・訂正仕訳
  2. 第17章試算表(合計試算表・残高試算表・合計残高試算表)
  3. 第18章決算整理と精算表
  4. 第19章帳簿の締切と財務諸表の作成

EPILOGUE

  1. 終章2級・1級、そして実務へ

APPENDIX

  1. 付録A勘定科目・完全辞典
  2. 付録B試験攻略マニュアル
  3. 付録C仕訳道場(第1問対策・64問)
  4. 付録D模擬試験(本試験形式・60分)

PROLOGUE

序章黒字倒産と、簿記を学ぶ意味

なぜ、満席の人気店は「黒字」のまま潰れたのか?

毎晩行列ができる繁盛店が、利益を出したまま倒産する。この不可解な事件を解く鍵こそ、あなたがこれから学ぶ「簿記」だ。

読了目安 15分難易度 ★☆☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸「利益」と「現金」がまったく別物だという、会社経営で最も重要なルールの1つを知る
  • ▸簿記が「記帳の作業」ではなく「会社の生死を読む技術」である理由を理解する
  • ▸簿記3級の全体像と、試験で問われることを一望する
  • ▸本書に登場する5つの会社と出会う
この章の目次▼
  1. 01「利益」と「お金」は、まったくの別物である
  2. 02まんぷく食堂の3年間を、数字で追いかける
  3. 03簿記とは「会社のカルテ」を書き、読む技術である
  4. 04簿記3級で身につく、6つの力
  5. 05簿記の全体像 ― 1年間の流れ
  6. 06試験の概要 ― 敵を知る
  7. 07登場する5つの会社

QUESTION ― この章の問い

行列の絶えない定食屋は、なぜ「黒字」のまま死んだのか

京都・百万遍。深夜まで学生の声が響くこの街に、行列の絶えない定食屋があった。

店の名は「まんぷく食堂」。から揚げ定食650円、ご飯おかわり無料。試験前の京大生が深夜1時に駆け込み、運動部員が大盛りをかき込む。開店から3年で4店舗。決算書の最終行には、毎年きっちり黒字の二文字が並んでいた。

そして4年目の秋。まんぷく食堂は、倒産した。

不正はなかった。食中毒もなかった。ライバルの値下げ攻勢も、客離れもなかった。利益は、最後まで出ていた。

では、なぜ死んだのか?

この問いの答えが分かったとき、あなたには、決算書の数字の裏側にあるお金の動きが見えるようになっている。

01「利益」と「お金」は、まったくの別物である

最初に、あなたの頭の中にある常識をひとつ壊しておきたい。

多くの人は「儲かっている会社には、お金がある」と思っている。「利益が出た」とは「お金が増えた」ことだと。

これは間違いだ。

利益とは、会計のルールに従って計算された「成績」にすぎない。一方、お金(キャッシュ)とは、いま金庫と銀行口座に実際にある「残高」だ。この2つは、驚くほど一致しない。

そして会社が死ぬのは、成績が悪いときではない。支払うべき日に、支払うお金がないときだ。従業員の給料、店の家賃、銀行への返済、食材の仕入代金。どれか1つでも払えなければ、その瞬間に会社は立ち行かなくなる。利益がいくら出ていようと、関係ない。

これを「黒字倒産」と呼ぶ。

02まんぷく食堂の3年間を、数字で追いかける

では、まんぷく食堂に何が起きたのか。当時の数字を再現してみよう。

1号店の月商は約600万円。原価と経費を差し引いても、毎月60万円ほどの利益が残る優良店だった。自信をつけたオーナーは、出店を加速させる。

まんぷく食堂、拡大の軌跡

  1. 1年目

    百万遍に1号店オープン

    自己資金と借入金で開業。初年度から黒字

  2. 2年目

    出町柳に2号店

    内装・厨房設備2,500万円、保証金500万円。銀行から2,000万円を借入

  3. 3年目

    今出川に3号店オープン、北白川で4号店に着工

    2店舗分の設備5,000万円と保証金1,000万円を支払う。追加で4,000万円を借入

  4. 4年目・春

    4号店の工事が2か月遅延

    売上ゼロのまま、家賃と研修中スタッフの給料が出ていく

  5. 4年目・秋

    月末の支払いに300万円足りず、事業停止

    決算書の上では、最後まで黒字だった

3年目の決算書(損益計算書)を見てみよう。

3年目の損益計算書(要約)
項目金額
売上高2億円
食材費・人件費・家賃などの費用1億8,800万円
当期純利益1,200万円

文句なしの黒字だ。銀行の担当者も「順調ですね」と笑っていた。

ところが同じ年、銀行口座の残高はこう動いていた。

3年目の「お金」の動き
項目金額
期首の現金残高900万円
+ 本業で稼いだ利益1,200万円
+ 減価償却費(費用だが、お金は出ていかない)1,000万円
- 新店2店舗の内装・厨房設備△5,000万円
- 新店2店舗の保証金(敷金)△1,000万円
- 借入金の元本返済△800万円
- 食材在庫の増加△200万円
- 前年度分の法人税などの納付△300万円
+ 銀行からの新規借入4,000万円
期末の現金残高△200万円

計算上、期末の残高はマイナス200万円。もちろん、口座がマイナスになることはない。実際には、その手前のある月末に「払えない日」が来た。それが4年目の秋だった。

利益は1,200万円出ているのに、お金は1,100万円も減っている。この「ズレ」の正体が、今回の問いの答えだ。

まんぷく食堂のオーナーは、損益計算書しか見ていなかった。「利益が出ているから大丈夫」と信じて、次々に店を出した。

もし彼が、もう1枚の決算書——貸借対照表——を読めていたら。現金がみるみる減り、代わりに「建物」「備品」「差入保証金」という、すぐにはお金に戻らない資産と、「借入金」という返済義務が膨れ上がっていく様子が、はっきり見えたはずだ。

ANSWER ― 答え合わせ

「黒字倒産」の正体

まんぷく食堂を殺したのは、赤字ではない。利益とキャッシュの「時間差」だ。

出店のための支出は「今」出ていく。しかし、それが費用として利益計算に反映されるのは「何年もかけて少しずつ」であり、保証金や借入返済に至っては、利益計算に一度も表れない。

損益計算書は「この1年の成績」を映す。貸借対照表は「いま会社が何を持ち、誰にいくら借りているか」を映す。この2枚をセットで読めなかったことが、まんぷく食堂の命取りになった。

そして、この2枚の決算書を作り、読むための技術こそが——簿記である。

03簿記とは「会社のカルテ」を書き、読む技術である

簿記(ぼき)とは「帳簿記入」の略だ。会社で起きたお金とモノの動きを、一定のルールで記録し、最終的に財務諸表(決算書)という報告書にまとめる技術である。

こう書くと地味に聞こえるかもしれない。だが、簿記が扱っているのは、会社の成績と財産そのものだ。

簿記とは、会社の成績表である財務諸表を作り、読み解くための技術だ。

株価は財務諸表をもとに動く。銀行は財務諸表を見て融資を決める。税務署は財務諸表をもとに税金を計算する。経営者は財務諸表を見て、出店するか撤退するかを決める。会社に関わる人の多くが、同じ財務諸表を見て判断している。

財務諸表を読めないままお金の判断をするのは、地図を持たずに知らない土地を歩くようなものだ。逆に、読める人には、他の人には見えない会社の実態が見えてくる。

財務諸表を「読む人」と、その目的
誰が何を知りたいか
経営者どの店が儲かっているか。次の出店資金はあるか
銀行この会社に貸したお金は、ちゃんと返ってくるか
投資家(株主)この会社の株は、将来もっと価値が上がるか
取引先掛けで売っても、代金を払ってもらえるか
税務署正しく利益を計算し、正しく税金を納めているか
就職・転職する人この会社は5年後も存在しているか

04簿記3級で身につく、6つの力

日商簿記3級は、この財務諸表の読み書きの基礎を、株式会社を舞台に学ぶ資格だ。本書を読み終えたとき、あなたは次の力を身につけている。

その1

仕訳

世界共通のビジネス言語(第1〜2章)

その2

キャッシュ管理

現金・預金を守る技術(第3〜4章)

その3

利益の源泉

商品売買と売上原価(第5〜6章)

その4

信用の管理

債権・債務・貸倒れ(第7〜11章)

その5

投資と所有

固定資産・株式・税金(第12〜15章)

その6

決算

財務諸表を完成させる(第16〜19章)

これらはすべて、2級(工業簿記・連結会計)、1級(会計基準の理論)、そして実際の経営判断やM&A、資金調達の現場へとまっすぐにつながっている。3級は「入門」ではあるが、決して「おまけ」ではない。ここで手に入れるOSの上に、すべての上級スキルがインストールされるのだ。

05簿記の全体像 ― 1年間の流れ

簿記の仕事は、1年間(会計期間)を単位としたサイクルで回っている。まずは全体の地図を頭に入れておこう。細部は各章で1つずつ学んでいく。

簿記の1年間(会計期間)の流れ

  1. 1

    取引が発生する

    商品を仕入れる、売る、給料を払う、バスを買う……会社の日常のすべてが出発点(第2章)

  2. 2

    仕訳(しわけ)をする

    取引を「借方」と「貸方」に分解して記録する。簿記のすべての土台(第2章〜第15章)

  3. 3

    総勘定元帳に転記する

    仕訳を「勘定」ごとに整理し直す(第2章・第16章)

  4. 4

    試算表で検算する

    記録に誤りがないかを、貸借の一致で確かめる(第17章)

  5. 5

    決算整理をする

    期末に「本当の利益」を計算するための修正を加える(第18章)

  6. 6

    財務諸表を作る

    損益計算書と貸借対照表を完成させ、帳簿を締め切る(第19章)

06試験の概要 ― 敵を知る

詳しい攻略法は「付録B 試験攻略マニュアル」で解説するが、ここで試験の輪郭をつかんでおこう。

日商簿記3級の試験概要
項目内容
試験方式統一試験(ペーパー:例年6月・11月・2月)/ネット試験(CBT:随時)
試験時間60分
配点・合格基準100点満点中、70点以上で合格
第1問(45点)仕訳問題 15問
第2問(20点)勘定記入、補助簿、伝票、語句選択など
第3問(35点)決算:財務諸表・精算表・決算整理後残高試算表の作成

※2027年4月1日以降の試験では、紙の手形・小切手の廃止などにあわせて出題区分が改定される予定です(2025年12月公表の暫定版)。本書は、2026年度(2027年3月まで)の試験に適用される現行の出題区分を完全にカバーしたうえで、2027年度からの変更点(2027年度〜・2027年度〜範囲外)も併記しています。

07登場する5つの会社

本書は、身近にある実在しそうなビジネスを舞台にしている。以下の5社が、章をまたいで何度も登場する。どの会社も、それぞれのやり方で経営の落とし穴と隣り合わせだ。

CASE FILE株式会社おかわり堂 ― 京都の学生街を制する牛丼・定食チェーン

百万遍・出町柳・今出川・衣笠など、京都の大学周辺に12店舗。牛すき丼(並)480円、定食はご飯おかわり無料。深夜3時まで営業し、勉強終わりの学生とアルバイト帰りの若者で埋まる。まんぷく食堂の倒産を間近で見た創業社長は、財務の専門家を役員に迎え、数字にもとづく経営に舵を切った。

店舗数

12店舗

京都市内の学生街

年商

約13億円

1店舗あたり月商900万円

食材原価率

33%

牛肉価格の高騰で上昇中

アルバイト

約240名

深夜帯は25%の割増賃金

主に登場する章:商品売買(第5・6章)、現金(第3章)、給料(第10章)、消費税(第14章)、決算(第18章)

CASE FILEナイトオウル交通株式会社 ― 夜行高速バス「OWL LINER」

東京と京都・大阪・広島・福岡を結ぶ夜行高速バス会社。全車3列独立シート、カーテン付きで「眠れる夜行バス」を売りにする。1台5,000万円の車両を20台保有し、乗車券はWebで1か月前から販売する。

保有車両

20台

3列独立シート・28席

車両1台の取得原価

5,000万円

架装費・登録費用込み

耐用年数

5年

定額法で償却

主に登場する章:取引と仕訳(第1・2章)、その他の債権債務(第9章)、固定資産と減価償却(第12章)、税金(第14章)

CASE FILE株式会社アイアンワークス ― 24時間ジム「IRONWORKS 24」

京都・大阪に8店舗を構える24時間営業のフィットネスジム。月会費7,980円、年払いなら10か月分の料金で12か月使える。パワーラックやトレッドミルなど高額マシンへの投資と、会費の「前受け」がビジネスの肝。

店舗数

8店舗

京都・大阪

会員数

約6,400名

1店舗あたり約800名

年払い会員の比率

30%

前払いで現金が先に入る

主に登場する章:預金(第4章)、クレジット売掛金(第7章)、経過勘定(第15章)

CASE FILE株式会社洛北ミート ― 飲食店の命綱を握る食肉卸

京都・洛北に本社を置く食肉の卸売業者。おかわり堂を含む約150の飲食店に、牛肉・豚肉・鶏肉を「月末締め・翌月末払い」の掛けで納める。売った瞬間ではなく、1〜2か月後にお金が入るビジネスだ。

取引先

約150店

京都・滋賀の飲食店

月商

約1億5,000万円

ほぼ全額が掛け売り

回収サイト

30〜60日

手形・でんさいも一部

主に登場する章:預金と小切手(第4章)、掛取引(第7章)、手形と電子記録債権(第8章)、貸倒れ(第11章)

CASE FILE株式会社シフトクラウド ― 赤字なのに資金が集まるSaaS

飲食店向けのシフト管理クラウドサービスを提供するスタートアップ。おかわり堂も顧客の1社。売上は毎年1.5倍で伸びているが、広告と開発への投資が先行し、毎年数億円の赤字を出している。それでも投資家は列をなす。

年間契約売上(ARR)

6億円

前年比150%

当期純損失

△4億円

成長投資が先行

主に登場する章:株式会社と純資産(第13章)、終章

※本書に登場する企業・人物・数値は、すべて学習用に設計した架空のものです。


最後に、本書の読み方について。

各章の冒頭には、身近な会社で起こりうる問いを1つ置いている。その答えは、必ずその章で学ぶ簿記のルールの中にある。

ルールを覚えるだけでなく、ルールが生まれた理由まで理解してほしい。そうすれば、試験の仕訳は「暗記」ではなく「当たり前」に変わる。

SUMMARY

序章のまとめ

  • ✓利益(成績)と現金(残高)は別物。会社は「赤字」ではなく「支払えないこと」で死ぬ
  • ✓設備投資・保証金・借入金の返済・在庫・税金は、利益と現金のズレを生む5大要因
  • ✓損益計算書は「1年間の成績」、貸借対照表は「いまの財産と借金」を映す。2枚セットで読む
  • ✓簿記とは、財務諸表を作り、読むための技術。会社に関わるあらゆる判断の土台になる
  • ✓3級の試験は「仕訳(45点)」と「決算(35点)」が勝負どころ

第1部 簿記というOS

第1章5つの要素と2つの財務諸表

口座に1億円ある会社は、本当に「金持ち」か?

現金の多さは、会社の豊かさを意味しない。資産・負債・純資産・収益・費用という5つの要素と、貸借対照表・損益計算書という2枚の決算書。簿記のすべてはここから始まる。

読了目安 25分難易度 ★☆☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸資産・負債・純資産・収益・費用の5要素を、自分の言葉で説明できる
  • ▸貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の役割と形を理解する
  • ▸2枚の決算書が「当期純利益」でつながっていることを理解する
  • ▸財産法と損益法で、当期純利益を計算できる
この章の目次▼
  1. 01会社の「財産」を3つに分ける ― 資産・負債・純資産
  2. 02ナイトオウル交通の「設立初日」を解剖する
  3. 03答え合わせの準備 ― 「正味の財産」で比べる
  4. 04貸借対照表(B/S)― ある「瞬間」を切り取った写真
  5. 05収益と費用 ― 1年間を記録した「動画」
  6. 062枚の決算書は「当期純利益」でつながっている
  7. 075つの要素の「ホームポジション」
  8. 08会計期間 ― 成績は1年ごとに区切って計算する
  9. 09確認問題

QUESTION ― この章の問い

口座に1億円ある会社と、1,000万円しかない会社。「金持ち」はどっちだ?

4月1日、東京・新宿。夜行高速バス会社「ナイトオウル交通」が産声をあげた。

設立初日、会社の銀行口座には1億円。社長は記者に胸を張った。「うちは1億円の会社です」。

同じ日、同じ路線を走るライバル「ブルーナイト・エクスプレス」の口座残高は、わずか1,000万円だった。

ところが、両社の決算書を見比べたメインバンクの融資担当者は、迷わずこう言った。

「豊かなのは、圧倒的にブルーナイトさんのほうですね」

口座残高が10分の1の会社のほうが、なぜ「豊か」なのか?

01会社の「財産」を3つに分ける ― 資産・負債・純資産

問いを解くには、会社の財産を正しく見る「メガネ」が必要だ。簿記では、ある時点の会社の財産状態を、次の3つに分けて捉える。

財産を見る3つのメガネ
要素ひとことで言うと具体例(勘定科目)
資産会社が持っている「プラスの財産」現金、普通預金、売掛金、商品、建物、車両運搬具、土地、貸付金
負債将来お金を払わなければならない「マイナスの財産」借入金、買掛金、未払金
純資産資産から負債を引いた「正味の財産」。株主のもの資本金、繰越利益剰余金

資産とは、会社が持っている財産だ。お金そのもの(現金・預金)だけでなく、将来お金に変わるもの(商品・売掛金)や、お金を稼ぐために使うもの(バス・建物)も含まれる。

負債とは、将来お金を払う義務だ。銀行から借りたお金(借入金)や、まだ払っていない仕入代金(買掛金)がその代表である。

純資産とは、資産から負債を差し引いた残りだ。もし今日、会社がすべての資産を売り払って借金をすべて返したら、手元に残るはずの財産。それは会社の持ち主である株主のものだ。

02ナイトオウル交通の「設立初日」を解剖する

では、ナイトオウル交通の1億円の正体を見てみよう。

CASE FILEナイトオウル交通株式会社 ― 設立初日(4月1日)

創業者が自分の貯金と仲間からの出資で3,000万円を払い込み、株式会社を設立した。さらに、夜行バス2台の購入資金として、メインバンクから7,000万円を借り入れた。その結果、口座には1億円が入っている。

この状態を、簿記のメガネで見るとこうなる。

資産(お金の使いみち)
負債・純資産(お金の出どころ)
普通預金
1億円
借入金
7,000万円
資本金
3,000万円
ナイトオウル交通の財産状態(設立初日)

左側が資産、右側が負債と純資産。そして、左右の合計は必ず一致する。

FORMULA ― 公式

貸借対照表等式

資産 = 負債 + 純資産

1億円 = 7,000万円 + 3,000万円

この図の読み方こそ、財務分析の出発点となる視点だ。

右側は「お金をどこから集めたか(調達源泉)」を表す。銀行から借りたのか(負債)、株主から出してもらったのか(純資産)。

左側は「集めたお金を何に使っているか(運用形態)」を表す。いまは全額が預金のままだが、バスを買えば「車両運搬具」に、燃料を買えば費用に姿を変えていく。

03答え合わせの準備 ― 「正味の財産」で比べる

ここで、ライバルのブルーナイト・エクスプレスの財産状態も見てみよう。彼らは創業10年目。かつて買ったバス3台の借金は、すでに完済している。

2社の財産を比較する(同じ日の時点)
項目ナイトオウル交通ブルーナイト
現金・預金1億円1,000万円
バス(車両運搬具)0円9,000万円
資産合計1億円1億円
借入金7,000万円0円
純資産(資産-負債)3,000万円1億円

ANSWER ― 答え合わせ

なぜ「1,000万円の会社」のほうが豊かなのか

答えは純資産だ。

ナイトオウル交通の口座にある1億円のうち、7,000万円は銀行から借りたお金にすぎない。いずれ利息をつけて返さなければならない。本当に会社のもの(=株主のもの)と言えるのは、資産1億円から負債7,000万円を引いた3,000万円だけだ。

一方のブルーナイトは、現金こそ1,000万円しかないが、借金ゼロでバス3台を所有している。正味の財産は1億円。ナイトオウルの3倍以上だ。

「お金を持っている」ことと「豊かである」ことは違う。銀行が見ていたのは口座残高ではなく、資産から負債を引いた純資産だったのである。

THINK ― 判断してみよう

それでも、ナイトオウル交通にしかない「強み」はあるか?

融資担当者の言葉に、ナイトオウルの社長はがっくりと肩を落とした。あなたなら、社長にどう声をかけるだろうか。ナイトオウル交通の財産状態に、ブルーナイトにはない強みはあるだろうか?

考え方の例を見る▼

ある。すぐに使える現金(流動性)だ。

序章で見たとおり、会社は赤字ではなく「支払えないこと」で死ぬ。ブルーナイトは豊かだが、手元の現金は1,000万円。もしバスが1台故障して高額な修理が必要になったり、感染症の流行で運休が続いたりすれば、たちまち資金繰りに窮するおそれがある。

一方ナイトオウルは、借金で集めたとはいえ1億円の現金を持っている。この現金を、借入金の利息(たとえば年3%なら年210万円)を上回るリターンを生むバスに投資できれば、会社は成長し、純資産は増えていく。

社長には、たとえばこう伝えたい。「純資産は会社の体力、現金は会社の血液です。体力ではライバルに負けていますが、血液は十分にある。この血液を、利息以上に稼ぐバスに変えていきましょう」。

04貸借対照表(B/S)― ある「瞬間」を切り取った写真

資産・負債・純資産の状態を1枚の表にまとめたものを、貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)という。英語では Balance Sheet、略して B/S(ビーエス)と呼ぶ。

貸借対照表は、ある特定の日(ふつうは決算日)の財産状態を写した「写真」のようなものだ。この会社が、その瞬間に何を持ち(資産)、誰にいくら返す義務があり(負債)、正味でいくらの財産があるのか(純資産)を一目で示す。

ナイトオウル交通の貸借対照表(設立初日・4月1日)
資産金額負債・純資産金額
普通預金100,000,000借入金70,000,000
資本金30,000,000
合計100,000,000合計100,000,000

05収益と費用 ― 1年間を記録した「動画」

さて、設立したナイトオウル交通は、すぐにバス2台(合計1億円)を購入し、東京と京都を結ぶ夜行便の運行を始めた。乗客から運賃を受け取り、運転士に給料を払い、軽油を買って走る。

このように、会社が活動するなかで純資産を増やす原因と純資産を減らす原因を、簿記では次のように呼ぶ。

会社の活動を見る2つのメガネ
要素ひとことで言うと具体例(勘定科目)
収益純資産を増やす原因(稼ぎ)売上、受取手数料、受取利息、受取家賃
費用純資産を減らす原因(稼ぐための犠牲)給料、支払家賃、支払利息、減価償却費、水道光熱費

収益とは、商品やサービスを提供した対価として得た「稼ぎ」だ。バス会社の運賃収入も、簿記では売上として記録する。

費用とは、収益を得るために使った「犠牲」だ。運転士の給料、燃料代、銀行への利息などがこれにあたる。

収益から費用を差し引いたものが、当期純利益だ。

FORMULA ― 公式

損益計算書等式

収益 - 費用 = 当期純利益

(費用が収益を上回れば、当期純損失)

1年間の収益と費用をまとめた表を損益計算書(そんえきけいさんしょ)という。英語では Profit and Loss Statement、略して P/L(ピーエル)だ。貸借対照表が「写真」なら、損益計算書は1年間の活動を記録した「動画」にあたる。

ナイトオウル交通の損益計算書(第1期:4月1日〜翌年3月31日)
費用金額収益金額
給料60,000,000売上180,000,000
燃料費32,000,000
支払手数料28,000,000
減価償却費20,000,000
保険料・修繕費など17,900,000
支払利息2,100,000
当期純利益20,000,000
合計180,000,000合計180,000,000

※支払手数料は、高速道路の通行料や予約サイトへの手数料。減価償却費は、バスの価値の目減り分を費用にしたもの(第12章)。「燃料費」のように、会社は自社の事業に合った勘定科目を設定できる。試験では、問題文で指定された勘定科目を使うこと。※法人税などの税金は第14章で扱うため、ここでは省略している。

損益計算書は、左側に費用、右側に収益を書き、その差額である当期純利益を左側に書いて、左右の合計を一致させる。利益は「収益のうち、費用に使われずに残った部分」だから、費用と同じ側に並べると左右がそろう、と考えるとよい。

062枚の決算書は「当期純利益」でつながっている

第1期の終わり(3月31日)、ナイトオウル交通の貸借対照表はこうなった。

ナイトオウル交通の貸借対照表(第1期末・3月31日)
資産金額負債・純資産金額
普通預金40,000,000借入金70,000,000
車両運搬具80,000,000資本金30,000,000
繰越利益剰余金20,000,000
合計120,000,000合計120,000,000

※車両運搬具は、購入額1億円から1年分の価値の目減り(減価償却費)2,000万円を差し引いた金額。繰越利益剰余金は、会社が稼いだ利益の蓄積を表す純資産の勘定科目(第13章)。

純資産に注目してほしい。期首は資本金3,000万円だけだったのが、期末は資本金3,000万円+繰越利益剰余金2,000万円=5,000万円に増えている。

増えた2,000万円は、損益計算書の当期純利益2,000万円とぴったり一致する。これは偶然ではない。

期首の純資産
期末の純資産
資本金
3,000万円
(まだない)
資本金
3,000万円
繰越利益剰余金
2,000万円
=当期純利益
期首から期末へ ― 純資産は当期純利益の分だけ増える

※財産法の式がそのまま使えるのは、期中に株式の発行(増資)や配当がない場合。増資や配当があるときは、その影響を除いて計算する(第13章)。

075つの要素の「ホームポジション」

ここまでで、簿記の5つの要素がそろった。それぞれの要素には、決算書の上で「定位置」がある。これを本書ではホームポジションと呼ぶ。

左側(借方)
右側(貸方)
資産
費用
負債
純資産
収益
5要素のホームポジション(左=借方、右=貸方)
5要素のホームポジション一覧
要素載る決算書ホームポジション代表的な勘定科目
資産貸借対照表左(借方)現金、売掛金、建物
負債貸借対照表右(貸方)借入金、買掛金
純資産貸借対照表右(貸方)資本金、繰越利益剰余金
費用損益計算書左(借方)給料、支払利息
収益損益計算書右(貸方)売上、受取利息

このホームポジションは、次の章で学ぶ仕訳のルールの土台になる。「資産と費用は左、負債と純資産と収益は右」。今はこれだけ覚えておけば十分だ。

08会計期間 ― 成績は1年ごとに区切って計算する

会社は何十年も活動を続ける。そのままでは成績をつけられないので、簿記では活動を1年ずつに区切って計算する。この区切りを会計期間という。

会計期間に関する用語
用語意味
期首会計期間の初日(例:4月1日)
期末(決算日)会計期間の最終日(例:3月31日)
期中期首から期末までの間
前期・当期・次期前の会計期間・いまの会計期間・次の会計期間
決算期末に帳簿を締めて、財務諸表を作成する手続き

日本の会社は4月1日〜3月31日を会計期間とすることが多いが、12月決算や9月決算の会社もある。会社が自由に決められる。試験でも「会計期間は×1年4月1日から×2年3月31日まで」のように、問題文で指定される。

THINK ― 判断してみよう

社長「融資が決まった!これで会社の価値が上がったぞ」

メインバンクが、ナイトオウル交通に追加で5,000万円を貸してくれることになった。社長は大喜びで「これで純資産が5,000万円増えた!」と言っている。あなたなら、社長に何を伝えるか?

考え方の例を見る▼

まず事実を正確に伝える。「借入れでは純資産は増えません」。

借入れによって、資産(預金)が5,000万円増え、同時に負債(借入金)が5,000万円増える。資産-負債=純資産は変わらない。

純資産を増やす方法は、本質的に2つしかない。

  • 利益を出す(収益が費用を上回る)
  • 株主から出資を受ける(株式を発行する。第13章)

そのうえで、こう続けたい。「この5,000万円で3台目のバスを買い、年間の利益が利息の支払いを大きく上回るなら、その利益の分だけ純資産が増えていきます。借入れは純資産を増やすための燃料であって、純資産そのものではありません」。

09確認問題

問1次の勘定科目を、資産・負債・純資産・収益・費用に分類しなさい。

現金/借入金/資本金/売上/給料/建物/買掛金/受取利息/支払家賃/売掛金/繰越利益剰余金/支払利息

解答・解説を見る▼
要素勘定科目
資産現金、建物、売掛金
負債借入金、買掛金
純資産資本金、繰越利益剰余金
収益売上、受取利息
費用給料、支払家賃、支払利息

「受取〜」は収益、「支払〜」は費用になるものが多い。売掛金(あとで代金を受け取る権利)は資産、買掛金(あとで代金を支払う義務)は負債。

問2財産法で当期純利益を求めなさい。

期首の資産は800万円、負債は300万円だった。期末の資産は1,000万円、負債は350万円だった。期中に増資や配当はなかった。

解答・解説を見る▼

期首純資産 = 800万円 - 300万円 = 500万円

期末純資産 = 1,000万円 - 350万円 = 650万円

当期純利益 = 650万円 - 500万円 = 150万円

問3空欄を埋めなさい。

ある会社の当期の収益総額は5,000万円、費用総額は5,300万円だった。期首の純資産は2,000万円で、期中に増資や配当はなかった。当期純(ア)は(イ)万円、期末の純資産は(ウ)万円である。

解答・解説を見る▼

費用が収益を上回っているので、(ア)損失。

(イ)5,000万円 - 5,300万円 = △300万円 → 当期純損失 300万円

(ウ)2,000万円 - 300万円 = 1,700万円

純損失の分だけ、純資産は減る。

問4銀行から2,000万円を借り入れ、現金で受け取った。資産・負債・純資産はそれぞれどう変化するか。

解答・解説を見る▼

資産(現金)が2,000万円増加、負債(借入金)が2,000万円増加。純資産は変化しない。

借入れは「お金の出どころ」が負債であるだけで、正味の財産を増やすものではない。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓資産は「持っている財産」、負債は「将来払う義務」、純資産は「資産-負債=株主のもの」
  • ✓貸借対照表(B/S)は、ある時点の資産・負債・純資産を示す「写真」。資産=負債+純資産
  • ✓B/Sの右側は「お金の出どころ」、左側は「お金の使いみち」。同じお金を2方向から見るので左右が一致する
  • ✓収益は純資産を増やす原因、費用は減らす原因。損益計算書(P/L)は1年間の「動画」
  • ✓当期純利益は、財産法(期末純資産-期首純資産)と損益法(収益-費用)で一致する
  • ✓ホームポジション:資産・費用は左(借方)、負債・純資産・収益は右(貸方)
  • ✓借入れでは純資産は増えない。純資産を増やすのは「利益」と「株主からの出資」だけ

第1部 簿記というOS

第2章取引・仕訳・勘定・転記

1億円の契約は記録しないのに、30万円の盗難は記録する。なぜ?

簿記には、世間とは違う「取引」の定義がある。そして、すべての取引を左右2つの側面から記録する「仕訳」こそ、500年以上も世界中で使われ続けてきた記録の仕組みだ。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸「簿記上の取引」とは何かを判定できる
  • ▸借方・貸方と、仕訳のルール(ホームポジション)を使いこなせる
  • ▸取引の8要素と結合関係を理解する
  • ▸仕訳帳から総勘定元帳への転記ができる
この章の目次▼
  1. 01簿記上の「取引」は、世間の取引と違う
  2. 021つの取引には、必ず「2つの側面」がある
  3. 03借方と貸方 ― 左と右には「意味がない」
  4. 04仕訳のルール ― ホームポジションで「増」、反対側で「減」
  5. 05取引の8要素と結合関係
  6. 06ナイトオウル交通、第2期の最初の1か月を仕訳する
  7. 07転記 ― 仕訳を「勘定」ごとに集計し直す
  8. 08主要簿 ― 仕訳帳と総勘定元帳
  9. 09確認問題

QUESTION ― この章の問い

経理部長は、なぜ社長の命令を拒んだのか

ナイトオウル交通の第2期が始まったばかりの4月。その週、会社では3つの出来事があった。

1つ目。大手旅行会社と、年間1億円分の団体客を送り込んでもらう契約を結んだ。

2つ目。バスメーカーに、3台目となる新車(5,000万円)を発注した。

3つ目。深夜の営業所に空き巣が入り、金庫の現金30万円が盗まれた。

週末、帳簿を確認した社長は激怒した。「1億円の契約も、5,000万円の発注も載っていないじゃないか!載っているのは泥棒の30万円だけだ。すぐに書き直せ!」

経理部長は静かに首を振った。「社長、書き直しません。この帳簿は正しいのです」

1億円の契約は記録せず、30万円の盗難だけを記録する。それが「正しい」とは、どういうことか?

01簿記上の「取引」は、世間の取引と違う

問いを解く鍵は、簿記上の取引という言葉にある。

簿記でいう取引とは、「資産・負債・純資産・収益・費用のいずれかを増減させる出来事」のことだ。そして、その増減を金額で測定できるものに限られる。

この定義に照らすと、世間の感覚とのズレが見えてくる。

「取引」の判定 ― 世間と簿記のズレ
出来事世間の感覚簿記上の取引理由
年1億円の送客契約を結んだ取引✗契約しただけでは、お金も財産も動いていない
バスを発注した取引✗注文しただけでは、まだ何も受け取っていない
店舗の賃貸借契約を結んだ取引✗契約だけでは財産は増減しない(保証金を払えば取引)
従業員を採用した取引ではない✗雇用契約だけでは財産は増減しない
現金が盗まれた取引ではない○現金(資産)が減少した
車庫が火事で焼けた取引ではない○建物や設備(資産)が減少した
バスが古くなり価値が減った取引ではない○資産の価値の減少を費用にする(減価償却)

ANSWER ― 答え合わせ

経理部長が正しかった理由

1億円の契約を結んでも、その時点では、会社の財産は1円も動いていない。旅行会社がお客を送り込み、バスが走り、運賃を受け取って初めて、「売上(収益)」と「現金や預金(資産)」が増える。

5,000万円の発注も同じだ。バスが納車されて初めて「車両運搬具(資産)」が増え、代金を払えば「預金(資産)」が減る。

一方、30万円の盗難は、誰にも取引の意思はないが、現金という資産が確実に30万円減った。だから記録しなければならない。記録しなければ、帳簿の現金と金庫の現金が一致しなくなる。

簿記が記録するのは「約束」ではなく「財産の増減という事実」なのである。

仕訳盗難の記録(現金という資産が減り、損失という費用が発生した)
借方科目金額貸方科目金額
雑損300,000現金300,000

※盗難による損失は「雑損」のほか「盗難損失」などの勘定科目で処理することもある。試験では問題文の指示に従う。

THINK ― 判断してみよう

帳簿に載らない「1億円の契約」の価値を、どう伝えるか

会計上、1億円の契約は帳簿に載らない。しかし、この契約は会社にとって大きな価値がある。来月、追加融資の相談で銀行を訪れる。あなたなら、この契約の価値を銀行にどう伝えるだろうか?

考え方の例を見る▼

財務諸表は「過去に起きた財産の増減」の記録であって、未来の約束は映さない。これは会計の限界であり、同時に信頼性の源泉でもある。「契約しただけ」で売上を計上できるなら、いくらでも数字を作れてしまうからだ。

だから財務の担当者は、財務諸表とは別の資料で未来を語る。

  • 契約書の写しと、契約に基づく受注残高(これから売上になる予定の金額)
  • 契約を踏まえた事業計画と資金繰り表(月ごとの入金・出金の予定)
  • 過去の財務諸表で示した「計画どおりに実行してきた実績」

上場企業も同じだ。決算説明会では、財務諸表に加えて受注残高や契約件数を示し、投資家に将来の売上を説明する。財務諸表という「事実」を土台に、未来という「意見」を語る。それが財務を担う人の仕事である。

021つの取引には、必ず「2つの側面」がある

簿記上の取引が起きたら、それを記録する。ここで簿記は、とても巧妙な方法をとる。1つの取引を、必ず2つの側面から記録するのだ。

たとえば、軽油を18万円分、現金で買ったとしよう。この取引には2つの側面がある。

このように、すべての取引を「原因」と「結果」のように2つの側面に分けて記録する方法を、複式簿記という。お小遣い帳のように「現金が18万円減った」とだけ書くのは単式簿記だ。

03借方と貸方 ― 左と右には「意味がない」

複式簿記では、取引の2つの側面を、左側と右側に分けて記録する。この左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼ぶ。

勘定科目
借方貸方
借方(かりかた)=左貸方(かしかた)=右

「借」「貸」という漢字に引きずられてはいけない。これは歴史的な名残にすぎず、現代の簿記では単に「左」「右」という意味しかない。お金を借りたかどうかとは関係ない。

04仕訳のルール ― ホームポジションで「増」、反対側で「減」

取引を借方と貸方に分けて記録することを仕訳(しわけ)という。仕訳には、たった1つのルールしかない。第1章で学んだホームポジションを思い出してほしい。

仕訳のルール一覧
要素増加・発生したら減少・取消したら
資産借方(左)貸方(右)
負債貸方(右)借方(左)
純資産貸方(右)借方(左)
収益貸方(右)借方(左)
費用借方(左)貸方(右)
資産の勘定
借方貸方
増加 +減少 -
負債の勘定
借方貸方
減少 -増加 +
純資産の勘定
借方貸方
減少 -増加 +
費用の勘定
借方貸方
発生 +取消 -
収益の勘定
借方貸方
取消 -発生 +

さっきの軽油の取引に当てはめてみよう。費用(燃料費)が発生 → 費用のホームポジションは左 → 借方。資産(現金)が減少 → 資産のホームポジションの反対側 → 貸方。

仕訳軽油18万円を現金で購入した
借方科目金額貸方科目金額
燃料費180,000現金180,000

仕訳を書くときは、次の4ステップで考えると迷わない。

仕訳の4ステップ

  1. 1

    何が起きたか?

    取引の事実をつかむ。「軽油を買って、現金を払った」

  2. 2

    どの勘定科目か?

    登場する勘定科目を特定する。「燃料費」と「現金」

  3. 3

    増えたか、減ったか?

    各勘定科目が5要素のどれで、増えたのか減ったのかを判断する。「費用の発生」「資産の減少」

  4. 4

    左か、右か?

    ルールに従って借方・貸方に振り分け、金額を書く。左右の合計が一致すれば完成

05取引の8要素と結合関係

仕訳の借方に来るのは「資産の増加」「負債の減少」「純資産の減少」「費用の発生」の4つ。貸方に来るのは「資産の減少」「負債の増加」「純資産の増加」「収益の発生」の4つだ。合わせて8つ。これを取引の8要素という。

すべての取引は、借方の要素と貸方の要素の組み合わせでできている。

取引の8要素(借方の要素 × 貸方の要素)
借方(左)の要素貸方(右)の要素
資産の増加資産の減少
負債の減少負債の増加
純資産の減少純資産の増加
費用の発生収益の発生
結合関係の例(ナイトオウル交通)
取引借方の要素貸方の要素
株式を発行し、出資金が普通預金に入金された資産の増加純資産の増加
銀行からお金を借り、普通預金に入金した資産の増加負債の増加
普通預金から現金を引き出した資産の増加資産の減少
貸切バスを運行し、代金を現金で受け取った資産の増加収益の発生
借入金を普通預金から返済した負債の減少資産の減少
運転士の給料を普通預金から支払った費用の発生資産の減少
部品を購入し、代金は月末に支払うことにした費用の発生負債の増加

※収益の発生と費用の発生が直接結びつく取引は、通常は起こらない。また、純資産の減少は、株主への配当(第13章)などの限られた場面で登場する。

06ナイトオウル交通、第2期の最初の1か月を仕訳する

では実際に、ナイトオウル交通の第2期(×2年4月)の取引を仕訳してみよう。前期末の時点で、普通預金は4,000万円、借入金は7,000万円ある。借入金は1年間の返済猶予(据置期間)が終わり、この月から毎月100万円ずつ返済が始まる。

例題次の取引を仕訳しなさい

4月1日 普通預金から現金300,000円を引き出した。

4月2日 大学の体育会の合宿送迎のため貸切バスを運行し、代金450,000円を現金で受け取った。

4月3日 軽油180,000円を現金で購入した。

4月10日 借入金の元金1,000,000円と、利息175,000円を普通預金から支払った。

4月20日 運転士の給料2,400,000円を普通預金から支払った。

4月25日 車庫の空きスペースを近隣の会社に駐車場として貸し、4月分の地代80,000円が普通預金に振り込まれた。

4月28日 バスの消耗部品120,000円を購入し、代金は月末に支払うことにした。

解答・解説を見る▼
仕訳4月1日 資産(現金)の増加・資産(普通預金)の減少
借方科目金額貸方科目金額
現金300,000普通預金300,000
仕訳4月2日 資産(現金)の増加・収益(売上)の発生
借方科目金額貸方科目金額
現金450,000売上450,000
仕訳4月3日 費用(燃料費)の発生・資産(現金)の減少
借方科目金額貸方科目金額
燃料費180,000現金180,000
仕訳4月10日 負債(借入金)の減少+費用(支払利息)の発生・資産(普通預金)の減少
借方科目金額貸方科目金額
借入金1,000,000普通預金1,175,000
支払利息175,000
仕訳4月20日 費用(給料)の発生・資産(普通預金)の減少
借方科目金額貸方科目金額
給料2,400,000普通預金2,400,000
仕訳4月25日 資産(普通預金)の増加・収益(受取地代)の発生
借方科目金額貸方科目金額
普通預金80,000受取地代80,000
仕訳4月28日 費用(消耗品費)の発生・負債(未払金)の増加
借方科目金額貸方科目金額
消耗品費120,000未払金120,000

4月10日のように、借方または貸方に複数の勘定科目が並ぶ仕訳を複合仕訳という。複合仕訳でも、借方の合計(1,000,000+175,000)と貸方の合計(1,175,000)は必ず一致する。

利息は、元金7,000万円×年利3%×1/12か月=175,000円。4月28日の「あとで支払う約束」は未払金という負債になる(第9章)。

07転記 ― 仕訳を「勘定」ごとに集計し直す

仕訳は、取引を時系列で記録したものだ。だが、仕訳を眺めているだけでは「いま現金がいくらあるのか」は分からない。そこで、仕訳を勘定科目ごとに集計し直す。この作業を転記(てんき)という。

勘定科目ごとの記録の場所を勘定(かんじょう)といい、学習ではアルファベットのTの形をしたT字勘定を使う。

転記のルール

  1. 1

    仕訳の借方の金額は、その勘定の借方(左)に書く

    4月1日の仕訳の借方「現金 300,000」は、現金勘定の左に書く

  2. 2

    仕訳の貸方の金額は、その勘定の貸方(右)に書く

    4月1日の仕訳の貸方「普通預金 300,000」は、普通預金勘定の右に書く

  3. 3

    日付と「相手の勘定科目」を添える

    現金勘定の左には「4/1 普通預金 300,000」と、仕訳の反対側の勘定科目を書く

  4. 4

    相手の勘定科目が2つ以上なら「諸口」と書く

    4月10日の普通預金の相手は借入金と支払利息の2つなので、「4/10 諸口 1,175,000」とする

先ほどの仕訳を、現金勘定と普通預金勘定に転記すると次のようになる。

現金
借方貸方
4/1 普通預金300,0004/3 燃料費180,000
4/2 売上450,000
普通預金
借方貸方
4/1 前期繰越40,000,0004/1 現金300,000
4/25 受取地代80,0004/10 諸口1,175,000
4/20 給料2,400,000

現金勘定の借方合計は750,000円、貸方合計は180,000円。差し引き570,000円が、4月末の手許現金だ。普通預金は、借方合計40,080,000円-貸方合計3,875,000円=36,205,000円が残っている。このように、勘定の借方合計と貸方合計の差額を残高という。

資産の勘定は、ふつう借方が大きくなる(借方残高)。資産のホームポジションが左だからだ。同様に、負債・純資産・収益の勘定は貸方残高、費用の勘定は借方残高になる。

08主要簿 ― 仕訳帳と総勘定元帳

実務では、仕訳を仕訳帳(しわけちょう)という帳簿に記録し、それを総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)に転記する。この2つは、すべての取引を記録する最も重要な帳簿なので、主要簿と呼ばれる。

仕訳帳の記入例
日付摘要元丁借方貸方
4/10諸口 /(普通預金)21,175,000
(借入金)201,000,000
(支払利息)41175,000
借入金の返済と利息の支払い

表は横にスクロールできます →

※仕訳帳では、勘定科目を( )で囲んで書き、借方科目を左寄せ、貸方科目を右寄せで記入する。複数の科目がある側には「諸口」と書く。「元丁」欄には、転記先の総勘定元帳のページ番号(勘定口座の番号)を書き、転記済みであることを示す。最終行の小書き(こがき)は取引の内容の簡単な説明。

総勘定元帳は、勘定科目ごとのページを集めた帳簿だ。T字勘定は、総勘定元帳を簡略化した学習用の形である。実際の総勘定元帳には、日付・摘要(相手科目)・仕丁(仕訳帳のページ)・借方・貸方の欄を設けた標準式と、それに残高欄を加えた残高式がある。

総勘定元帳(残高式)の例 ― 現金勘定
日付摘要仕丁借方貸方借/貸残高
4/1普通預金1300,000借300,000
4/2売上1450,000借750,000
4/3燃料費1180,000借570,000

表は横にスクロールできます →

09確認問題

問1次の出来事のうち、簿記上の取引に当たるものに○、当たらないものに✗をつけなさい。

(1) 店舗の賃貸借契約を結んだ (2) 倉庫の商品が盗まれた (3) 従業員を1名採用する契約を結んだ (4) 借入金の利息を現金で支払った (5) 取引先に商品を注文した (6) 建物が火災で焼失した

解答・解説を見る▼

(1) ✗ (2) ○ (3) ✗ (4) ○ (5) ✗ (6) ○

(2)と(6)は、取引の意思はなくても資産が減少しているので簿記上の取引になる。(1)(3)(5)は契約・注文だけで、財産の増減がない。

問2次の取引を仕訳しなさい。

(1) 現金500,000円を普通預金に預け入れた。

(2) 事務用のパソコン200,000円を購入し、代金は現金で支払った(勘定科目は「備品」)。

(3) 銀行から1,000,000円を借り入れ、普通預金に入金された。

(4) 従業員の給料300,000円を現金で支払った。

(5) 取引の仲介を行い、手数料50,000円を現金で受け取った。

(6) 借入金200,000円を利息6,000円とともに普通預金から返済した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 資産の増加・資産の減少
借方科目金額貸方科目金額
普通預金500,000現金500,000
仕訳(2) 資産の増加・資産の減少
借方科目金額貸方科目金額
備品200,000現金200,000
仕訳(3) 資産の増加・負債の増加
借方科目金額貸方科目金額
普通預金1,000,000借入金1,000,000
仕訳(4) 費用の発生・資産の減少
借方科目金額貸方科目金額
給料300,000現金300,000
仕訳(5) 資産の増加・収益の発生
借方科目金額貸方科目金額
現金50,000受取手数料50,000
仕訳(6) 負債の減少+費用の発生・資産の減少
借方科目金額貸方科目金額
借入金200,000普通預金206,000
支払利息6,000

問3次の仕訳を、現金勘定と売上勘定に転記しなさい。

5/1 現金 80,000 / 売上 80,000  5/9 現金 30,000 / 売上 30,000

解答・解説を見る▼
現金
借方貸方
5/1 売上80,000
5/9 売上30,000
売上
借方貸方
5/1 現金80,000
5/9 現金30,000

各勘定には、金額とともに日付と「相手の勘定科目」を書く。現金勘定の借方には相手科目の「売上」、売上勘定の貸方には相手科目の「現金」を記入する。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓簿記上の取引とは、資産・負債・純資産・収益・費用を増減させる出来事。契約や注文だけでは取引にならないが、盗難や火災は取引になる
  • ✓複式簿記は、1つの取引を2つの側面から記録する。左を借方、右を貸方という(漢字の意味は気にしない)
  • ✓仕訳のルールは1つ:増えたらホームポジション側、減ったら反対側
  • ✓取引は、借方の4要素と貸方の4要素の組み合わせ(取引の8要素)でできている
  • ✓仕訳を勘定ごとに集計し直すことを転記という。相手科目が複数なら「諸口」
  • ✓主要簿は仕訳帳と総勘定元帳。すべての勘定の借方合計と貸方合計は一致する(貸借平均の原理)

第2部 キャッシュの最前線

第3章現金と現金過不足

閉店後のレジ、3,200円足りない。犯人は誰だ?

レジの現金が合わない。そのとき、まず疑うべきは「人」ではなく「記録」だ。簿記の「現金」の範囲と、帳簿と現実のズレを正直に記録するための勘定科目「現金過不足」を学ぶ。

読了目安 25分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸簿記上の「現金」に含まれるもの(通貨代用証券)を判定できる
  • ▸現金出納帳の役割と書き方を理解する
  • ▸現金過不足の期中処理・原因判明時・決算時の仕訳ができる
  • ▸現金の不一致を「内部統制」の視点で捉えられる
この章の目次▼
  1. 01簿記の「現金」は、お札と硬貨だけではない
  2. 02現金出納帳 ― 現金の動きを「時系列」で追う
  3. 03現金過不足 ― 帳簿と現実の「ズレ」を正直に記録する
  4. 04現金過不足の仕訳パターン ― 超過のときは逆になる
  5. 05人を疑う前に、仕組みを疑え ― 内部統制
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

深夜3時、消えた3,200円

深夜3時、おかわり堂・出町柳店。最後の客がのれんをくぐって出ていくと、アルバイトリーダーの坂口がレジを締め始めた。

POSレジの画面が示す「あるべき現金」は412,800円。だが、何度数えても、ドロワーの中には409,600円しかない。

3,200円が、消えていた。

その夜のシフトは3人。翌朝、報告を受けた店長は険しい顔でスマートフォンを握った。「3人とも呼び出す。誰かが抜いたに決まってる」

本部の経理部長が、その電話を止めた。犯人探しを始める前に、帳簿の上でやるべきことがある。

はたして、3,200円を盗んだ「犯人」はいるのか?

01簿記の「現金」は、お札と硬貨だけではない

問いに入る前に、そもそも簿記でいう「現金」とは何かを確認しておこう。

簿記の現金には、日本銀行券(紙幣)や硬貨といった通貨に加えて、銀行などに持ち込めばすぐに通貨に換えられる証券も含まれる。これを通貨代用証券という。

簿記上の「現金」に含まれるもの
種類内容
通貨紙幣・硬貨
他人振出小切手取引先などが振り出した小切手。銀行に持ち込めば換金できる
送金小切手銀行が送金のために発行する小切手
郵便為替証書普通為替証書・定額小為替証書。郵便局で換金できる
配当金領収証株式の配当金を受け取るための証書
期限の到来した公社債の利札国債・社債などの利息を受け取る権利。期限が来れば換金できる
まぎらわしいが「現金」ではないもの
もの正しい勘定科目詳しくは
自分(自社)が振り出した小切手当座預金第4章
普通預金・定期預金普通預金・定期預金第4章
郵便切手・収入印紙通信費・租税公課(期末に未使用なら貯蔵品)第14・15章
他社が発行した商品券受取商品券第7章
クレジットカードでの売上クレジット売掛金第7章
約束手形受取手形第8章

例題学会の弁当500食の代金を、小切手で受け取った

おかわり堂は、近くの大学で開かれた学会から、弁当500食(1食800円、合計400,000円)の注文を受けて納品した。代金は、学会の事務局が振り出した小切手で受け取った。

解答・解説を見る▼
仕訳他人が振り出した小切手は、すぐに換金できるので「現金」
借方科目金額貸方科目金額
現金400,000売上400,000

「小切手を受け取った」と聞くと、つい「当座預金」としたくなる。だが、他人が振り出した小切手を受け取ったら現金だ。当座預金を使うのは、自社が振り出した小切手に関する取引である(第4章)。

※紙の小切手・手形は2027年3月末で廃止される予定であり、2027年4月以降の試験では、紙の小切手・手形に関する論点は出題区分表から削除される見込み(2025年12月公表の暫定版)2027年度〜範囲外。2026年度(2027年3月まで)の試験を受ける人は、引き続き必ず押さえておこう。

02現金出納帳 ― 現金の動きを「時系列」で追う

現金の動きは、仕訳帳と総勘定元帳(主要簿)にも記録される。だが現金は、毎日何十回も出入りする。そこで、現金の入出金だけを詳しく記録する専用の帳簿を設ける。それが現金出納帳(げんきんすいとうちょう)だ。

現金出納帳のように、主要簿を補って特定の取引を詳しく記録する帳簿を補助簿という(第16章)。

現金出納帳(おかわり堂・出町柳店)
日付摘要収入支出残高
5/31前日繰越(釣銭準備金)50,00050,000
5/31本日の現金売上341,500391,500
5/31普通預金へ預け入れ341,50050,000
5/31次日繰越50,000
合計391,500391,500

表は横にスクロールできます →

※1日の終わりに、残高を「次日繰越」として支出欄に記入し、収入と支出の合計を一致させて締め切る。翌日は「前日繰越」から始める。実際の店舗では、日々の売上はPOSレジで集計され、本部の経理がまとめて仕訳を行うことが多い。

03現金過不足 ― 帳簿と現実の「ズレ」を正直に記録する

さて、問いに戻ろう。出町柳店では、帳簿上の現金(412,800円)より、実際の現金(409,600円)が3,200円少なかった。

帳簿上の現金残高を帳簿残高、実際に数えた現金の金額を実際有高(じっさいありだか)という。この2つが一致しないとき、簿記では次の考え方をとる。

仕訳6月1日 現金の実際有高が帳簿残高より3,200円少なかった(不足)
借方科目金額貸方科目金額
現金過不足3,200現金3,200

現金が3,200円減ったので、現金を貸方に書いて帳簿残高を減らす。その相手を、借方の現金過不足とする。これで、帳簿の現金は実際有高の409,600円と一致した。

SCENE

2日後

6月3日、店長から電話がかかってきた。声が上ずっている。

「すみません……犯人、俺でした」

あの夜の0時過ぎ、ゴミ袋と食器用洗剤が切れた。店長はレジから2,400円を取り出し、向かいのコンビニで買ってきた。レシートは、エプロンのポケットに入ったままだった。

仕訳6月3日 不足額のうち2,400円は、消耗品の購入の記入漏れと判明した
借方科目金額貸方科目金額
消耗品費2,400現金過不足2,400

原因が判明した分は、現金過不足から本来の勘定科目に振り替える。消耗品費(費用)が発生していたのだから借方に、預けておいた現金過不足は貸方に書いて減らす。

残りの800円は、最後まで原因が分からなかった。混雑した時間帯に、お釣りを渡しすぎたのかもしれない。

仕訳3月31日(決算日) 残りの不足額800円は、原因が判明しなかった
借方科目金額貸方科目金額
雑損800現金過不足800

決算日になっても原因が分からない不足額は雑損(ざっそん・費用)に、超過額は雑益(ざつえき・収益)に振り替えて、現金過不足をゼロにする。

現金過不足
借方貸方
6/1 現金3,2006/3 消耗品費2,400
3/31 雑損800
3,2003,200

ANSWER ― 答え合わせ

犯人は「人」ではなく「記録されなかった取引」だった

消えた3,200円のうち、2,400円は店長自身が消耗品の購入に使い、記録を忘れていたものだった。残る800円も、盗まれたという証拠はない。お釣りの渡し間違いである可能性が高い。

もし店長が電話を止めずに3人を問い詰めていたら、無実のアルバイトを疑い、信頼を失い、人手不足の深夜帯のシフトに穴を開けていたかもしれない。

現金過不足という勘定科目は、「ズレがあった」という事実だけを先に記録し、原因の判断を保留するための道具だ。疑うより先に、記録する。調べる。それでも分からなければ、雑損として正直に処理する。この順番が、会社の数字と、そこで働く人の両方を守るのである。

04現金過不足の仕訳パターン ― 超過のときは逆になる

実際有高が帳簿残高より多い場合も、考え方は同じだ。まず現金を増やして実際有高に合わせ、相手を現金過不足とする。仕訳の左右が、不足のときとちょうど逆になる。

現金過不足の仕訳パターン
場面不足(実際<帳簿)のとき超過(実際>帳簿)のとき
①ズレを発見した現金過不足 / 現金現金 / 現金過不足
②原因が判明した正しい費用など / 現金過不足現金過不足 / 正しい収益など
③決算日まで原因不明雑損 / 現金過不足現金過不足 / 雑益

例題超過なのに「雑損」? ― 試験で最も狙われるパターン

期中に、現金の実際有高が帳簿残高より5,000円多かったため、現金過不足で処理していた。決算日に調べたところ、受取手数料8,000円の入金と、旅費交通費2,000円の支払いの記入漏れが判明した。残額は原因不明である。決算日の仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳期中(超過の発見)
借方科目金額貸方科目金額
現金5,000現金過不足5,000
仕訳決算日
借方科目金額貸方科目金額
現金過不足5,000受取手数料8,000
旅費交通費2,000
雑損1,000

考え方は「まず判明した原因を正しく仕訳し、最後に差額を埋める」。

  • 現金過不足(貸方残高5,000円)をゼロにするため、借方に5,000円
  • 受取手数料の記入漏れ → 収益の発生なので貸方に8,000円
  • 旅費交通費の記入漏れ → 費用の発生なので借方に2,000円
  • この時点で借方7,000円、貸方8,000円。差額1,000円を借方に入れて一致させる。借方に来る差額は費用なので雑損

現金全体は「超過」だったのに、原因を調べたら、説明できない「不足」が1,000円残った。超過=雑益と決めつけず、必ず貸借差額で判断しよう。

仕訳決算日に、現金の実際有高が帳簿残高より1,500円多いことが判明し、原因は不明だった
借方科目金額貸方科目金額
現金1,500雑益1,500

05人を疑う前に、仕組みを疑え ― 内部統制

現金は、会社の資産の中で最も盗まれやすく、最もミスが起きやすい。だからこそ、会社は「人が誠実であること」に頼らず、「間違いや不正が起きにくい仕組み」を作る。これを内部統制という。

現金を守る内部統制の例
仕組みねらい
レジ締めを2人で行い、双方が署名する1人による着服や数え間違いを防ぐ
釣銭準備金を毎日同じ額(例:5万円)に戻す日々の売上と、店に置く現金を明確に分ける
店の経費はレジから出さず、小口現金を使う売上の現金と経費の現金を混ぜない(第4章)
現金過不足を毎日記録し、本部が店舗別に集計する特定の店・時間帯に偏ったズレを早期に発見する
券売機・セルフレジ・キャッシュレス決済の導入人が現金に触れる回数そのものを減らす

外食チェーンの多くが券売機やセルフレジ、キャッシュレス決済を導入するのは、人件費の削減だけが理由ではない。現金に人の手が触れる回数を減らせば、数え間違いも、お釣りの渡し間違いも、着服の誘惑も、まとめて消せるからだ。

THINK ― 判断してみよう

12店舗の中で、1店舗だけ毎月数千円が足りない

おかわり堂の本部に、12店舗の現金過不足の月次データが集まってきた。11店舗は毎月±1,000円以内に収まっている。だが、ある1店舗だけが、この半年間、毎月3,000〜5,000円の不足を出し続けている。金額は小さい。あなたなら、どう動くか?

考え方の例を見る▼

まず、金額の小ささに惑わされない。重要なのは金額ではなく「パターン」だ。他の店では起きていないズレが、1店舗だけで継続的に、しかも一方向(不足)に偏って起きている。これは単なる偶然のミスでは説明しにくい「シグナル」である。

次に、いきなり人を疑わず、データで絞り込む。

  • ズレが発生した日付・曜日・時間帯と、シフト表を突き合わせる
  • その店舗だけ業務の手順(両替のやり方、経費の支払い方法、レジ締めの人数)が違っていないかを確認する
  • POSの取消・返品・値引きの記録に、不自然な集中がないかを調べる

そして、仕組みで対策する。2人体制でのレジ締めを徹底し、店舗間で人員をローテーションし、キャッシュレス比率を上げる。不正であれ単なるミスであれ、仕組みを変えればズレは止まるはずだ。止まらなければ、そこで初めて、事実に基づいて個人の責任を問う。

月数千円の損失そのものより、「この会社では現金のズレが放置される」という空気が広がることのほうが、はるかに高くつく。

06確認問題

問1次のうち、簿記上「現金」として扱うものをすべて選びなさい。

ア.他人振出小切手 イ.自己振出小切手 ウ.郵便切手 エ.送金小切手 オ.収入印紙 カ.配当金領収証 キ.普通為替証書 ク.他社が発行した商品券

解答・解説を見る▼

ア、エ、カ、キ

イは当座預金、ウは通信費(期末に未使用なら貯蔵品)、オは租税公課(同)、クは受取商品券で処理する。

問2次の一連の取引を仕訳しなさい。

(1) 現金の実際有高を調べたところ85,000円で、帳簿残高は90,000円だった。

(2) (1)の不足額のうち3,000円は、郵便切手の購入(通信費)の記入漏れであることが判明した。

(3) 決算日になっても、残りの不足額の原因は判明しなかった。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 帳簿の現金を5,000円減らして実際有高に合わせる
借方科目金額貸方科目金額
現金過不足5,000現金5,000
仕訳(2) 判明した分を本来の勘定に振り替える
借方科目金額貸方科目金額
通信費3,000現金過不足3,000
仕訳(3) 残額2,000円を雑損に振り替える
借方科目金額貸方科目金額
雑損2,000現金過不足2,000

問3決算日に、現金過不足勘定の借方残高が4,000円あった。調査の結果、水道光熱費6,000円の支払いと、受取利息3,000円の受け取りの記入漏れが判明した。残額は原因不明である。決算整理仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
水道光熱費6,000現金過不足4,000
雑損1,000受取利息3,000

現金過不足の借方残高4,000円をゼロにするため、貸方に4,000円。水道光熱費(費用)は借方に6,000円、受取利息(収益)は貸方に3,000円。この時点で借方6,000円、貸方7,000円なので、差額1,000円を借方に入れる。借方の差額は雑損となる。

問4決算日に現金の実際有高を確認したところ、帳簿残高より700円少なかった。原因は不明である。仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳決算日当日の発見なので、現金過不足を使わず直接「雑損」とする
借方科目金額貸方科目金額
雑損700現金700

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓簿記の「現金」は、通貨+通貨代用証券(他人振出小切手、送金小切手、郵便為替証書、配当金領収証、期限到来の公社債利札)
  • ✓自己振出小切手は当座預金、切手は通信費、収入印紙は租税公課。現金と混同しない
  • ✓現金出納帳は、現金の入出金を時系列で詳しく記録する補助簿
  • ✓現金のズレは、まず帳簿を実際有高に合わせ、差額を「現金過不足」に仮置きする
  • ✓原因が判明したら本来の勘定へ振り替え、決算日まで不明なら雑損・雑益へ。最後の差額は貸借差額で判断する
  • ✓ズレは消さずに記録する。人を疑う前に、仕組み(内部統制)を疑う

第2部 キャッシュの最前線

第4章預金・小切手・当座借越・小口現金

残高ゼロの口座から、なぜ500万円を払えたのか?

普通預金、定期預金、そして小切手を振り出すための当座預金。銀行口座の仕組みを知ると、会社の「命綱」と「即死トラップ」の両方が見えてくる。現場の小さな支払いを支える小口現金まで、預金の全論点を学ぶ。

読了目安 35分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸普通預金・定期預金の仕訳と、複数口座の管理方法を理解する
  • ▸小切手の振出し・受取りと当座預金の仕訳ができる
  • ▸当座借越の仕組みと、決算時の振替処理ができる
  • ▸小口現金(定額資金前渡法)の仕組みと仕訳ができる
この章の目次▼
  1. 01預金の基本 ― 普通預金と定期預金
  2. 02当座預金と小切手 ― 「紙1枚」で支払うための口座
  3. 03答えの鍵 ― 当座借越
  4. 04小口現金 ― 現場の「小さな支払い」を仕組みで管理する
  5. 05確認問題

QUESTION ― この章の問い

残高ゼロの口座から、なぜ500万円の小切手が落ちたのか

月末の午後、洛北ミートの経理担当・村井の顔から血の気が引いた。

今朝、仕入先の畜産会社に渡した500万円の小切手。それが今日、銀行に持ち込まれる。だが、当座預金の口座残高は、得意先からの入金が遅れているせいで、ほぼゼロだった。

「不渡りになる……」

小切手が残高不足で落ちなければ「不渡り」になる。不渡りを半年以内に2回出せば、銀行取引停止処分。それは企業にとって、事実上の死刑宣告だ。

ところが夕方、銀行のシステムを確認した村井は、目を疑った。小切手は何事もなかったかのように決済されていた。口座の残高は「マイナス480万円」と表示されている。

残高ゼロの口座から、なぜ500万円が支払えたのか? そして、このマイナス残高の正体は何なのか?

01預金の基本 ― 普通預金と定期預金

まずは基本から始めよう。会社が銀行に預けているお金は、預金という資産だ。代表的なのは次の3つである。

会社が使う主な預金
種類特徴会社での主な使い道
普通預金いつでも預け入れ・引き出しができる。利息がつく売上の入金、給料・経費の振込、口座振替
定期預金一定期間引き出せない代わりに、普通預金より利息が高い余裕資金の運用、借入れの担保
当座預金小切手や手形の支払いに使う決済用の口座。利息はつかない取引先への小切手・手形による支払い

普通預金と定期預金の仕訳は、現金と同じ要領だ。預金が増えたら借方、減ったら貸方に書く。

例題IRONWORKS 24の預金取引

(1) 6月分の会費のうち、口座振替分3,200,000円が普通預金に入金された。

(2) 普通預金から2,000,000円を、1年満期の定期預金に預け替えた。

(3) 定期預金2,000,000円が満期となり、利息6,000円とともに普通預金に入金された。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 会費の入金(ジムの売上)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金3,200,000売上3,200,000
仕訳(2) 普通預金から定期預金へ
借方科目金額貸方科目金額
定期預金2,000,000普通預金2,000,000
仕訳(3) 満期・利息の受取り
借方科目金額貸方科目金額
普通預金2,006,000定期預金2,000,000
受取利息6,000

預金どうしの振り替えは「資産の増加・資産の減少」。利息は収益(受取利息)だ。

※実際の預金利息には税金(源泉所得税など)が差し引かれるが、3級では問題文の指示がない限り考慮しない。

複数の口座は「銀行名つきの勘定」で管理する

IRONWORKS 24は、会費の引き落とし用に京都中央銀行、給料の振込用に洛北信用金庫と、目的別に複数の普通預金口座を持っている。口座が複数あると、「普通預金」という1つの勘定だけでは、どの口座にいくらあるのか分からなくなる。

そこで、口座ごとに勘定科目を分けて管理する方法がある。

仕訳京都中央銀行の普通預金から、洛北信用金庫の普通預金へ1,500,000円を移した
借方科目金額貸方科目金額
普通預金洛北信用金庫1,500,000普通預金京都中央銀行1,500,000

※試験では「普通預金A銀行」「当座預金B銀行」のように、問題文で指定された勘定科目を使う。指定がなければ「普通預金」でよい。

02当座預金と小切手 ― 「紙1枚」で支払うための口座

当座預金は、小切手で支払いをするための口座だ。会社は銀行と当座取引契約を結び、小切手帳を受け取る。支払いのときは、小切手に金額と署名を書いて相手に渡す(これを振り出すという)。受け取った相手が銀行に小切手を持ち込むと、振り出した会社の当座預金から代金が引き落とされる。

小切手による支払いの流れ

  1. 1

    洛北ミートが小切手を振り出す

    仕入先の畜産会社に、金額を書いた小切手を渡す

  2. 2

    畜産会社が銀行に持ち込む

    自社の取引銀行に小切手を預ける(取立てを依頼する)

  3. 3

    洛北ミートの当座預金から引き落とされる

    手形交換所(現在は電子交換所)を通じて決済され、代金が畜産会社の口座に入る

簿記では、小切手を振り出した時点で、当座預金を減らす。実際の引き落としは相手が銀行に持ち込んだときだが、振り出した瞬間に「支払いを済ませた」と考えるのだ。

仕訳洛北ミートは、畜産会社から牛肉を仕入れ、代金5,000,000円を小切手を振り出して支払った
借方科目金額貸方科目金額
仕入5,000,000当座預金5,000,000

※「仕入」は、販売するための商品を買ったときに使う勘定科目(第5章)。

小切手の仕訳で間違えやすいのは、「誰が振り出した小切手か」だ。

小切手の仕訳 ― 誰が振り出したかで決まる
場面仕訳で使う勘定理由
自社が小切手を振り出して支払った当座預金(貸方)自社の当座預金が減る
他社が振り出した小切手を受け取った現金(借方)通貨代用証券(第3章)
他社振出の小切手を受け取り、ただちに当座預金に預け入れた当座預金(借方)現金を経由せず当座預金が増える
自社が以前振り出した小切手を受け取った当座預金(借方)振り出したときに減らした当座預金が戻る

例題小切手の受取り3パターン

洛北ミートは、得意先の飲食店3社から売掛金(後払いの代金)をそれぞれ小切手で回収した。

(1) A社が振り出した小切手200,000円を受け取った。

(2) B社が振り出した小切手300,000円を受け取り、ただちに当座預金に預け入れた。

(3) 以前に洛北ミートがC社に振り出した小切手100,000円を、C社から受け取った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 他人振出小切手 → 現金
借方科目金額貸方科目金額
現金200,000売掛金200,000
仕訳(2) ただちに当座預金へ → 当座預金
借方科目金額貸方科目金額
当座預金300,000売掛金300,000
仕訳(3) 自己振出小切手の戻り → 当座預金
借方科目金額貸方科目金額
当座預金100,000売掛金100,000

(3)は、洛北ミートが振り出した小切手が、まだ銀行に持ち込まれないまま、別の取引の支払いとして戻ってきたケース。振り出したときに減らした当座預金を元に戻すので、当座預金の増加とする。

当座預金出納帳(洛北ミート・10月)
日付摘要預入引出借/貸残高
10/1前月繰越200,000借200,000
10/5畜産会社へ買掛金支払い 小切手No.1055,000,000貸4,800,000
10/20得意先から売掛金回収6,000,000借1,200,000
10/31次月繰越1,200,000
6,200,0006,200,000
11/1前月繰越1,200,000借1,200,000

表は横にスクロールできます →

※「借/貸」欄は、残高が預金(借方残高)なら「借」、当座借越(貸方残高)なら「貸」と書く。10月5日の時点では、残高を超える小切手が決済されたので「貸 4,800,000」(当座借越)になっている。月末に「次月繰越」を引出欄に書いて締め切る。

03答えの鍵 ― 当座借越

さて、問いの答えに近づこう。洛北ミートの当座預金の残高はほぼゼロだったのに、500万円の小切手は決済された。それを可能にしたのが、当座借越(とうざかりこし)という契約だ。

ANSWER ― 答え合わせ

残高ゼロでも小切手が落ちた理由

洛北ミートは、メインバンクと借越限度額1,000万円の当座借越契約を結んでいた。前任の経理部長が、万が一に備えて用意しておいた命綱だ。

当座預金の残高20万円に対して500万円の小切手が持ち込まれたため、銀行は不足する480万円を自動的に立て替えた。口座に表示された「マイナス480万円」は、預金ではなく、銀行に対する480万円の借金である。

命綱は機能した。だが、同時に忘れてはならない。もし限度額を超えていたら、あるいは当座借越契約がなかったら、その小切手は不渡りになっていた。

当座借越の仕訳 ― 期中と決算で扱いが変わる

3級では、期中は当座預金の残高がマイナスになっても当座預金勘定のまま処理する。その結果、当座預金勘定が貸方残高になる。

当座預金(洛北ミート)
借方貸方
前日残高200,000仕入(小切手)5,000,000

貸方の合計(5,000,000円)が借方の合計(200,000円)を4,800,000円上回っている。これが「貸方残高4,800,000円」、つまり銀行からの借越額だ。

だが、マイナスの預金という資産は存在しない。そこで決算日には、貸方残高を当座借越(負債)または借入金(負債)に振り替えて、貸借対照表に負債として正しく表示する。

仕訳決算日:当座預金勘定の貸方残高4,800,000円を当座借越勘定に振り替えた
借方科目金額貸方科目金額
当座預金4,800,000当座借越4,800,000

※当座借越勘定ではなく「借入金」勘定に振り替えるよう指示されることもある。問題文の指示に従うこと。貸借対照表では「借入金」として表示する。

そして、翌期の最初の日(期首)には、決算日の振替仕訳と逆の仕訳を行って、当座預金勘定に戻す。これを再振替仕訳という。

仕訳翌期首:再振替仕訳(決算日の仕訳の逆)
借方科目金額貸方科目金額
当座借越4,800,000当座預金4,800,000

THINK ― 判断してみよう

「当座借越の限度額を、3,000万円に増やしてもらおう」

今回の一件で肝を冷やした洛北ミートの社長が言った。「今回は助かった。だが次は分からない。銀行に頼んで、借越限度額を1,000万円から3,000万円に増やしてもらおう。そうすれば安心だ」。あなたなら、この提案にどう応えるか?

考え方の例を見る▼

限度額の引き上げは、選択肢の1つとして交渉する価値がある。ただし、それで「安心」とは言えない。

まず、当座借越は借金だ。限度額を増やしても、売掛金の回収が遅れているという根本の問題は解決しない。むしろ、借越に頼るほど利息がかさみ、「いつでも借りられる」という安心感が資金管理を甘くする。

次に、銀行は借越枠をいつでも見直せる立場にある。業績が悪化して本当に必要になったときほど、枠を減らされるリスクがある。最も必要なときに最も消えやすい命綱なのだ。

優先して打つべき手はこうだ。

  • 得意先ごとの売掛金の回収状況を毎週チェックし、遅れには即座に督促する(第7章)
  • 月末に支払いが集中しないよう、仕入先と支払日を調整する
  • 3か月先までの日次の資金繰り表を作り、残高がマイナスになる日を事前に把握する
  • そのうえで、借越枠は「使わないこと」を前提とした保険として確保する

04小口現金 ― 現場の「小さな支払い」を仕組みで管理する

最後に、現場の小さな支払いの管理方法を学ぼう。

おかわり堂の各店舗では、毎日のように細かい支払いが発生する。宅配便の送料、急に切れたゴミ袋、郵便切手、店長の銀行への交通費……。第3章で見たように、これをレジの売上金から払うと、現金過不足の原因になる。

そこで、会社は各店舗の店長に、少額の支払い専用の現金をあらかじめ渡しておく。これを小口現金(こぐちげんきん)という。お金を預かって支払いを担当する人を小口係(用度係)と呼ぶ。

例題おかわり堂・今出川店の小口現金

(1) 6月1日、本部の会計係は、今出川店の店長(小口係)に、小口現金として30,000円の小切手を振り出して渡した。

(2) 6月7日、店長から1週間分の支払いの報告を受けた。内訳は、郵便切手(通信費)3,000円、宅配便の送料(通信費)1,800円、ゴミ袋・洗剤(消耗品費)6,500円、銀行へのバス代(旅費交通費)460円。

(3) 報告を受けた会計係は、ただちに同額の小切手を振り出して補給した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 小口現金の前渡し
借方科目金額貸方科目金額
小口現金30,000当座預金30,000
仕訳(2) 支払いの報告を受けたとき
借方科目金額貸方科目金額
通信費4,800小口現金11,760
消耗品費6,500
旅費交通費460
仕訳(3) 同額を補給したとき
借方科目金額貸方科目金額
小口現金11,760当座預金11,760

報告を受けた時点で、小口現金を使った分だけ減らし、費用を計上する。補給すると、小口現金は30,000円(30,000-11,760+11,760)に戻る。

仕訳報告と補給を同時に行った場合((2)と(3)をまとめた仕訳)
借方科目金額貸方科目金額
通信費4,800当座預金11,760
消耗品費6,500
旅費交通費460
小口現金出納帳(今出川店・6月第1週)
受入日付摘要支払通信費消耗品費旅費交通費
30,0006/1小切手受入
6/2郵便切手3,0003,000
6/3ゴミ袋・洗剤6,5006,500
6/4銀行へのバス代460460
6/5宅配便の送料1,8001,800
合計11,7604,8006,500460
11,7606/7本日補給
6/7次週繰越30,000
41,760合計41,760
30,0006/8前週繰越

表は横にスクロールできます →

※小口現金出納帳は、左端に「受入」欄があるのが特徴。支払いは内訳欄(費目別の列)にも記入し、週末に費目ごとの合計を出して会計係に報告する。補給のタイミング(週末に補給するか、翌週の初めに補給するか)は問題文で確認しよう。

05確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 普通預金から3,000,000円を定期預金に預け替えた。

(2) 買掛金400,000円を支払うため、小切手を振り出した。

(3) 売掛金250,000円の回収として、得意先振出の小切手を受け取った。

(4) 売掛金180,000円の回収として、当社が以前に振り出した小切手を受け取った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
定期預金3,000,000普通預金3,000,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金400,000当座預金400,000
仕訳(3) 他人振出小切手は現金
借方科目金額貸方科目金額
現金250,000売掛金250,000
仕訳(4) 自己振出小切手の戻りは当座預金
借方科目金額貸方科目金額
当座預金180,000売掛金180,000

問2決算日に、当座預金勘定が320,000円の貸方残高となっていた。これは当座借越契約(借越限度額1,000,000円)によるものである。決算整理仕訳と、翌期首の再振替仕訳をしなさい(当座借越勘定を用いる)。

解答・解説を見る▼
仕訳決算日
借方科目金額貸方科目金額
当座預金320,000当座借越320,000
仕訳翌期首(再振替仕訳)
借方科目金額貸方科目金額
当座借越320,000当座預金320,000

問3定額資金前渡法を採用している。小口係から、今週の支払いとして、文房具代(消耗品費)2,300円、タクシー代(旅費交通費)3,500円、はがき代(通信費)1,200円の報告を受け、ただちに同額の小切手を振り出して補給した。仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳報告と補給を同時に行ったので、小口現金は相殺されて登場しない
借方科目金額貸方科目金額
消耗品費2,300当座預金7,000
旅費交通費3,500
通信費1,200

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓預金は資産。普通預金・定期預金・当座預金を区別し、複数口座は「普通預金〇〇銀行」のように口座別の勘定で管理できる
  • ✓小切手を振り出したら当座預金の減少。他人振出小切手の受取りは現金、自己振出小切手の戻りは当座預金
  • ✓当座借越は、残高を超えた支払いを銀行が立て替える契約。マイナス残高の正体は「借金」
  • ✓期中は当座預金のまま処理し、決算日に貸方残高を当座借越(または借入金)へ振り替え、翌期首に再振替する
  • ✓6か月以内に2回の不渡りで銀行取引停止。資金繰りの管理は会社の生命線
  • ✓小口現金は定額資金前渡法で管理する。報告時に費用を計上し、使った分だけ補給する

第3部 利益のエンジン

第5章商品売買(三分法)と売上原価

売上は過去最高。なのに、なぜ利益が半分以上消えたのか?

毎月の試算表では絶好調だったのに、決算の日、冷凍庫の在庫を数えた瞬間に利益が蒸発した。「仕入」と「売上原価」の違いを知らない経営者を襲う、商品売買の落とし穴を解き明かす。

読了目安 35分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸分記法と三分法の違いと、三分法が実務で使われる理由を理解する
  • ▸仕入・売上の仕訳(諸掛り・返品を含む)ができる
  • ▸「しーくりくりしー」で売上原価を計算する決算整理ができる
  • ▸売上総利益・原価率から、ビジネスの収益構造を読み解ける
  • ▸2027年度から3級に加わる「売上原価対立法」を理解する
この章の目次▼
  1. 01商品売買を記録する2つの方法 ― 分記法と三分法
  2. 02仕入の仕訳 ― 運賃も「仕入原価」に含める
  3. 03売上の仕訳 ― 発送費の2つのパターン
  4. 04返品 ― 取り消すなら「逆仕訳」
  5. 05売上原価の計算 ― 「しーくりくりしー」
  6. 06答え合わせ ― 「仕入」は「原価」ではない
  7. 07売上総利益と原価率 ― 経営者が毎月見る数字
  8. 082027年度〜 売上原価対立法 ― 売るたびに原価を記録する方法
  9. 09確認問題

QUESTION ― この章の問い

決算の日、冷凍庫を開けた瞬間に6,000万円が消えた

おかわり堂の第8期は、絶好調に見えた。

売上は13億円。前期から8%伸びて、過去最高を更新した。毎月の試算表を見るたび、社長は上機嫌だった。食材の購入額、つまり「仕入」は累計で4億300万円。売上に対してわずか31%。業界でも指折りの低さだ。

「今期の利益は1億円を超える。全店に決算賞与を出そう」

社長は2月の店長会議で、そう約束した。

3月31日、決算日。全店の冷凍庫と倉庫の在庫を数え終えた経理部から、1枚の速報が上がってきた。そこに書かれた営業利益は、4,700万円。社長が見込んでいた1億700万円の半分にも届かない。

売上も、仕入も、毎月の数字どおりだった。誰も不正などしていない。なのに、なぜ6,000万円もの利益が、決算の日に消えたのか?

01商品売買を記録する2つの方法 ― 分記法と三分法

問いを解くには、会社が「商品を仕入れて売る」取引をどう記録しているかを知る必要がある。方法は大きく2つある。

分記法 ― 売るたびに利益を計算する

分記法(ぶんきほう)は、商品を商品勘定(資産)で記録し、売れるたびに、その商品の原価と利益を分けて記録する方法だ。

仕訳分記法:商品(牛肉)30,000円分を現金で仕入れた
借方科目金額貸方科目金額
商品30,000現金30,000
仕訳分記法:原価30,000円の商品を50,000円で売り上げ、現金を受け取った
借方科目金額貸方科目金額
現金50,000商品30,000
商品売買益20,000

売るたびに「原価いくらの商品を、いくらで売り、いくら儲けたか」が分かる。理屈としては美しい。

だが、おかわり堂を考えてみてほしい。12店舗で1日に何千杯もの牛丼が売れる。その1杯ごとに「この牛肉は何グラムで、いくらで仕入れたものか」を調べて仕訳するのは、現実的ではない。

※分記法は、2022年度の出題区分表の改定で3級の出題範囲から外れた。ここでは三分法の考え方を理解するための比較として紹介している。試験の商品売買は三分法で解く。

三分法 ― 3つの勘定で、原価は「期末にまとめて」計算する

そこで、実務で広く使われているのが三分法(さんぶんぽう)だ。商品売買を、次の3つの勘定で記録する。

三分法で使う3つの勘定
勘定科目要素使う場面
仕入費用商品を仕入れたとき(仕入れた金額=原価で記録)
売上収益商品を売ったとき(売った金額=売価で記録)
繰越商品資産決算日に売れ残っている商品(期末の在庫)を記録する

02仕入の仕訳 ― 運賃も「仕入原価」に含める

三分法では、商品を仕入れたら仕入(費用)の発生として借方に記録する。

仕訳おかわり堂は、洛北ミートから牛肉300,000円を仕入れ、代金は掛けとした
借方科目金額貸方科目金額
仕入300,000買掛金300,000

※「掛け」とは、代金を後日まとめて支払う約束で取引すること。後払いの義務は買掛金(負債)、後で受け取る権利は売掛金(資産)になる(第7章)。

商品を仕入れるときに、運送料や運送保険料などの費用がかかることがある。これを仕入諸掛(しいれしょがかり)という。当社が負担する仕入諸掛は、仕入の金額に含める。

仕訳商品400,000円を掛けで仕入れ、引取運賃8,000円を現金で支払った
借方科目金額貸方科目金額
仕入408,000買掛金400,000
現金8,000

03売上の仕訳 ― 発送費の2つのパターン

商品を売ったら、売った金額(売価)で売上(収益)を記録する。

仕訳洛北ミートは、飲食店に豚肉500,000円を販売し、代金は掛けとした
借方科目金額貸方科目金額
売掛金500,000売上500,000

売るときに当社が負担する配送料は、発送費(費用)として処理する。仕入諸掛と違い、商品の原価には含めない。

仕訳洛北ミートは、商品500,000円を掛けで販売し、配送業者に送料6,000円を現金で支払った(送料は当社負担)
借方科目金額貸方科目金額
売掛金500,000売上500,000
発送費6,000現金6,000

一方、送料を顧客から受け取る約束の場合は、受け取る送料を売上に含めて処理し、配送業者に支払った送料は発送費とする。

仕訳商品500,000円を販売し、送料6,000円を加えた合計額を掛けとした。配送業者には送料6,000円を現金で支払った
借方科目金額貸方科目金額
売掛金506,000売上506,000
発送費6,000現金6,000

04返品 ― 取り消すなら「逆仕訳」

品違いや品質不良で商品を返品することがある。返品は、仕入(または売上)の取り消しだから、もとの仕訳の逆を書けばよい。

例題解凍しかけた牛肉の返品

おかわり堂は、洛北ミートから掛けで仕入れた牛肉のうち、配送中の温度管理の不備で品質が劣化していた20,000円分を返品した。

(1) おかわり堂の仕訳 (2) 洛北ミートの仕訳

解答・解説を見る▼
仕訳(1) おかわり堂(仕入の取り消し=仕入戻し)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金20,000仕入20,000
仕訳(2) 洛北ミート(売上の取り消し=売上戻り)
借方科目金額貸方科目金額
売上20,000売掛金20,000

仕入れたときの「仕入/買掛金」、売ったときの「売掛金/売上」を、それぞれ左右逆にしている。

05売上原価の計算 ― 「しーくりくりしー」

いよいよ問いの核心だ。三分法では、仕入勘定には「1年間に仕入れた金額」が集まる。だが、仕入れた商品が全部売れたとは限らない。期首に倉庫に残っていた商品もある。

そこで、本当の原価である売上原価(実際に売れた商品の原価)を、次の式で計算する。

FORMULA ― 公式

売上原価の計算式

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

手元にあった商品(原価)
その行き先
期首商品棚卸高
(前期の売れ残り)
当期商品仕入高
(今期仕入れた分)
売上原価
(売れた分)
期末商品棚卸高
(売れ残り)
売上原価のボックス図 ― 左の合計と右の合計は一致する

期首に残っていた商品と、今期に仕入れた商品。これが今期に「売ることができた商品」のすべてだ。そのうち、期末に売れ残った分を差し引けば、売れた分の原価が出る。シンプルな理屈である。

期末に売れ残っている商品の金額を調べることを棚卸し(たなおろし)という。実際に倉庫や冷凍庫の商品を数え、原価をかけて期末商品棚卸高を求める。

決算整理仕訳 ― 仕入勘定を「売上原価」に変える

3級では、主に仕入勘定の中で売上原価を計算する(「売上原価」勘定を使う方法は後述)。そのための決算整理仕訳が、通称「しーくりくりしー」だ。

仕訳① 期首商品棚卸高を、繰越商品から仕入に振り替える(しー・くり)
借方科目金額貸方科目金額
仕入 ×××繰越商品 ×××
仕訳② 期末商品棚卸高を、仕入から繰越商品に振り替える(くり・しー)
借方科目金額貸方科目金額
繰越商品 ×××仕入 ×××

①で、前期から繰り越された在庫(繰越商品)を仕入に加える。②で、売れ残った在庫を仕入から差し引き、繰越商品として次期に繰り越す。この2本の仕訳を終えると、仕入勘定の残高は「期首+当期仕入-期末」、つまり売上原価になる。

借方の頭文字が「し(仕入)」「く(繰越商品)」、貸方が「く(繰越商品)」「し(仕入)」。だから「しーくり・くりしー」と覚えるのだ。

例題おかわり堂・第8期の決算整理

期首商品棚卸高 80,000,000円

当期商品仕入高 403,000,000円

期末商品棚卸高 20,000,000円

売上原価を計算するための決算整理仕訳を行い、売上原価を求めなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳① 期首商品を仕入へ(しー・くり)
借方科目金額貸方科目金額
仕入80,000,000繰越商品80,000,000
仕訳② 期末商品を繰越商品へ(くり・しー)
借方科目金額貸方科目金額
繰越商品20,000,000仕入20,000,000
仕入
借方貸方
当期仕入高403,000,000繰越商品20,000,000
繰越商品80,000,000(売上原価)463,000,000
483,000,000483,000,000
繰越商品
借方貸方
前期繰越80,000,000仕入80,000,000
仕入20,000,000(次期繰越)20,000,000
100,000,000100,000,000

売上原価 = 80,000,000 + 403,000,000 - 20,000,000 = 463,000,000円

仕入勘定の残高(借方483,000,000-貸方20,000,000)が、そのまま売上原価になる。繰越商品勘定には、期末の在庫20,000,000円が残り、次期に繰り越される。

もう1つの方法 ― 「売上原価」勘定で計算する

売上原価を計算するための専用の勘定、売上原価(費用)を設けて計算する方法もある。期首商品と当期仕入高を売上原価勘定に集め、期末商品を差し引く。3つの仕訳になる。

仕訳① 期首商品棚卸高を売上原価へ
借方科目金額貸方科目金額
売上原価80,000,000繰越商品80,000,000
仕訳② 当期商品仕入高を売上原価へ
借方科目金額貸方科目金額
売上原価403,000,000仕入403,000,000
仕訳③ 期末商品棚卸高を売上原価から繰越商品へ
借方科目金額貸方科目金額
繰越商品20,000,000売上原価20,000,000

売上原価勘定の残高は、80,000,000+403,000,000-20,000,000=463,000,000円。仕入勘定で計算した場合と同じ金額になる。仕入勘定の残高はゼロになる。

06答え合わせ ― 「仕入」は「原価」ではない

ANSWER ― 答え合わせ

消えた6,000万円の正体は、去年の冷凍庫の中にあった

社長が毎月見ていた「仕入4億300万円」は、今期に買った食材の金額にすぎない。売れた商品の原価(売上原価)ではなかった。

実は前期末、牛肉の値上がりを見越したおかわり堂は、通常の4倍にあたる8,000万円分の牛肉を冷凍で買いだめしていた。今期は、その在庫を使いながら営業していたため、新たな仕入は少なくて済んでいた。仕入率31%という「好成績」の正体は、前期に買った肉を食べていたことによる錯覚だったのだ。

決算で在庫を数えると、冷凍庫に残っていたのは2,000万円分。買いだめ分の差額6,000万円が、今期の原価に加わった。

社長の頭の中と、決算書の真実
項目社長の見込み決算書の真実
売上高13億円13億円
原価4億300万円(仕入)4億6,300万円(売上原価)
売上総利益8億9,700万円8億3,700万円
人件費・家賃などの経費7億9,000万円7億9,000万円
営業利益1億700万円4,700万円

本当の原価率は35.6%(4億6,300万円÷13億円)。業界平均並みどころか、過去最悪の水準だった。決算賞与の約束は、存在しない利益の上に立っていたのである。

「しーくりくりしー」は、試験のための呪文ではない。買った金額と、使った金額は違うという当たり前の事実を、帳簿に反映させるための仕訳なのだ。

07売上総利益と原価率 ― 経営者が毎月見る数字

売上から売上原価を差し引いた利益を売上総利益(粗利)という。売上総利益を売上で割ったものが売上総利益率(粗利率)、売上原価を売上で割ったものが原価率だ。

FORMULA ― 公式

売上総利益と原価率

売上総利益 = 売上 - 売上原価

原価率 = 売上原価 ÷ 売上

飲食業では、原価率は30〜35%前後がひとつの目安と言われる。さらに外食産業でよく使われるのが、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計が売上に占める割合、FL比率だ。一般に60%以下に抑えたいとされ、これを超えると、家賃や光熱費を払った後に利益がほとんど残らなくなる。

おかわり堂・第8期の収益構造

売上高

13億円

過去最高

原価率(F)

35.6%

前期は33%

人件費率(L)

30.0%

深夜帯の割増賃金が重い

FL比率

65.6%

目安の60%を大きく超過

THINK ― 判断してみよう

牛肉の高騰は来期も続く。あなたはどう手を打つか?

来期も牛肉の仕入価格は10%上がる見通しだ。何もしなければ、原価率は40%に近づき、利益は吹き飛ぶ。あなたなら、どんな手を打つか? 少なくとも3つ考えてみよう。

考え方の例を見る▼

提案したいのは、次のような組み合わせだ。

  • 月次で売上原価を把握する:まず再発防止。毎月末に主要食材の在庫を数え(月次棚卸し)、「仕入」ではなく「売上原価」で原価率を管理する。今回のような決算日のサプライズを二度と起こさない。
  • 価格改定とメニュー構成の見直し:牛すき丼の価格を40円上げても、おかわり無料という価値が支持されていれば客数は大きく減らないかもしれない。同時に、原価率の低い鶏の唐揚げ定食や豚丼を看板メニューとして育て、売上の構成(セールスミックス)を変える。
  • 仕入れ戦略の転換:値上がりを読んだ「買いだめ」は、当たれば得だが、外れれば在庫と現金を寝かせる投機だ。それよりも、洛北ミートなどと数量・期間を決めた長期契約で価格を安定させるほうが、経営の見通しが立つ。
  • 人件費(L)とセットで考える:深夜帯の人件費率が高い店舗では、営業時間やシフトの組み方も見直す(第10章)。FL比率で60%台前半を目指す。

数字の裏にある「なぜ」を分解し、打ち手を組み合わせる。これが経営分析の基本的な考え方だ。

082027年度〜 売上原価対立法 ― 売るたびに原価を記録する方法

2027年4月以降の試験では、2級で学んでいた売上原価対立法(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)が、3級の出題範囲に加わる予定だ(暫定版)。

売上原価対立法では、商品を商品勘定(資産)で記録し、売ったときに、売価で売上を計上すると同時に、その商品の原価を商品勘定から売上原価勘定(費用)へ振り替える。

仕訳売上原価対立法:商品300,000円を掛けで仕入れた
借方科目金額貸方科目金額
商品300,000買掛金300,000
仕訳売上原価対立法:原価200,000円の商品を280,000円で掛け販売した
借方科目金額貸方科目金額
売掛金280,000売上280,000
売上原価200,000商品200,000

売るたびに原価を振り替えるので、商品勘定の残高は常に「いま手元にあるはずの在庫」を、売上原価勘定の残高は「これまでに売れた商品の原価」を示す。三分法のような「しーくりくりしー」の決算整理は不要になる。

3つの記帳方法の比較
項目分記法三分法売上原価対立法
仕入時商品 / 買掛金など仕入 / 買掛金など商品 / 買掛金など
販売時現金など / 商品・商品売買益現金など / 売上現金など / 売上、売上原価 / 商品
売上原価の把握販売のつど(利益のみ記録)期末の棚卸しで一括計算販売のつど
決算整理(売上原価)不要必要(しーくりくりしー)不要
向いている業態少量・高額の商品多品種・大量販売POSや在庫システムで原価を即時把握できる会社

09確認問題

問1三分法により、次の取引を仕訳しなさい。

(1) 商品200,000円を掛けで仕入れ、引取運賃5,000円を現金で支払った。

(2) 商品350,000円を掛けで販売し、当社負担の発送費6,000円を現金で支払った。

(3) 商品100,000円を販売し、送料2,000円を加えた合計額を掛けとした。また、配送業者に送料2,000円を現金で支払った。

(4) 掛けで仕入れた商品のうち15,000円を、品違いのため返品した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 引取運賃は仕入に含める
借方科目金額貸方科目金額
仕入205,000買掛金200,000
現金5,000
仕訳(2) 当社負担の発送費は費用
借方科目金額貸方科目金額
売掛金350,000売上350,000
発送費6,000現金6,000
仕訳(3) 受け取る送料は売上に含める
借方科目金額貸方科目金額
売掛金102,000売上102,000
発送費2,000現金2,000
仕訳(4) 返品は逆仕訳
借方科目金額貸方科目金額
買掛金15,000仕入15,000

問2次の資料にもとづき、(1)決算整理仕訳と、(2)売上原価・売上総利益を求めなさい。

期首商品棚卸高120,000円、当期商品仕入高980,000円、期末商品棚卸高150,000円、当期売上高1,500,000円

解答・解説を見る▼
仕訳(1) しーくり
借方科目金額貸方科目金額
仕入120,000繰越商品120,000
仕訳(1) くりしー
借方科目金額貸方科目金額
繰越商品150,000仕入150,000

(2) 売上原価 = 120,000 + 980,000 - 150,000 = 950,000円

売上総利益 = 1,500,000 - 950,000 = 550,000円(原価率は約63.3%)

問3期末商品棚卸高を、実際より50,000円多く数えてしまった。売上原価と売上総利益は、正しい金額と比べてどうなるか。

解答・解説を見る▼

期末商品棚卸高は売上原価の式でマイナスする項目なので、多く数えると売上原価は50,000円小さくなり、売上総利益は50,000円大きくなる。

これが「在庫の水増しで利益が増える」仕組みだ。

問42027年度〜 売上原価対立法により、原価60,000円の商品を90,000円で販売し、代金は現金で受け取った取引を仕訳しなさい。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
現金90,000売上90,000
売上原価60,000商品60,000

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓分記法は販売のつど利益を計算する方法、三分法は「仕入・売上・繰越商品」の3勘定で記録し、原価を期末にまとめて計算する方法
  • ✓当社負担の仕入諸掛は仕入に含める(取得原価=購入代価+付随費用)。当社負担の発送費は費用
  • ✓送料を顧客から受け取るときは売上に含め、支払った送料は発送費とする。返品は逆仕訳
  • ✓売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高。決算整理は「しーくりくりしー」
  • ✓「仕入」は今期に買った額、「売上原価」は今期に売れた商品の原価。この2つは違う
  • ✓期末在庫を多く数えると利益が増える。だから棚卸しは厳格に行われる
  • ✓2027年度からは、販売のつど「売上原価/商品」と記録する売上原価対立法も3級の範囲に入る予定

第3部 利益のエンジン

第6章商品有高帳・仕入帳・売上帳

同じ牛肉、同じ売上。なのに利益が2つある。どちらが真実か?

2人の経理担当者が同じ取引から別々の利益を計算し、どちらも正しかった。在庫の原価をどう決めるかという「仮定」が、利益の数字を動かす。商品有高帳と、仕入帳・売上帳という3つの補助簿を学ぶ。

読了目安 35分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸商品有高帳を先入先出法・移動平均法で記入できる
  • ▸商品有高帳から売上原価・売上総利益を計算できる
  • ▸物価が上がる局面で、払出単価の決め方が利益にどう影響するかを説明できる
  • ▸仕入帳・売上帳の記入と、純仕入高・純売上高の計算ができる
この章の目次▼
  1. 01商品有高帳 ― 品目ごとの「在庫の家計簿」
  2. 0210月の牛ばら肉の動き
  3. 03先入先出法 ― 先に仕入れたものから先に払い出す
  4. 04移動平均法 ― 仕入れのたびに平均単価を計算し直す
  5. 05答え合わせ ― 「真実」は1つではない
  6. 06商品有高帳から売上原価と粗利を求める
  7. 07仕入帳と売上帳 ― 取引の「明細」を残す補助簿
  8. 08確認問題

QUESTION ― この章の問い

計算ミスはゼロ。なのに、粗利が2つある

洛北ミートの経理課。10月の月次決算で、主力商品「牛ばら肉」の粗利(売上総利益)を、2人の担当者が別々に計算した。

ベテランの島田が出した数字は400,000円。新人の谷口が出した数字は389,500円。

売上はどちらも同じ1,170,000円。仕入れた肉の量も、売った肉の量も、同じ伝票から拾っている。課長が2人の計算を1行ずつ検算したが、どちらにも計算ミスは見つからなかった。

同じ肉を、同じ量だけ、同じ値段で売ったのに、粗利が2つある。いったい、どちらが「真実」なのか?

01商品有高帳 ― 品目ごとの「在庫の家計簿」

問いを解く舞台は、商品有高帳(しょうひんありだかちょう)という帳簿だ。

第5章で学んだ三分法では、仕入勘定と売上勘定に「金額」は記録されるが、「どの商品が、何個、いくらで、いつ入って、いつ出ていったか」は分からない。そこで、商品の種類ごとに、受け入れ(仕入)・払い出し(販売)・残高を、数量・単価・金額で記録する補助簿を設ける。これが商品有高帳である。

ここで問題が起きる。牛肉の仕入値は、毎回違う。1kg 1,000円で買った肉と、1,200円で買った肉が、冷蔵庫の中で混ざっている。そこから400kgを出荷したとき、その原価は1kgいくらで計算すればよいのか?

この「払い出した商品の単価(払出単価)」の決め方として、3級では2つの方法を学ぶ。

0210月の牛ばら肉の動き

まず、洛北ミートの10月の牛ばら肉の動きを確認しよう。牛肉相場は上昇の一途で、仕入値は月の中でも上がり続けていた。

洛北ミート・牛ばら肉の10月の取引
日付取引数量単価
10/1前月繰越(月初の在庫)200kg1,000円
10/8畜産会社Aから仕入れ300kg1,200円
10/12焼肉店に販売(売価1kgあたり1,800円)400kg-
10/20畜産会社Bから仕入れ300kg1,400円
10/27おかわり堂に販売(売価1kgあたり1,800円)250kg-

03先入先出法 ― 先に仕入れたものから先に払い出す

先入先出法(さきいれさきだしほう)は、「先に仕入れた商品から、先に払い出した」と仮定して払出単価を決める方法だ。生鮮食品のように、古いものから使うのが自然な商品の流れとよく合う。

商品有高帳(先入先出法) 品名:牛ばら肉(単位:kg・円)
日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
10/1前月繰越2001,000200,0002001,000200,000
10/8仕入3001,200360,0002001,000200,000
3001,200360,000
10/12売上2001,000200,000
2001,200240,0001001,200120,000
10/20仕入3001,400420,0001001,200120,000
3001,400420,000
10/27売上1001,200120,000
1501,400210,0001501,400210,000
10/31次月繰越1501,400210,000
800980,000800980,000
11/1前月繰越1501,400210,0001501,400210,000

表は横にスクロールできます →

ポイントを順に見ていこう。

先入先出法による10月の売上原価は、440,000+330,000=770,000円。月末在庫は210,000円だ。

04移動平均法 ― 仕入れのたびに平均単価を計算し直す

移動平均法(いどうへいきんほう)は、仕入れるたびに、そのときの在庫と新たに仕入れた商品の平均単価を計算し直し、その単価で払い出す方法だ。

FORMULA ― 公式

移動平均法の平均単価

平均単価 = (残高の金額 + 受入の金額)÷(残高の数量 + 受入の数量)

商品有高帳(移動平均法) 品名:牛ばら肉(単位:kg・円)
日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
10/1前月繰越2001,000200,0002001,000200,000
10/8仕入3001,200360,0005001,120560,000
10/12売上4001,120448,0001001,120112,000
10/20仕入3001,400420,0004001,330532,000
10/27売上2501,330332,5001501,330199,500
10/31次月繰越1501,330199,500
800980,000800980,000
11/1前月繰越1501,330199,5001501,330199,500

表は横にスクロールできます →

移動平均法による10月の売上原価は、448,000+332,500=780,500円。月末在庫は199,500円だ。

05答え合わせ ― 「真実」は1つではない

2つの方法の結果を並べてみよう。

払出単価の決め方による違い(10月・牛ばら肉)
項目先入先出法(島田)移動平均法(谷口)
売上高(650kg×1,800円)1,170,0001,170,000
売上原価770,000780,500
売上総利益400,000389,500
月末在庫210,000199,500
合計(売上原価+月末在庫)980,000980,000

ANSWER ― 答え合わせ

どちらも正しい。違うのは「仮定」だけだ

ベテランの島田は先入先出法で、新人の谷口は移動平均法で計算していた。洛北ミートが正式に採用しているのは先入先出法だが、谷口は研修で習った移動平均法で計算してしまったのだ。

表の最終行を見てほしい。どちらの方法でも、「売上原価+月末在庫」は980,000円で同じだ。これは、10月に「売ることができた肉の原価の総額」(月初在庫200,000円+仕入780,000円)にほかならない。払出単価の決め方とは、この980,000円を、「売れた分(売上原価)」と「残った分(在庫)」にどう切り分けるかのルールなのだ。

仕入値が上がり続けている局面では、先入先出法は「古くて安い肉から売れた」と仮定するので、売上原価が小さくなり、利益が大きく出る。移動平均法は新旧の単価をならすので、その中間になる。

どちらが「真実」か? 答えは、どちらも真実だ。会計の数字は、あらかじめ定めた仮定(会計方針)のもとで計算された結果である。だから大切なのは、どの方法を選ぶかよりも、選んだ方法を毎期継続して使うことだ。

THINK ― 判断してみよう

先入先出法の「40万円の利益」は、本物の儲けか?

牛肉の仕入値は、今や1kg 1,400円。今後も上がり続ける見通しだ。先入先出法による10月の粗利は400,000円。社長は「先入先出法のほうが利益が大きいなら、ずっとこのままでいい」と満足している。あなたなら、この40万円をどう評価するか?

考え方の例を見る▼

先入先出法の利益には、「値上がり前に安く仕入れていた」ことによる見かけ上の利益が含まれている。

10月に売った650kgを、もし月末の仕入値(1,400円)で仕入れ直すとしたら、コストは910,000円かかる。売上1,170,000円との差は260,000円。帳簿上の粗利400,000円との差額140,000円は、本業の「売る力」で稼いだというより、在庫を持っていた間に相場が上がったことで生まれた利益(保有利得)だ。

これを「本当の儲け」と勘違いして、配当や賞与で全部配ってしまうと危険だ。次に同じ量の肉を仕入れるには、以前より多くの現金が必要になる。しかも、帳簿上の利益が大きくなる分、税金も多く払うことになる。インフレ局面の先入先出法は、利益を大きく見せる一方で、現金を細らせやすいのだ。

財務の立場からは、帳簿上の粗利とあわせて「最新の仕入値で計算した場合の粗利」も経営会議に報告し、販売価格の引き上げが必要かどうかを判断する材料にしたい。

06商品有高帳から売上原価と粗利を求める

試験の第2問では、商品有高帳を作成させたうえで、売上原価や売上総利益を答えさせる問題がよく出る。手順は次のとおりだ。

商品有高帳の問題の解き方

  1. 1

    払出単価の決め方を確認する

    先入先出法か、移動平均法か。移動平均法の端数処理の指示も確認する

  2. 2

    受入・払出・残高を1行ずつ記入する

    払出欄は「原価」で書く。売価は使わない(売価は売上高の計算に使う)

  3. 3

    売上原価を集計する

    払出欄の合計から、次月繰越の金額を除く(=月初在庫+当月仕入-月末在庫)

  4. 4

    売上高を計算する

    販売数量×売価。売上帳や問題文の資料から求める

  5. 5

    売上総利益を計算する

    売上高-売上原価

07仕入帳と売上帳 ― 取引の「明細」を残す補助簿

商品有高帳が「品目ごとの在庫」を記録するのに対し、仕入帳と売上帳は、仕入と売上の取引そのものの明細(取引先、支払条件、品名、数量、単価)を日付順に記録する補助簿だ。

仕入帳(洛北ミート・10月)
日付摘要内訳金額
10/8畜産会社A 掛け
牛ばら肉 300kg @1,200360,000
10/20畜産会社B 掛け
牛ばら肉 300kg @1,400420,000
豚ロース 200kg @900180,000600,000
10/22畜産会社B 掛け返品
豚ロース 10kg @9009,000
10/31総仕入高960,000
仕入戻し高9,000
純仕入高951,000

※1回の仕入れで複数の品目があるときは、品目ごとの金額を「内訳」欄に書き、合計を「金額」欄に書く。返品の行は、実際の帳簿では赤字で記入する。月末に、総仕入高から仕入戻し高を差し引いて純仕入高を求める。

売上帳(洛北ミート・10月)
日付摘要内訳金額
10/12焼肉店X 掛け
牛ばら肉 400kg @1,800720,000
10/27おかわり堂 掛け
牛ばら肉 250kg @1,800450,000
10/31総売上高1,170,000
純売上高1,170,000

※売上帳では、総売上高から売上戻り高を差し引いて純売上高を求める(この月は売上戻りがないので総売上高と同じ)。仕入帳・売上帳は売価や仕入価格で、商品有高帳は原価で記録する。この違いを混同しないこと。

商品売買に関する3つの補助簿
帳簿記録する内容単価・金額
仕入帳仕入取引の明細(取引先・条件・品名・数量)仕入価格
売上帳売上取引の明細(取引先・条件・品名・数量)売価
商品有高帳品目ごとの受入・払出・残高原価

08確認問題

問1次の資料にもとづき、(1)先入先出法と(2)移動平均法のそれぞれについて、11月の売上原価、月末在庫、売上総利益を求めなさい。

11/1 前月繰越 10個 @500円 11/5 仕入 20個 @530円 11/10 売上 25個(売価@800円) 11/20 仕入 15個 @560円 11/25 売上 12個(売価@800円)

解答・解説を見る▼

(1) 先入先出法

11/10の払出:10個×500円+15個×530円=12,950円(残:5個@530円)

11/25の払出:5個×530円+7個×560円=6,570円(残:8個@560円)

売上原価=12,950+6,570=19,520円、月末在庫=8個×560円=4,480円

(2) 移動平均法

11/5の平均単価:(5,000+10,600)÷30個=520円 → 11/10の払出:25個×520円=13,000円(残:5個・2,600円)

11/20の平均単価:(2,600+8,400)÷20個=550円 → 11/25の払出:12個×550円=6,600円(残:8個・4,400円)

売上原価=13,000+6,600=19,600円、月末在庫=4,400円

売上総利益

売上高=37個×800円=29,600円

先入先出法:29,600-19,520=10,080円、移動平均法:29,600-19,600=10,000円

検算:どちらも「売上原価+月末在庫」=24,000円(=5,000+10,600+8,400)で一致する。

問2仕入単価が継続的に上昇しているとき、先入先出法と移動平均法では、どちらの売上総利益が大きくなるか。理由とともに答えなさい。

解答・解説を見る▼

先入先出法のほうが大きくなる。先入先出法は、古くて安い単価の商品から払い出したと仮定するため、売上原価が小さく計算されるからだ。その分、期末の在庫は新しい(高い)単価で評価される。

問3次の資料から、純仕入高を求めなさい。

総仕入高 1,250,000円、仕入戻し高 34,000円、仕入れの際に当社が負担した引取運賃(総仕入高に含まれている)12,000円

解答・解説を見る▼

純仕入高=総仕入高-仕入戻し高=1,250,000-34,000=1,216,000円

引取運賃は仕入原価に含める付随費用なので、差し引かない。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓商品有高帳は、品目ごとの受入・払出・残高を、数量・単価・金額で記録する補助簿。すべて「原価」で記入する
  • ✓先入先出法:先に仕入れたものから払い出すと仮定。単価の違う残高は行を分ける
  • ✓移動平均法:仕入れのたびに平均単価を計算し直し、その単価で払い出す
  • ✓方法が違っても「売上原価+期末在庫」の合計は同じ。違うのは、その切り分け方だけ
  • ✓物価上昇局面では、先入先出法のほうが利益が大きく出る。ただし、その一部は相場上昇による見かけの利益
  • ✓一度選んだ方法は継続して使う(継続性の原則)
  • ✓仕入帳・売上帳は取引の明細を記録する補助簿。純仕入高=総仕入高-仕入戻し高、純売上高=総売上高-売上戻り高

第4部 信用という名の時限爆弾

第7章売掛金・買掛金・クレジット売掛金・受取商品券

「売れた」のに、なぜ口座にお金がないのか?

売上が50%伸び、利益も過去最高。なのに預金は半分に減った。掛け売り、カード決済、商品券――「売ってから入金されるまでの時間」に潜む罠と、それを記録する勘定科目を学ぶ。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸売掛金・買掛金の仕訳と、売掛金元帳・買掛金元帳の役割を理解する
  • ▸クレジット売掛金(手数料の処理を含む)の仕訳ができる
  • ▸受取商品券の仕訳ができる
  • ▸「成長すると現金が減る」運転資金の仕組みを説明できる
この章の目次▼
  1. 01掛取引 ― 「信用」で売り、「信用」で買う
  2. 02売掛金元帳と買掛金元帳 ― 取引先ごとの「貸し借り台帳」
  3. 03クレジット売掛金 ― カード払いは「カード会社への売掛金」
  4. 04受取商品券 ― 他社が発行した商品券は「代金を受け取る権利」
  5. 05答え合わせ ― お金は「売掛金」に姿を変えていた
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

売れば売るほど、お金が消えていく

洛北ミートにとって、この1年は夢のようだった。

新規出店ラッシュの焼肉店や居酒屋チェーンとの取引が次々に決まり、月商は1億円から1億5,000万円へ。わずか1年で50%の成長だ。利益率も落ちていない。今期の税引後利益は3,000万円と、創業以来の最高益になる見込みだった。

ところが、決算前に預金通帳を開いた社長は、言葉を失った。

1年前に6,000万円あった預金が、2,900万円まで減っていた。設備投資も、借入金の返済も、ほとんどしていない。誰かが使い込んだ形跡もない。

利益が3,000万円出ているのに、お金が3,100万円減っている。売上が伸びるほど、お金が消えていく。いったい、お金はどこへ行ったのか?

01掛取引 ― 「信用」で売り、「信用」で買う

問いを解く鍵は、洛北ミートの取引のほぼすべてが掛けで行われていることにある。

掛取引とは、商品を先に引き渡し、代金は後日まとめて受け払いする取引だ。「月末締め・翌月末払い」なら、10月中に納品した分の代金は、11月末にまとめて支払われる。相手を信用して、代金の受け取りを待つのである。

掛取引で使う2つの勘定科目
勘定科目要素意味
売掛金資産商品を掛けで売ったときの、後で代金を受け取る権利
買掛金負債商品を掛けで仕入れたときの、後で代金を支払う義務

例題洛北ミートの掛取引

(1) 焼肉店「炎(ほむら)」に牛ばら肉720,000円を掛けで販売した。

(2) 畜産会社Bから牛ばら肉420,000円を掛けで仕入れた。

(3) 焼肉店「炎」から、前月分の売掛金980,000円が普通預金に振り込まれた。

(4) 畜産会社Bに、買掛金600,000円を普通預金から振り込んで支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 掛け売上:売掛金(資産)の増加
借方科目金額貸方科目金額
売掛金720,000売上720,000
仕訳(2) 掛け仕入:買掛金(負債)の増加
借方科目金額貸方科目金額
仕入420,000買掛金420,000
仕訳(3) 売掛金の回収:売掛金の減少
借方科目金額貸方科目金額
普通預金980,000売掛金980,000
仕訳(4) 買掛金の支払い:買掛金の減少
借方科目金額貸方科目金額
買掛金600,000普通預金600,000

02売掛金元帳と買掛金元帳 ― 取引先ごとの「貸し借り台帳」

洛北ミートの得意先は約150店。総勘定元帳の売掛金勘定を見れば、売掛金の合計は分かる。だが、「どの店に、いくら貸しているのか」は分からない。これでは、支払いが遅れている店を見つけることも、請求書を作ることもできない。

そこで、取引先ごとに口座を設けて売掛金・買掛金の増減を記録する補助簿を作る。それが売掛金元帳(得意先元帳)と買掛金元帳(仕入先元帳)だ。

売掛金元帳(得意先元帳) 焼肉店「炎」
日付摘要借方貸方借/貸残高
10/1前月繰越980,000借980,000
10/12売上720,000借1,700,000
10/31普通預金で回収980,000借720,000
10/31次月繰越720,000
1,700,0001,700,000

表は横にスクロールできます →

※売掛金・買掛金の代わりに、取引先の名前(例:「焼肉店炎」)をそのまま勘定科目として使う方法を人名勘定という。日本商工会議所の勘定科目表では「〇〇商店」が売掛金・買掛金の許容科目とされているが、ふつうは売掛金・買掛金を使えばよい。

10月末の売掛金の内訳(抜粋)
得意先10月末残高回収条件
焼肉店「炎」720,000月末締め・翌月末払い
おかわり堂18,500,000月末締め・翌月末払い
居酒屋チェーンA12,400,000月末締め・翌々月末払い
その他 約150店193,380,000店ごとに異なる
合計(=売掛金勘定の残高)225,000,000月商の1.5か月分

03クレジット売掛金 ― カード払いは「カード会社への売掛金」

次は、IRONWORKS 24の話だ。会員の多くは、月会費をクレジットカードで支払う。

カードで支払われた代金は、すぐには入金されない。カード会社がいったん立て替え、決済手数料を差し引いて、後日ジムに入金する。つまり、ジムにとっての債権の相手は、会員ではなくカード会社だ。

この債権は、通常の売掛金と区別してクレジット売掛金(資産)で処理する。カード会社に支払う手数料は支払手数料(費用)とし、販売した時点で計上する。

例題IRONWORKS 24のカード決済

(1) 6月分の月会費のうち、クレジットカード決済分は2,000,000円だった。カード会社への決済手数料は売上の3%である。

(2) 7月末、カード会社から、手数料を差し引いた金額が普通預金に入金された。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 販売時:手数料を差し引いた額をクレジット売掛金とする
借方科目金額貸方科目金額
クレジット売掛金1,940,000売上2,000,000
支払手数料60,000
仕訳(2) 入金時
借方科目金額貸方科目金額
普通預金1,940,000クレジット売掛金1,940,000

売上は手数料を差し引く前の総額(2,000,000円)で計上する。手数料60,000円(2,000,000円×3%)は費用。クレジット売掛金は、実際に入金される1,940,000円になる。

04受取商品券 ― 他社が発行した商品券は「代金を受け取る権利」

おかわり堂では、全国共通のお食事券や、自治体と商店街が発行する地域振興券も使える。客がこれらの商品券で支払ったとき、店はまだ現金を受け取っていない。後日、商品券の発行元に商品券を送って精算し、代金を受け取る。

この、他社が発行した商品券を受け取ったときの「後で代金を受け取る権利」は、受取商品券(資産)で処理する。

例題おかわり堂の商品券払い

(1) 学生グループの宴会代金35,000円のうち、30,000円は地域振興券で、残りは現金で受け取った。

(2) 月末に、受け取った地域振興券30,000円を発行元に送付して精算を依頼し、同額が普通預金に入金された。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 受け取った商品券は「受取商品券」
借方科目金額貸方科目金額
受取商品券30,000売上35,000
現金5,000
仕訳(2) 精算されたとき
借方科目金額貸方科目金額
普通預金30,000受取商品券30,000

※自社が発行した商品券を販売したときは、将来その商品券で商品を引き渡す義務が生じる。これは負債となるが、2級以降の論点である。3級で扱うのは、他社が発行した商品券を受け取る側の処理だ。

05答え合わせ ― お金は「売掛金」に姿を変えていた

ANSWER ― 答え合わせ

成長は、現金を食べる

洛北ミートのお金は、消えたのではない。売掛金と在庫に姿を変えていたのだ。

洛北ミートは、売った代金を平均45日後に受け取る。一方、仕入れた肉の代金は、畜産会社に平均20日後に支払わなければならない。さらに、肉を仕入れてから売るまで、平均10日は在庫として冷蔵庫に眠っている。

つまり洛北ミートは、肉の代金を払ってから回収するまでの間、ずっと自分のお金で立て替え続けている。そして売上が増えると、この「立て替え」の金額も比例して膨らむ。

1年間で膨らんだ「立て替え」(運転資金)
項目1年前現在増減
月商1億円1億5,000万円+5,000万円
売掛金(売上の約45日分)1億5,000万円2億2,500万円+7,500万円
在庫(仕入の約10日分)2,700万円4,000万円+1,300万円
買掛金(仕入の約20日分)5,300万円8,000万円+2,700万円
運転資金(売掛金+在庫-買掛金)1億2,400万円1億8,500万円+6,100万円

売上の伸びに合わせて、立て替えなければならないお金(運転資金)が6,100万円も増えた。税引後利益3,000万円をすべてつぎ込んでも、まだ3,100万円足りない。その不足分だけ、預金が減ったのである。

(6,000万円+3,000万円-6,100万円=2,900万円)

掛けで売るということは、取引先に無利息でお金を貸しているのと同じだ。売上が伸びるほど、貸しているお金も膨らむ。これが「売れたのに、お金がない」の正体だ。

THINK ― 判断してみよう

洛北ミートの資金繰りを立て直せ

来期も、月商は2億円まで伸びる見通しだ。このままでは、運転資金はさらに6,000万円以上増え、預金は底をつく。あなたなら、どんな手を打つか?

考え方の例を見る▼

運転資金を減らす(CCCを縮める)手と、運転資金を調達する手の両面から考える。

CCCを縮める

  • 回収を早める:請求書の発行を月末締めの翌営業日に早め、口座振替での自動回収に切り替える。新規の得意先には、回収サイトの短い条件を提示する。
  • 滞留の監視:売掛金元帳を毎週チェックし、支払期日を過ぎた得意先には即座に連絡する。1か月の遅れを放置しないことが、貸倒れの防止にもなる(第11章)。
  • 在庫の圧縮:発注を需要予測に合わせて細かくし、在庫日数を10日から7日に縮める。
  • 支払条件の交渉:取引量の増加を交渉材料に、畜産会社への支払いサイトを20日から30日に延ばしてもらえないか相談する。

運転資金を調達する

  • 銀行の運転資金融資:成長にともなう運転資金の増加は、銀行にとって説明しやすい融資の理由だ。売掛金元帳と得意先の信用状況を示し、短期の借入れや当座借越の枠を確保する。
  • 売掛金の早期資金化:売掛債権を期日前に資金化するサービス(ファクタリングなど)もあるが、手数料がかかる。2級で学ぶ「債権の譲渡」の世界だ。

最後に、社長に伝えたいのはこれだ。「売上の成長率に、資金の成長が追いつかない成長は、会社を殺します」。資金計画のない拡大は、序章のまんぷく食堂と同じ道をたどる。

06確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 商品250,000円をクレジットカード払いの条件で販売した。カード会社への手数料は販売代金の4%であり、販売時に計上する。

(2) (1)の代金が、手数料を差し引かれて普通預金に入金された。

(3) 商品12,000円を販売し、代金のうち10,000円は他社が発行した商品券で、残額は現金で受け取った。

(4) 得意先から売掛金350,000円が普通預金に振り込まれた。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
クレジット売掛金240,000売上250,000
支払手数料10,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金240,000クレジット売掛金240,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
受取商品券10,000売上12,000
現金2,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金350,000売掛金350,000

問2次の資料から、得意先「居酒屋A」に対する11月末の売掛金残高を求めなさい。

11/1 前月繰越 400,000円 11/8 掛け売上 250,000円 11/10 返品(11/8の売上分)20,000円 11/30 普通預金への入金(前月分の回収)400,000円

解答・解説を見る▼

400,000+250,000-20,000-400,000=230,000円

返品は売上の取り消しなので、売掛金を減らす(売上/売掛金)。売掛金元帳では貸方に記入する。

問3売上債権の回収日数60日、在庫の保有日数15日、仕入債務の支払日数30日の会社のキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は何日か。また、この会社の売上が急増したとき、資金繰りはどうなりやすいか。

解答・解説を見る▼

CCC=60+15-30=45日。

仕入代金を払ってから売上代金を回収するまで45日分を立て替えているため、売上が急増すると、売掛金と在庫が膨らみ、必要な運転資金が増えて資金繰りが苦しくなりやすい(利益が出ていても現金が不足する)。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓商品売買の後払いは、売る側が売掛金(資産)、買う側が買掛金(負債)
  • ✓売掛金元帳(得意先元帳)・買掛金元帳(仕入先元帳)は、取引先ごとの補助簿。合計は総勘定元帳の勘定残高と一致する
  • ✓カード払いはクレジット売掛金。販売時に手数料を支払手数料として計上し、売上は総額で計上する
  • ✓他社発行の商品券を受け取ったら受取商品券。精算時に入金処理する
  • ✓掛け売りは「無利息で貸している」のと同じ。売上が伸びると運転資金が膨らみ、利益が出ても現金が減る
  • ✓CCC=回収日数+在庫日数-支払日数。CCCが長い会社ほど、成長に多くの資金が必要

第4部 信用という名の時限爆弾

第8章約束手形・電子記録債権・手形貸付金

紙切れ1枚が、黒字の会社を「即死」させる。

期日に必ず支払うと約束した証書、約束手形。その強力さゆえに、たった1枚の不渡りが連鎖倒産を引き起こしてきた。紙の手形から「でんさい」へ。日本の企業間決済の大転換期に、債権と債務の記録を学ぶ。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸約束手形の振出し・受取り・決済の仕訳ができる
  • ▸受取手形記入帳・支払手形記入帳を読み取れる
  • ▸電子記録債権・電子記録債務の発生と決済の仕訳ができる
  • ▸手形貸付金・手形借入金を理解する
  • ▸手形が「連鎖倒産」を引き起こす仕組みと、2026〜2027年の制度変更を知る
この章の目次▼
  1. 01約束手形 ― 「期日に必ず払います」という証書
  2. 02受取手形記入帳と支払手形記入帳
  3. 03答え合わせ ― 手形は「信用の連鎖」でできている
  4. 04電子記録債権・電子記録債務 ― 紙を使わない「手形」
  5. 05手形貸付金・手形借入金 ― お金の貸し借りに使う手形
  6. 06紙の手形の「終わり」と、試験への影響
  7. 07確認問題

QUESTION ― この章の問い

黒字の老舗精肉店は、なぜ1枚の紙で倒れたのか

京都・錦市場のほど近くに、創業70年の精肉店があった。料亭や割烹に高級和牛を卸し、決算は毎年黒字。借金もほとんどない優良企業だった。

ある年の秋、その店が倒産した。

引き金は、大口の得意先だった料亭グループの倒産だ。精肉店は、料亭グループから受け取っていた約束手形、合計2,800万円分を手元に持っていた。期日になれば、確実に現金化できるはずの手形だった。

だが、料亭グループの倒産で、それらの手形は1枚残らず不渡りになった。精肉店は、その手形の入金をあてにして、自らも畜産業者に手形を振り出していた。

入るはずの2,800万円が入らない。支払うはずの手形の期日は迫る。銀行は追加の融資を断った。そして——。

黒字で、借金もなかった老舗を倒したのは、たった数枚の「紙切れ」だった。なぜ、手形はこれほど恐ろしいのか?

01約束手形 ― 「期日に必ず払います」という証書

約束手形(やくそくてがた)とは、振り出した人(振出人)が、受け取った人(名あて人=受取人)に対して、決められた期日に、決められた金額を支払うことを約束する証書だ。

掛取引では、支払いの約束は口約束や請求書にすぎない。それに対して手形は、法律(手形法)にもとづく強力な証書で、期日に支払わなければ「不渡り」という重い制裁が待っている。だからこそ、受け取る側は安心して代金の受け取りを待つことができた。

約束手形の流れ

  1. 1

    おかわり堂が手形を振り出す

    洛北ミートから牛肉を仕入れ、代金として「3か月後の期日に支払う」約束手形を渡す

  2. 2

    洛北ミートが手形を受け取る

    期日まで手形を保管する。期日前に銀行で取立てを依頼する

  3. 3

    期日に決済される

    おかわり堂の当座預金から引き落とされ、洛北ミートの当座預金に入金される

手形の仕訳 ― 受け取ったら「受取手形」、振り出したら「支払手形」

商品売買の代金として手形を受け取ったら受取手形(資産)、振り出したら支払手形(負債)で処理する。

例題おかわり堂と洛北ミートの手形取引

(1) おかわり堂は、洛北ミートから牛肉800,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出して支払った。

(2) 3か月後の期日に、(1)の手形が決済され、おかわり堂の当座預金から引き落とされた(洛北ミートの当座預金に入金された)。

それぞれ、おかわり堂と洛北ミートの仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) おかわり堂(手形を振り出した=支払手形の増加)
借方科目金額貸方科目金額
仕入800,000支払手形800,000
仕訳(1) 洛北ミート(手形を受け取った=受取手形の増加)
借方科目金額貸方科目金額
受取手形800,000売上800,000
仕訳(2) おかわり堂(手形代金を支払った=支払手形の減少)
借方科目金額貸方科目金額
支払手形800,000当座預金800,000
仕訳(2) 洛北ミート(手形代金を受け取った=受取手形の減少)
借方科目金額貸方科目金額
当座預金800,000受取手形800,000
仕訳洛北ミートは、居酒屋チェーンAに対する売掛金1,200,000円について、同社振出の約束手形を受け取った
借方科目金額貸方科目金額
受取手形1,200,000売掛金1,200,000
仕訳居酒屋チェーンA側の仕訳(買掛金の支払いのため約束手形を振り出した)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金1,200,000支払手形1,200,000

02受取手形記入帳と支払手形記入帳

手形は、1枚ごとに振出人、期日、支払場所(銀行)、金額が異なる。そこで、手形の明細を1枚ずつ記録する補助簿として、受取手形記入帳と支払手形記入帳を設ける。

受取手形記入帳(洛北ミート)
日付手形種類手形番号摘要支払人振出人振出日満期日支払場所手形金額てん末
6/10約手18売上おかわり堂おかわり堂6/109/10京都中央銀行800,0009/10 入金
7/31約手25売掛金居酒屋A居酒屋A7/3110/31洛北信用金庫1,200,000

表は横にスクロールできます →

※「摘要」欄には、手形を受け取ったときの仕訳の相手勘定(売上・売掛金など)が書かれる。「てん末」欄には、その手形がどうなったか(入金・不渡りなど)を記入する。第2問では、この記入帳から仕訳を読み取る問題がよく出る。たとえば上の1行目からは「受取手形 800,000 / 売上 800,000」と「当座預金 800,000 / 受取手形 800,000」の2つの仕訳が読み取れる。

03答え合わせ ― 手形は「信用の連鎖」でできている

ANSWER ― 答え合わせ

不渡りは、ドミノのように倒れていく

老舗精肉店を倒したのは、手形の強制力そのものだった。

精肉店は、料亭グループから受け取った手形の入金を前提に、自らも畜産業者へ手形を振り出していた。手形を受け取った側は、さらにその入金をあてにして、別の支払いの計画を立てる。手形は、多くの会社の資金繰りを数珠つなぎにしていたのである。

料亭グループが倒れると、受取手形2,800万円は一瞬で回収不能になった。それでも、精肉店が振り出した手形は、期日に必ず決済しなければならない。払えなければ不渡りだ。銀行は「回収不能の手形を抱えた会社」に追加融資をしなかった。こうして、黒字の精肉店も不渡りを出し、連鎖倒産に至った。

手形は、期日に支払われる限り、強力で便利な道具だ。しかしその強制力は、裏を返せば「1社の倒産が、手形でつながった会社を次々と道連れにする」仕組みでもあった。

04電子記録債権・電子記録債務 ― 紙を使わない「手形」

紙の手形には、作成・保管・郵送の手間や、紛失・盗難のリスク、収入印紙の負担があった。そこで生まれたのが、電子記録債権だ。

電子記録債権は、銀行などが参加する電子債権記録機関のシステムに「発生記録」を登録することで生まれる、電子的な債権だ。代表的なものに、全国銀行協会が設立した「でんさいネット」がある。紙の手形と同じように期日に自動決済され、支払われなければ不渡りと同様の制裁(取引停止処分)がある。

紙の手形と電子記録債権の比較
項目約束手形電子記録債権
形紙の証書電子債権記録機関の記録
発生のさせ方手形を振り出して渡す取引銀行を通じて発生記録を請求する
収入印紙必要(金額による)不要
紛失・盗難のリスクあるない
分割できない必要な金額だけ分割して譲渡・割引できる
債権者の勘定受取手形電子記録債権
債務者の勘定支払手形電子記録債務

例題洛北ミートと電子記録債権

(1) おかわり堂は、洛北ミートに対する買掛金500,000円の支払いのため、取引銀行を通じて電子記録債務の発生記録を行った。洛北ミートは、取引銀行から電子記録債権の発生記録の通知を受けた。

(2) 支払期日が到来し、おかわり堂の当座預金から洛北ミートの当座預金に500,000円が支払われた。

それぞれの仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) おかわり堂(買掛金が電子記録債務に変わる)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金500,000電子記録債務500,000
仕訳(1) 洛北ミート(売掛金が電子記録債権に変わる)
借方科目金額貸方科目金額
電子記録債権500,000売掛金500,000
仕訳(2) おかわり堂(期日に決済)
借方科目金額貸方科目金額
電子記録債務500,000当座預金500,000
仕訳(2) 洛北ミート(期日に入金)
借方科目金額貸方科目金額
当座預金500,000電子記録債権500,000

05手形貸付金・手形借入金 ― お金の貸し借りに使う手形

手形は、商品売買の代金の支払いだけでなく、お金の貸し借りにも使われる。借りる側が、貸す側に対して約束手形を振り出して渡すのだ。こうして手形を使ってお金を貸し借りしたときは、商品売買の手形と区別して、手形貸付金(資産)・手形借入金(負債)で処理する。

銀行から短期の運転資金を借りるときに、手形を差し入れる方法(手形貸付)がよく使われてきた。

例題洛北ミートの手形借入れ

(1) 洛北ミートは、京都中央銀行から運転資金3,000,000円を借り入れ、同額の約束手形を振り出して渡した。利息45,000円を差し引かれた残額が当座預金に入金された。

(2) 期日に、借入金を当座預金から返済した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 手形を振り出してお金を借りた(利息は先に差し引かれた)
借方科目金額貸方科目金額
当座預金2,955,000手形借入金3,000,000
支払利息45,000
仕訳(2) 返済
借方科目金額貸方科目金額
手形借入金3,000,000当座預金3,000,000
仕訳貸す側(手形を受け取ってお金を貸した)の例:取引先に現金500,000円を貸し付け、同額の約束手形を受け取った
借方科目金額貸方科目金額
手形貸付金500,000現金500,000

06紙の手形の「終わり」と、試験への影響

日本の企業間決済は、いま大きな転換点にある。

手形・小切手をめぐる主な動き

  1. 2013年

    でんさいネットが業務を開始

    電子記録債権の普及が始まる

  2. 2022年11月

    全国の手形交換所が「電子交換所」に移行

    紙の手形・小切手の交換を電子化

  3. 2026年1月

    改正下請法(取適法)が施行

    対象取引での手形払いが禁止される

  4. 2027年3月末

    紙の手形・小切手の利用廃止(予定)

    金融界が電子的な決済手段への全面移行をめざす

  5. 2027年4月

    簿記検定の新しい出題区分表(暫定版)を適用

    3級の「手形」の区分は削除され、電子記録債権・債務は売掛金・買掛金の区分に整理される見込み

※2026年度(2027年3月まで)の試験では、約束手形・受取手形記入帳・支払手形記入帳・手形貸付金・手形借入金は引き続き出題範囲に含まれる。2027年4月以降に受験する人は、日本商工会議所が公表する最新の出題区分表を必ず確認しよう。電子記録債権・電子記録債務は、2027年度以降も3級の範囲に残る見込みだ。

THINK ― 判断してみよう

手形をやめて、得意先に「でんさい」を勧めるべきか

洛北ミートは、一部の大口得意先から、いまだに紙の手形で代金を受け取っている。経理部からは「手形は保管や取立ての手間がかかるし、紛失も怖い。でんさいに切り替えてもらいましょう」という声が上がっている。一方で営業部は「支払方法の変更を頼んだら、取引に影響するかもしれない」と渋っている。あなたなら、どう判断するか?

考え方の例を見る▼

結論は「切り替えを進める」だ。ただし、その本当の理由は事務の手間だけではない。

  • 制度の流れ:紙の手形・小切手は2027年3月末で利用廃止が予定されている。いずれ切り替えは避けられない。得意先にとっても印紙代や事務負担が減るメリットがあり、「お互いのため」として提案できる。
  • 資金繰りの柔軟性:電子記録債権は、必要な金額だけを分割して、期日前に資金化(割引)したり、仕入先への支払いに充てたり(譲渡)できる。運転資金の調達手段が増える。
  • より根本的な問い:そもそも、なぜ回収まで何か月も待つ条件を受け入れているのか。第7章で見たとおり、回収サイトの長さは運転資金を膨らませる。切り替えの交渉を機に、回収サイトそのものの短縮も提案したい。取適法の施行で、長い手形サイトを見直す機運は高まっている。

営業部の懸念に対しては、「支払方法の変更は、業界全体の流れであり、得意先の負担も軽くなる」という事実を、経理部と一緒に説明しに行くのがよいだろう。

07確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 商品600,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出して支払った。

(2) 売掛金450,000円の回収として、得意先振出の約束手形を受け取った。

(3) (2)の手形が期日に決済され、当座預金に入金された。

(4) 買掛金300,000円の支払いのため、取引銀行を通じて電子記録債務の発生記録を行った。

(5) 取引先に現金1,000,000円を貸し付け、同額の約束手形を受け取った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
仕入600,000支払手形600,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
受取手形450,000売掛金450,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
当座預金450,000受取手形450,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金300,000電子記録債務300,000
仕訳(5) お金の貸付けなので「手形貸付金」
借方科目金額貸方科目金額
手形貸付金1,000,000現金1,000,000

問2次の支払手形記入帳の記入から、(1)6月15日と(2)9月15日の仕訳をしなさい。

支払手形記入帳:日付6/15、手形種類 約手、手形番号12、摘要「買掛金」、受取人「洛北ミート」、振出日6/15、満期日9/15、手形金額700,000円、てん末「9/15 当座預金から支払い」

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 6/15:買掛金の支払いのために約束手形を振り出した
借方科目金額貸方科目金額
買掛金700,000支払手形700,000
仕訳(2) 9/15:満期日に当座預金から決済された
借方科目金額貸方科目金額
支払手形700,000当座預金700,000

問3銀行から2,000,000円を借り入れ、同額の約束手形を振り出した。利息30,000円が差し引かれ、残額が普通預金に入金された。仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
普通預金1,970,000手形借入金2,000,000
支払利息30,000

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓約束手形は、期日に支払うことを約束する強力な証書。受け取ったら受取手形(資産)、振り出したら支払手形(負債)
  • ✓手形の不渡りは、取引先を道連れにする「連鎖倒産」の引き金になってきた
  • ✓受取手形記入帳・支払手形記入帳は手形の明細を記録する補助簿。「摘要」と「てん末」から仕訳を読み取る
  • ✓電子記録債権・債務は、紙の手形に代わる電子的な債権・債務。仕訳の形は手形と同じ
  • ✓お金の貸し借りに使う手形は、手形貸付金・手形借入金で処理する
  • ✓2026年1月の取適法施行で下請取引の手形払いが禁止され、紙の手形・小切手は2027年3月末で利用廃止の予定。2027年度の試験から「手形」の区分は削除される見込み

第4部 信用という名の時限爆弾

第9章その他の債権・債務

5,000万円のバスの代金は、なぜ「買掛金」ではないのか?

勘定科目を1つ間違えただけで、銀行は「支払いを滞らせている会社」と誤解する。貸付金・借入金、未収入金・未払金、前払金・前受金、仮払金・仮受金、差入保証金――本業以外の債権・債務を正しく使い分けよう。

読了目安 35分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸売掛金・買掛金と、未収入金・未払金を正しく使い分けられる
  • ▸貸付金・借入金と利息(月割計算)の仕訳ができる
  • ▸前払金・前受金(手付金・内金)の仕訳ができ、前受金のリスクを説明できる
  • ▸仮払金・仮受金(ICカードのチャージを含む)の仕訳ができる
  • ▸差入保証金(敷金)の仕訳ができる
この章の目次▼
  1. 01「本業の商品」か、「それ以外」か ― 未収入金と未払金
  2. 02貸付金と借入金 ― 利息は「月割」で計算する
  3. 03前払金と前受金 ― 「手付金」と「内金」
  4. 04仮払金と仮受金 ― 「とりあえず」記録しておく勘定
  5. 05差入保証金 ― 返ってくるはずのお金
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

1日も遅れていない支払いを、なぜ銀行は疑ったのか

3月下旬、ナイトオウル交通は、新型の3列独立シート車両を2台、計1億円で購入した。代金は、納車の翌月末に一括で支払う契約だ。

決算を終えて1か月。メインバンクの審査部から、硬い声で電話が入った。

「御社の決算書を拝見しました。買掛金が1億2,000万円もありますね。月々の仕入れや外注の規模からすると、何か月分にもなる。仕入先への支払いが、相当滞っているのではありませんか? 追加融資の判断は、いったん保留させてください」

社長は耳を疑った。ナイトオウル交通は、どの取引先にも1日たりとも支払いを遅らせたことはない。バスの代金も、約束どおり4月末にきちんと支払った。

なぜ銀行は、存在しない「支払遅延」を疑ったのか?

01「本業の商品」か、「それ以外」か ― 未収入金と未払金

第7章で、商品売買の後払いには売掛金・買掛金を使うと学んだ。では、商品以外のものを後払いで売買したら、どうなるか。

ナイトオウル交通にとって、バスは「売るための商品」ではない。運行に使い続けるための設備だ。このように、本業の商品以外のものを後払いで買ったときの支払義務は未払金(負債)、後払いで売ったときの代金を受け取る権利は未収入金(資産)で処理する。

後払い・後受けの勘定科目の使い分け
取引の対象後で受け取る権利(資産)後で支払う義務(負債)
本業の商品の売買売掛金買掛金
商品以外のもの(固定資産・消耗品など)の売買未収入金未払金

例題ナイトオウル交通の未払金・未収入金

(1) 3月25日、新型バス2台を100,000,000円で購入し、納車を受けた。代金は4月末に支払う。

(2) 4月30日、(1)の代金を普通預金から支払った。

(3) 本社で不要になった応接セット(備品、帳簿価額80,000円)を、80,000円で中古家具店に売却し、代金は翌月に受け取ることにした。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) バスは商品ではない → 未払金
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具100,000,000未払金100,000,000
仕訳(2) 未払金の支払い
借方科目金額貸方科目金額
未払金100,000,000普通預金100,000,000
仕訳(3) 備品も商品ではない → 未収入金
借方科目金額貸方科目金額
未収入金80,000備品80,000

(3)は、帳簿価額と同額で売却したので売却による損益は生じない。固定資産の売却で損益が出るケースは第12章で学ぶ。

ANSWER ― 答え合わせ

新人の「1行のミス」が、融資を止めた

決算書を調べ直すと、原因はすぐに見つかった。入社1年目の経理担当者が、バス2台の購入代金1億円を買掛金で処理していたのだ。本来の買掛金は2,000万円しかなかった。

銀行は、決算書の買掛金を「本業の仕入れや外注に対する未払い」として分析する。仕入れの規模に比べて買掛金が異常に大きければ、「仕入先への支払いが滞っている=資金繰りが苦しい」というシグナルと受け取るのは当然だ。

バスの代金は未払金だった。正しく処理されていれば、銀行は「設備投資の代金が期末時点で未払いになっているだけ」と一目で理解できたはずだ。

勘定科目は、単なるラベルではない。決算書を読む人に「この債務は何のための債務か」を伝える情報なのだ。訂正した決算書を持って銀行に説明に行き、融資は無事に実行された。

02貸付金と借入金 ― 利息は「月割」で計算する

お金を貸したときの、返してもらう権利は貸付金(資産)。お金を借りたときの、返す義務は借入金(負債)だ。利息は、受け取れば受取利息(収益)、支払えば支払利息(費用)になる。

FORMULA ― 公式

利息の計算(月割)

利息 = 元金 × 年利率 × 貸借期間の月数 ÷ 12

例題ナイトオウル交通の貸付金と借入金

(1) 10月1日、グループの車両整備会社に、2,000,000円を期間6か月・年利率3%で貸し付け、普通預金から振り込んだ。

(2) 翌年3月31日、(1)の貸付金が、利息とともに普通預金に返済された。

(3) 銀行から10,000,000円を期間1年・年利率2.4%で借り入れ、普通預金に入金された。

(4) (3)の借入金を、1年後に利息とともに普通預金から返済した。

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仕訳(1) 貸付け
借方科目金額貸方科目金額
貸付金2,000,000普通預金2,000,000
仕訳(2) 返済を受けた:利息は 2,000,000×3%×6/12=30,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金2,030,000貸付金2,000,000
受取利息30,000
仕訳(3) 借入れ
借方科目金額貸方科目金額
普通預金10,000,000借入金10,000,000
仕訳(4) 返済:利息は 10,000,000×2.4%×12/12=240,000円
借方科目金額貸方科目金額
借入金10,000,000普通預金10,240,000
支払利息240,000

※日数で利息を計算するよう指示がある場合は「元金×年利率×日数÷365」とする。

相手が役員・従業員なら、専用の勘定を使う

お金の貸し借りの相手が、会社の役員(取締役など)や従業員の場合は、取引先や銀行との貸し借りと区別して、次の勘定を使う。決算書の読み手にとって、「会社のお金が役員個人に流れていないか」「役員が会社の資金繰りを支えているか」は重要な情報だからだ。

役員・従業員との貸し借り
相手貸したとき(資産)借りたとき(負債)
役員(取締役など)役員貸付金役員借入金
従業員従業員貸付金-

例題おかわり堂の役員・従業員との貸し借り

(1) 店長候補の従業員に、引っ越し資金として300,000円を貸し付け、普通預金から振り込んだ。

(2) 資金繰りが苦しかった創業期、社長個人から運転資金5,000,000円を借り入れ、普通預金に入金された。

(3) 取締役の1人に、1,000,000円を貸し付け、現金で渡した。

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仕訳(1) 従業員への貸付け
借方科目金額貸方科目金額
従業員貸付金300,000普通預金300,000
仕訳(2) 役員(社長)からの借入れ
借方科目金額貸方科目金額
普通預金5,000,000役員借入金5,000,000
仕訳(3) 役員への貸付け
借方科目金額貸方科目金額
役員貸付金1,000,000現金1,000,000

中小企業では、社長が個人のお金を会社に貸して資金繰りを支えることがよくある。それが役員借入金だ。逆に、会社のお金を役員に貸している役員貸付金が大きい会社は、銀行から「会社の資金が私的に使われていないか」と厳しく見られる。

03前払金と前受金 ― 「手付金」と「内金」

商品を注文するときに、代金の一部を先に払うことがある。これを手付金や内金という。先に支払ったお金は、後で商品を受け取る権利として前払金(資産)、先に受け取ったお金は、後で商品を引き渡す義務として前受金(負債)で処理する。

例題おかわり堂の新米の契約

(1) おかわり堂は、京都・丹波の農家と、新米10トン(代金3,600,000円)の購入契約を結び、手付金500,000円を普通預金から支払った。

(2) 秋に新米10トンが納品された。代金のうち手付金を差し引いた残額は、掛けとした。

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仕訳(1) 手付金の支払い:前払金(資産)
借方科目金額貸方科目金額
前払金500,000普通預金500,000
仕訳(2) 納品時:前払金を充当し、残額は買掛金
借方科目金額貸方科目金額
仕入3,600,000前払金500,000
買掛金3,100,000

契約を結んだだけでは仕訳しない(第2章)。だが、手付金を払えば「お金が出ていった」という事実があるので、仕訳が必要になる。

夜行バスの乗車券は「前受金」

前受金を最もダイナミックに使うビジネスの1つが、ナイトオウル交通だ。乗車券は、乗車日の1か月前からWebで販売され、乗客は予約時に運賃を支払う。だが、その時点では、まだバスは走っていない。

運賃を受け取っても、輸送というサービスを提供するまでは売上にならない。受け取った運賃は、「乗客を目的地まで運ぶ義務」を表す前受金(負債)として記録する。

例題京都行き「OWL LINER 21号」の運賃

(1) 7月1日、8月10日出発の東京発京都行き21号の乗車券28席分(1席9,800円)が完売し、運賃274,400円が普通預金に入金された。

(2) 8月10日、21号が運行された。

(3) 仮に、台風の接近で21号が運休となり、全額を普通預金から払い戻した場合は?

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 前受け:まだ運んでいないので負債
借方科目金額貸方科目金額
普通預金274,400前受金274,400
仕訳(2) 運行した日に、初めて売上になる
借方科目金額貸方科目金額
前受金274,400売上274,400
仕訳(3) 運休して払い戻した場合
借方科目金額貸方科目金額
前受金274,400普通預金274,400

THINK ― 判断してみよう

「前受金が8,000万円ある。これで新車を買おう」

夏の繁忙期、ナイトオウル交通の普通預金には、乗車券の前受金だけで常時8,000万円ほどが積み上がっている。社長が言った。「このお金、遊ばせておくのはもったいない。これを頭金にして、新車をあと2台買おう」。あなたなら、どう答えるか?

考え方の例を見る▼

まず事実の確認から入る。「その8,000万円は、乗客のお金です。帳簿の上では負債です」。

ただし、前受金を一切使うなという話でもない。毎日新しい予約が入り、毎日バスが運行して前受金が売上に変わっていく。このサイクルが続く限り、一定額の前受金は常に手元に滞留する。この「滞留する資金(フロート)」を事業に活用すること自体は、多くの企業がやっていることだ。

問題は、サイクルが止まったときだ。財務の立場からは、次のように線を引きたい。

  • ストレステスト:台風で3日間全便運休した場合、感染症で1か月運休した場合の払い戻し額を試算する。
  • 流動性のルール:前受金残高の一定割合(たとえば最悪のシナリオで必要な払い戻し額)は、常に預金として確保しておく。
  • 新車は前受金でなく、借入れやリースで調達する:バスは5年かけて稼ぐ資産だ。5年で返す借入れでまかなうのが筋で、いつ払い戻しが必要になるか分からない前受金を充てるべきではない。

「お金の性質」と「使い道の期間」を合わせる。これは財務の基本原則だ。

04仮払金と仮受金 ― 「とりあえず」記録しておく勘定

お金を支払った(受け取った)が、その内容や金額がまだ確定していないとき、いったん記録しておくための勘定がある。支払ったときは仮払金(資産)、受け取ったときは仮受金(負債)だ。内容が確定したら、正しい勘定科目に振り替える。

例題貸切バスの長距離ツアー

(1) 運転士2名が、貸切バスで立山黒部への2泊3日のツアーに出発するにあたり、宿泊費・高速代などの概算額として現金100,000円を渡した。

(2) 運転士が帰社し、旅費交通費として86,000円を使ったと報告を受け、残額は現金で受け取った。

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仕訳(1) 金額が未確定なので、仮払金で処理
借方科目金額貸方科目金額
仮払金100,000現金100,000
仕訳(2) 精算:確定した費用に振り替え、残額を回収
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費86,000仮払金100,000
現金14,000
仕訳ICカードに10,000円をチャージし、現金で支払った
借方科目金額貸方科目金額
仮払金10,000現金10,000
仕訳ICカードで電車代3,200円を支払ったと報告を受けた
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費3,200仮払金3,200

※問題文で「チャージ時に旅費交通費として処理する」などの指示がある場合は、それに従う。

例題誰から振り込まれたのか分からない入金

(1) 普通預金に、内容が不明な300,000円の入金があった。

(2) 調査の結果、(1)は得意先からの売掛金の回収200,000円と、来月納品予定の商品の内金100,000円であることが判明した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 内容不明の入金は、仮受金(負債)で処理
借方科目金額貸方科目金額
普通預金300,000仮受金300,000
仕訳(2) 内容が判明したら、正しい勘定に振り替える
借方科目金額貸方科目金額
仮受金300,000売掛金200,000
前受金100,000

05差入保証金 ― 返ってくるはずのお金

店舗や事務所を借りるときには、家賃とは別に敷金や保証金を大家に預けることが多い。これは、家賃の滞納や退去時の原状回復に備えて預けておくお金で、退去時には(原状回復費などを差し引いて)返ってくる。

返ってくる権利があるので費用ではなく、差入保証金(資産)で処理する。

例題おかわり堂・北白川店の出店

おかわり堂は、北白川に新店舗を借りる契約を結んだ。保証金1,800,000円(家賃の6か月分)、1か月分の家賃300,000円、不動産会社への仲介手数料300,000円を、普通預金から支払った。

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仕訳保証金は資産、家賃と仲介手数料は費用
借方科目金額貸方科目金額
差入保証金1,800,000普通預金2,400,000
支払家賃300,000
支払手数料300,000
仕訳数年後に退去し、原状回復費用200,000円を差し引かれた保証金の残額1,600,000円が普通預金に返還された
借方科目金額貸方科目金額
修繕費200,000差入保証金1,800,000
普通預金1,600,000
本章で学んだ債権・債務のまとめ
場面資産(権利)負債(義務)
商品以外を後払いで売買した未収入金未払金
お金を貸し借りした貸付金(相手が役員なら役員貸付金、従業員なら従業員貸付金)借入金(相手が役員なら役員借入金)
手付金・内金をやり取りした前払金前受金
内容・金額が未確定の支払い・受取り仮払金仮受金
敷金・保証金を差し入れた差入保証金-

06確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 営業用のトラック4,500,000円を購入し、代金は翌月末に支払うことにした。

(2) 商品を注文し、内金50,000円を現金で支払った。

(3) 得意先から商品の注文を受け、内金80,000円が普通預金に振り込まれた。

(4) 従業員の出張にあたり、旅費の概算額40,000円を現金で渡した。

(5) (4)の従業員が帰社し、旅費として43,500円を使ったとの報告を受け、不足額を現金で支払った。

(6) 事務所の賃借にあたり、敷金400,000円と1か月分の家賃200,000円を普通預金から支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 商品ではないので未払金
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具4,500,000未払金4,500,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
前払金50,000現金50,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金80,000前受金80,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
仮払金40,000現金40,000
仕訳(5) 不足額3,500円を追加で支払う
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費43,500仮払金40,000
現金3,500
仕訳(6)
借方科目金額貸方科目金額
差入保証金400,000普通預金600,000
支払家賃200,000

問26月1日に、取引先に3,000,000円を年利率2.4%で貸し付けた。翌年1月31日に利息とともに返済を受け、普通預金に入金された。返済時の仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳6月1日〜1月31日は8か月。利息=3,000,000×2.4%×8/12=48,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金3,048,000貸付金3,000,000
受取利息48,000

問3次のうち、勘定科目の選び方として誤っているものを1つ選び、正しい勘定科目を答えなさい。

ア.商品を掛けで仕入れた → 買掛金 イ.パソコンを後払いで購入した → 買掛金 ウ.内容不明の入金があった → 仮受金 エ.店舗の保証金を支払った → 差入保証金

解答・解説を見る▼

イ。パソコンは商品ではないので、正しくは未払金(パソコン自体は備品)。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓商品の後払い・後受けは売掛金・買掛金、商品以外は未収入金・未払金。勘定科目の誤りは、決算書の読み手を誤解させる
  • ✓貸付金・借入金の利息は「元金×年利率×月数÷12」で月割計算する
  • ✓手付金・内金は前払金(資産)・前受金(負債)。前受金は「まだ自分のお金ではない」負債である
  • ✓内容や金額が未確定な支払いは仮払金、受取りは仮受金。確定したら正しい勘定に振り替える。ICカードのチャージは仮払金
  • ✓敷金・保証金は差入保証金(資産)。費用にならないが、お金は出ていく

第4部 信用という名の時限爆弾

第10章給料・預り金・立替金・法定福利費

時給1,250円の深夜バイト。会社は本当は、いくら払っているのか?

求人票の時給は、会社が負担する人件費のほんの一部にすぎない。深夜割増、社会保険料の会社負担、そして給料から天引きして「預かる」税金。給料の仕訳を通じて、飲食チェーンを悩ませる「深夜人件費のジレンマ」に迫る。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸給料の総支給額と手取り額の関係を理解する
  • ▸所得税預り金・社会保険料預り金を使った給料の仕訳ができる
  • ▸法定福利費(社会保険料の会社負担分)の仕訳ができる
  • ▸立替金の仕訳ができる
  • ▸人件費を「本当のコスト」で捉え、深夜営業の採算を考えられる
この章の目次▼
  1. 01給料の「額面」と「手取り」
  2. 02給料の仕訳 ― 天引きしたお金は「預り金」
  3. 03法定福利費 ― 社会保険料は「会社も払う」
  4. 04答え合わせ ― 求人票の時給は「氷山の一角」
  5. 05立替金 ― 本人が払うべきものを、会社が一時的に払う
  6. 06深夜人件費のジレンマ ― 深夜営業は続けるべきか
  7. 07確認問題

QUESTION ― この章の問い

店長の計算より、6万円も高い人件費

おかわり堂・百万遍店の深夜帯は、22時から翌3時まで。試験期間の京大生と、バイト帰りの若者でにぎわう時間帯だ。

深夜シフトの求人に、フリーターの浅井が応募してきた。時給1,250円、週5日、1日5時間。店長は電卓をたたいた。

「1,250円×5時間×月22日で、月13万7,500円。これなら深夜帯の売上で十分まかなえる」

ところが、採用の稟議を見た本部の経理部が弾き出した「浅井1人あたりの月の人件費」は、約19万8,000円だった。店長の計算より、6万円以上も高い。

経理部の計算ミスか? いや、経理部は正しかった。店長の計算には、何が抜けていたのか?

01給料の「額面」と「手取り」

問いに入る前に、給料の仕組みを確認しよう。

会社が従業員に支払う給料には、額面(総支給額)と手取りがある。会社は、給料を支払うときに、従業員が納めるべき税金や社会保険料をあらかじめ差し引き(天引き)、残りを従業員の口座に振り込む。差し引いたお金は、会社が従業員から預かり、後日、従業員に代わって税務署や年金事務所などに納める。

ある社員の給料明細(月額)
項目金額説明
総支給額(額面)250,000基本給・各種手当の合計
-所得税(源泉徴収)5,800会社が預かり、翌月10日までに税務署へ納付
-社会保険料(本人負担分)37,500健康保険・厚生年金・雇用保険。会社が預かり、納付する
-住民税(特別徴収)9,700会社が預かり、翌月10日までに市区町村へ納付
差引支給額(手取り)197,000従業員の口座に振り込まれる金額

※本章の税額・保険料は、学習用に単純化した金額。実際の金額は、給与額・扶養親族・年齢・地域・加入する保険の種類などによって異なる。

02給料の仕訳 ― 天引きしたお金は「預り金」

給料の支払いでは、総支給額を給料(費用)として計上する。天引きした税金や社会保険料は、会社が一時的に預かっているお金なので、預り金(負債)で処理する。3級では、内容ごとに次の勘定科目を使う。

給料の天引きで使う勘定科目
天引きするもの勘定科目要素
源泉所得税所得税預り金負債
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担分)社会保険料預り金負債
住民税住民税預り金(または預り金)負債
従業員から預かる積立金など(社員旅行の積立金など)従業員預り金(または預り金)負債
仕訳従業員10人の給料総額2,800,000円から、所得税80,000円と社員旅行の積立金50,000円(1人5,000円)を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ
借方科目金額貸方科目金額
給料2,800,000所得税預り金80,000
従業員預り金50,000
普通預金2,670,000
仕訳給料250,000円の支払いにあたり、所得税5,800円、社会保険料37,500円、住民税9,700円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ
借方科目金額貸方科目金額
給料250,000所得税預り金5,800
社会保険料預り金37,500
住民税預り金9,700
普通預金197,000

預り金の納付

預かった税金や保険料を納付したら、預り金を減らす。

仕訳翌月10日、預かっていた所得税5,800円と住民税9,700円を、現金で納付した
借方科目金額貸方科目金額
所得税預り金5,800現金15,500
住民税預り金9,700

03法定福利費 ― 社会保険料は「会社も払う」

ここからが問いの核心だ。健康保険や厚生年金の保険料は、従業員だけが払うものではない。原則として、会社と従業員が半分ずつ負担する(労使折半)。雇用保険料も、会社のほうが多く負担する。さらに、労災保険料は全額が会社の負担だ。

会社が負担する社会保険料は、法定福利費(費用)で処理する。法律で負担が義務づけられた福利厚生の費用、という意味だ。

仕訳月末、社会保険料の本人負担分37,500円と、会社負担分37,500円を合わせて、普通預金から納付した
借方科目金額貸方科目金額
社会保険料預り金37,500普通預金75,000
法定福利費37,500

04答え合わせ ― 求人票の時給は「氷山の一角」

ANSWER ― 答え合わせ

店長の電卓に入っていなかった、2つのコスト

店長の計算には、2つのコストが抜けていた。

1つ目は深夜割増賃金。労働基準法により、22時から翌朝5時までの深夜労働には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければならない。浅井のシフトは22時〜翌3時。5時間すべてが深夜労働だ。時給1,250円は、実際には1,562円50銭になる。

2つ目は、社会保険料の会社負担(法定福利費)。週25時間働く浅井は、社会保険の加入対象になる。会社は、浅井の給料の約15%に相当する保険料を、自ら負担しなければならない。

浅井1人あたりの月の人件費(深夜5時間×月22日)
項目計算金額
基本の賃金1,250円×110時間137,500
深夜割増賃金(25%)1,250円×25%×110時間34,375
給料(総支給額)171,875
法定福利費(会社負担分・約15%と仮定)171,875円×15%25,781
会社が負担する人件費の合計197,656

会社の本当のコストは、時給から計算した金額の約1.44倍だった。しかも、これは最低限の金額だ。実際には、通勤手当、制服、採用広告費、研修中の人件費なども上乗せされる。

求人票の時給は、人件費という氷山の、海面から出ている部分にすぎない。給料・預り金・法定福利費を正しく仕訳できる人だけが、海面下の本当の大きさを知ることができる。

※社会保険の加入要件(労働時間・賃金・企業規模・学生でないことなど)や保険料率は、法令や加入する制度によって異なる。ここでは、会社負担の合計を給料の約15%と仮定して試算している。

05立替金 ― 本人が払うべきものを、会社が一時的に払う

従業員や取引先が本来負担すべき支払いを、会社が一時的に代わりに支払うことがある。このとき、後で返してもらう権利を立替金(資産)で処理する。従業員に対するものは、従業員立替金として区別することもある。

例題制服代の立替え

(1) おかわり堂は、アルバイトの浅井が個人で購入を希望した防寒用インナー(私物)の代金8,000円を、制服の業者に現金で立て替えて支払った。

(2) 月末の給料171,875円の支払いにあたり、(1)の立替額8,000円、所得税3,500円、社会保険料25,800円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 従業員が負担すべき支払いの立替え
借方科目金額貸方科目金額
従業員立替金8,000現金8,000
仕訳(2) 給料から立替額を差し引いて回収する
借方科目金額貸方科目金額
給料171,875従業員立替金8,000
所得税預り金3,500
社会保険料預り金25,800
普通預金134,575

06深夜人件費のジレンマ ― 深夜営業は続けるべきか

最後に、おかわり堂が抱える経営課題を見ておこう。深夜帯は、割増賃金で人件費が25%以上も高くなる。一方で、客数は昼のピークに比べて少ない。それでも、京都の学生街の深夜には、根強い需要がある。

百万遍店・深夜帯(22時〜翌3時)の1日あたりの数字

深夜帯の売上

60,000円

客数120人×客単価500円

食材費(原価率35%)

21,000円

売上に比例して増減

深夜スタッフ2名の人件費

17,969円

割増・法定福利費込み

深夜帯の光熱費の増加分

3,000円

営業を続けることで増える分

THINK ― 判断してみよう

深夜営業を続けるか、やめるか

社長は言う。「深夜は人件費が高すぎる。全店、深夜1時で閉店しよう」。店長たちは「深夜の常連さんが離れてしまう」と反対している。上の数字をもとに、あなたなら、百万遍店の深夜営業をどう判断するか?

考え方の例を見る▼

判断の軸は、深夜営業を続けることで増える収益と、増える費用だけを比べることだ。

深夜帯の売上60,000円から、深夜営業をすることで発生する費用(食材費21,000円、深夜スタッフの人件費17,969円、光熱費の増加分3,000円)を引くと、1日あたり18,031円が残る。月30日なら約54万円だ。

ここで、店舗の家賃や、厨房設備の減価償却費を深夜帯に割り振って「深夜は赤字だ」と考えてはいけない。家賃は、深夜に店を閉めても1円も減らないからだ。深夜営業の追加的な収支がプラスである限り、深夜営業は店全体の利益を押し上げている。

ただし、条件は2つある。

  • 売上が損益の分岐点を下回っていないか:深夜の売上が1日35,000円まで落ちると、残りはわずか約1,800円になる。店舗ごとに深夜帯の売上を毎月追跡し、分岐点を割り込む店は閉店時間の繰り上げを検討する。
  • 安全と人の持続可能性:利益が出ても、深夜の1人勤務(ワンオペ)は防犯面でも労務面でも大きなリスクを抱える。かつて外食業界では、深夜の1人勤務が社会問題となり、多くの店舗が深夜営業の休止に追い込まれた。2名体制の維持は、利益計算の前提条件だ。

全店一律ではなく、店舗ごとに、数字で決める。それがこの問いへの答えだ。

07確認問題

問1次の一連の取引を仕訳しなさい。

(1) 従業員の給料300,000円の支払いにあたり、所得税9,000円と社会保険料(本人負担分)45,000円を差し引き、残額を普通預金から支払った。

(2) (1)の社会保険料について、本人負担分と同額の会社負担分を合わせて、普通預金から納付した。

(3) (1)の所得税を現金で納付した。

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仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
給料300,000所得税預り金9,000
社会保険料預り金45,000
普通預金246,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
社会保険料預り金45,000普通預金90,000
法定福利費45,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
所得税預り金9,000現金9,000

問2従業員が負担すべき生命保険料12,000円を、会社が現金で立て替えて支払った。翌月の給料220,000円の支払いにあたり、この立替額と所得税4,500円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ。それぞれ仕訳をしなさい(立替金勘定を用いる)。

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仕訳立替時
借方科目金額貸方科目金額
立替金12,000現金12,000
仕訳給料支払時
借方科目金額貸方科目金額
給料220,000立替金12,000
所得税預り金4,500
普通預金203,500

問3次の空欄に当てはまる語句を答えなさい。

会社が負担する社会保険料は(ア)という(イ)の勘定で処理する。一方、従業員の給料から差し引いた社会保険料は(ウ)という(エ)の勘定で処理する。

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(ア)法定福利費 (イ)費用 (ウ)社会保険料預り金 (エ)負債

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓給料は総支給額で「給料」(費用)に計上し、天引きした税金・保険料は預り金(負債)で処理する
  • ✓預り金は従業員から預かったお金。納付したら預り金を減らす。手をつけてはいけないお金である
  • ✓社会保険料の会社負担分は「法定福利費」(費用)。納付時に計上するのが基本
  • ✓従業員などが負担すべき支払いを会社が立て替えたら立替金(資産)。給料から差し引いて回収することが多い
  • ✓時給だけでは人件費は語れない。深夜割増(25%以上)と法定福利費を含めた「本当のコスト」で考える
  • ✓深夜営業のような判断は、それによって増える収益と費用だけを比べる

第4部 信用という名の時限爆弾

第11章貸倒れと貸倒引当金

ある朝、1,000万円の売掛金が紙くずになった。

得意先の倒産で、1,000万円の売掛金が回収不能になった。なのに、今期の損失は550万円しか計上されなかった。残りの450万円は、どこへ消えたのか。「まだ起きていない損失」を先回りして記録する、貸倒引当金の知恵を学ぶ。

読了目安 30分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸貸倒れの意味と、貸倒損失の仕訳を理解する
  • ▸貸倒引当金を差額補充法で設定できる(繰入・戻入)
  • ▸前期以前に発生した債権の貸倒れを、貸倒引当金を使って処理できる
  • ▸償却債権取立益の仕訳ができる
  • ▸引当金の背後にある「費用収益対応」と「保守主義」の考え方を理解する
この章の目次▼
  1. 01貸倒れ ― 売った代金が、二度と戻らないとき
  2. 02貸倒引当金 ― 「まだ起きていない損失」を先に費用にする
  3. 03前期以前の債権が貸し倒れたら ― 引当金を取り崩す
  4. 04償却債権取立益 ― 諦めた代金が戻ってきたら
  5. 05確認問題

QUESTION ― この章の問い

消えた1,000万円と、計上されなかった450万円

5月20日の朝。洛北ミートの社長のスマートフォンに、1本のニュース速報が届いた。

「焼肉チェーン『牛将(ぎゅうしょう)』、破産手続き開始を申し立て」

京都と滋賀に12店舗を展開する、洛北ミートの大口得意先だった。洛北ミートが牛将に対して持っている売掛金は、ちょうど1,000万円。2月と3月に納めた肉の代金だ。破産となれば、ほぼ回収できない。

社長は頭を抱えた。「今期の利益から、1,000万円がまるごと吹き飛ぶ……」

だが、報告に来た経理部長の答えは意外なものだった。

「社長、今期の損益計算書に載る損失は、550万円です」

1,000万円の売掛金が紙くずになったのに、損失は550万円。残りの450万円は、いったいどこへ消えたのか?

01貸倒れ ― 売った代金が、二度と戻らないとき

得意先の倒産などによって、売掛金や受取手形などの債権が回収できなくなることを、貸倒れ(かしだおれ)という。

第7章で見たとおり、掛けで売ることは「得意先にお金を貸している」のと同じだ。貸したお金が返ってこなければ、それは会社にとっての損失になる。

当期に発生した債権が貸し倒れたら ― 貸倒損失

当期に販売して発生した売掛金が、当期中に貸し倒れた場合は、その金額を貸倒損失(費用)として処理する。

仕訳当期に掛けで販売した得意先が倒産し、売掛金300,000円が回収不能になった
借方科目金額貸方科目金額
貸倒損失300,000売掛金300,000

ここまでは素直な処理だ。問題は、前期に販売した代金が、当期になって貸し倒れた場合である。問いの鍵は、そこにある。

02貸倒引当金 ― 「まだ起きていない損失」を先に費用にする

なぜ、起きていない損失を記録するのか

洛北ミートの得意先は約150店。毎年、そのうちの何店かは、残念ながら倒産したり夜逃げしたりして、代金が回収できなくなる。過去の実績を調べると、期末の売掛金のおよそ2%が、翌期に貸し倒れていた。

つまり、期末に2億2,500万円の売掛金があれば、そのうち450万円くらいは、来期のどこかで回収できなくなる可能性が高い。どの得意先が倒れるかは分からない。だが、全体としては、それくらいの損失が出ることがほぼ確実に予想できる。

この予想される損失を、今期の費用として先に計上し、同時に「売掛金のうち回収できないと見込まれる額」を記録しておく。そのための勘定が貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)だ。

差額補充法 ― 不足分だけを補充する

3級では、貸倒引当金を差額補充法で設定する。決算日に、期末の売掛金などの残高に貸倒実績率をかけて、必要な貸倒引当金の額(設定額)を計算する。そして、すでにある貸倒引当金の残高との差額だけを補充する。

FORMULA ― 公式

差額補充法

設定額 = 期末の売上債権の残高 × 貸倒実績率

繰入額 = 設定額 - 貸倒引当金の期末残高(決算整理前)

例題洛北ミート・前期末の決算整理

前期末(3月31日)の売掛金の残高は225,000,000円。貸倒実績率2%で貸倒引当金を差額補充法により設定する。決算整理前の貸倒引当金の残高は1,200,000円だった。

解答・解説を見る▼

設定額 = 225,000,000 × 2% = 4,500,000円

繰入額 = 4,500,000 - 1,200,000 = 3,300,000円

仕訳不足分を補充する
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入3,300,000貸倒引当金3,300,000

貸倒引当金繰入は費用、貸倒引当金は売掛金のマイナスを表す勘定(貸方残高)だ。これで、貸倒引当金の残高は設定額の4,500,000円になった。

設定額より、すでにある残高のほうが大きいこともある。その場合は、多すぎる分を取り崩して、貸倒引当金戻入(収益)とする。

仕訳設定額が400,000円、決算整理前の貸倒引当金残高が550,000円の場合(150,000円を戻し入れる)
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金150,000貸倒引当金戻入150,000

03前期以前の債権が貸し倒れたら ― 引当金を取り崩す

さて、5月20日の牛将の破産に戻ろう。牛将の売掛金1,000万円は、前期の2月と3月に販売した代金だ。そして前期末に、洛北ミートは貸倒引当金を450万円設定していた。

前期以前に発生した債権が貸し倒れたときは、まず貸倒引当金を取り崩して充てる。引当金で足りない分だけを、貸倒損失とする。

仕訳5月20日:前期に発生した牛将への売掛金10,000,000円が貸し倒れた(貸倒引当金の残高は4,500,000円)
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金4,500,000売掛金10,000,000
貸倒損失5,500,000
貸倒引当金(前期)
借方貸方
前期繰越1,200,000
次期繰越4,500,0003/31 貸倒引当金繰入3,300,000
4,500,0004,500,000
貸倒引当金(当期)
借方貸方
5/20 売掛金4,500,0004/1 前期繰越4,500,000

ANSWER ― 答え合わせ

450万円は「去年」すでに費用になっていた

1,000万円の売掛金が紙くずになったのに、今期の損失が550万円だったのは、残りの450万円が、前期の決算ですでに費用として計上されていたからだ。

前期末、洛北ミートは「来期、売掛金の2%くらいは回収できなくなるだろう」と見込み、貸倒引当金を450万円まで積み増した。そのとき「貸倒引当金繰入」という費用が前期の損益計算書に計上され、前期の利益はその分だけ小さくなっていた。

今期、実際に貸倒れが起きたとき、その備えを取り崩して損失に充てた。だから今期の損益計算書に新たに載るのは、備えを超えた部分、つまり550万円の貸倒損失だけなのだ。

牛将への販売で生まれた売上は前期のもの。その売上が抱えていたリスクのコストも、可能な限り前期に負担させる。貸倒引当金は、損失を「起きた日」ではなく「原因が生まれた期」に記録するための、会計上の工夫である。

※当期に発生した債権が当期中に貸し倒れた場合は、貸倒引当金の残高があっても取り崩さず、全額を貸倒損失とする。貸倒引当金は「前期末の債権」に対する備えだからだ。

04償却債権取立益 ― 諦めた代金が戻ってきたら

半年後、牛将の破産手続きが進み、残っていた財産が債権者に分配された。洛北ミートにも、1,000万円の債権のうち3%、30万円が普通預金に振り込まれた。

前期以前に貸倒れとして処理した債権が、後になって回収できた場合は、償却債権取立益(しょうきゃくさいけんとりたてえき・収益)で処理する。

仕訳前期に貸倒れとして処理した売掛金のうち300,000円が、普通預金に入金された
借方科目金額貸方科目金額
普通預金300,000償却債権取立益300,000

THINK ― 判断してみよう

牛将の次は、どこが倒れるか

牛将の破産で、洛北ミートの経営陣は震え上がった。売掛金の残高上位10社の中には、ほかにも急拡大を続けるチェーン店がいくつかある。あなたなら、二度と同じ目に遭わないために、どんな手を打つか?

考え方の例を見る▼

貸倒引当金は、損失を「記録」する道具であって、損失を「防ぐ」道具ではない。本当にすべきは、貸倒れそのものを減らす与信管理だ。

  • 与信限度額の設定:得意先ごとに、売掛金の上限(与信枠)を決める。財務内容や支払実績をもとに、限度額を超える注文は前払いや短いサイトでしか受けない。
  • 早期警戒サインの監視:支払いの遅れ、支払サイトの延長の申し入れ、急な大量注文、経理担当者の頻繁な交代、取引銀行の変更。倒産する会社には、たいてい前兆がある。牛将も、倒れる3か月前から支払いが遅れがちだった。売掛金元帳を毎週チェックしていれば、気づけたはずだ。
  • 集中リスクの分散:1社への売上が大きすぎると、その1社の倒産が致命傷になる。上位得意先への依存度を下げる。
  • 保険と担保:取引信用保険への加入や、保証金の預かりも検討する。
  • 会計上の見直し:景気の悪化や業界の異変が見えたら、過去の実績率にとらわれず、貸倒実績率の見直しや、リスクの高い得意先への個別の引当て(2級以降で学ぶ)を検討する。

数字は過去の結果だが、与信管理は未来の損失を防ぐ。両方がそろって初めて、売掛金は「安全な資産」になる。

05確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 当期に掛けで販売した得意先が倒産し、売掛金200,000円が回収不能となった。

(2) 前期に発生した売掛金300,000円が回収不能となった。貸倒引当金の残高は250,000円である。

(3) 前期に貸倒れとして処理した売掛金80,000円を、現金で回収した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 当期発生 → 全額貸倒損失
借方科目金額貸方科目金額
貸倒損失200,000売掛金200,000
仕訳(2) 前期発生 → 引当金を取り崩し、不足分は貸倒損失
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金250,000売掛金300,000
貸倒損失50,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
現金80,000償却債権取立益80,000

問2決算にあたり、売掛金1,600,000円と受取手形400,000円の期末残高に対して、2%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。決算整理前の貸倒引当金の残高が(1)15,000円の場合と、(2)50,000円の場合の、それぞれの決算整理仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼

設定額=(1,600,000+400,000)×2%=40,000円

仕訳(1) 残高15,000円 → 25,000円を繰り入れる
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入25,000貸倒引当金25,000
仕訳(2) 残高50,000円 → 10,000円を戻し入れる
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金10,000貸倒引当金戻入10,000

問3期首の貸倒引当金の残高は30,000円だった。期中に、前期発生の売掛金20,000円が貸し倒れた。期末の売掛金残高は1,500,000円で、貸倒実績率は2%である。(1)期中の貸倒れの仕訳と、(2)決算整理仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 引当金30,000円の範囲内なので、全額を引当金で充当
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金20,000売掛金20,000
仕訳(2) 設定額30,000円-整理前残高10,000円=20,000円を繰り入れる
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入20,000貸倒引当金20,000

期中の取崩しで、決算整理前の残高は30,000-20,000=10,000円に減っている。ここを見落とさないこと。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓売掛金などが回収不能になることを貸倒れという。当期発生の債権の貸倒れは全額「貸倒損失」
  • ✓決算では、期末の債権に貸倒実績率をかけて貸倒引当金を設定する(差額補充法)。不足は「繰入」、超過は「戻入」
  • ✓前期以前に発生した債権の貸倒れは、まず貸倒引当金を取り崩し、不足分を貸倒損失とする
  • ✓前期以前に貸倒れ処理した債権を回収したら「償却債権取立益」
  • ✓貸倒引当金は、損失を「原因が生まれた期」に負担させるための評価勘定(費用収益対応・保守主義)
  • ✓引当金は見積りであり、操作の誘惑もある。正直な見積りと、日々の与信管理がセットで会社を守る

第5部 未来への投資と、会社の持ち主

第12章有形固定資産と減価償却

5,000万円のバスを買った年、なぜ会社は赤字にならないのか?

5,000万円を払ったのに、損益計算書の費用は1,000万円。粉飾ではない。会計が生んだ最も重要な発明の1つ、「減価償却」の仕業だ。取得から売却、そして2027年度から加わる定率法・除却まで、固定資産のライフサイクルを学ぶ。

読了目安 45分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸有形固定資産の取得原価(付随費用を含む)を計算できる
  • ▸定額法による減価償却費を計算し、間接法で記帳できる
  • ▸期中に取得した固定資産の減価償却費を月割で計算できる
  • ▸固定資産の売却(期首・期中)の仕訳ができる
  • ▸減価償却と「お金」の関係を、EBITDAや再投資の視点で説明できる
  • ▸2027年度から加わる定率法・除却・廃棄を理解する
この章の目次▼
  1. 01有形固定資産 ― 何年も使い続ける「稼ぐ道具」
  2. 02減価償却 ― 5,000万円を「5年」に配分する
  3. 03答え合わせ ― 残りの4,000万円は「資産」として眠っている
  4. 04記帳方法 ― 直接法と間接法
  5. 05期中に取得したら ― 月割で計算する
  6. 06固定資産の売却 ― 「帳簿価額」と「売った値段」の差が損益になる
  7. 07固定資産台帳 ― 1台ごとの「戸籍」
  8. 08修繕か、改良か ― 資本的支出と収益的支出
  9. 09減価償却は「お金が出ていかない費用」である
  10. 102027年度〜 定率法と、固定資産の除却・廃棄
  11. 11確認問題

QUESTION ― この章の問い

5,000万円を払ったのに、利益が減らない

4月1日、ナイトオウル交通は、福岡線の増便のために新車を1台購入した。3列独立シートの最新型で、価格は5,000万円。代金は、その日のうちに普通預金から支払った。

この年の決算。ナイトオウル交通の当期純利益は、前期とほぼ同じ水準を保っていた。損益計算書のどこを探しても、「バス代5,000万円」という費用は見当たらない。代わりに載っていたのは、「減価償却費」という見慣れない費用だった。新車の分は、わずか1,000万円。

決算書を見た新任の社外取締役が、眉をひそめた。

「5,000万円も払ったのに、費用は1,000万円? 残りの4,000万円はどこへ行ったんですか。これは利益を良く見せるための操作ではないのですか?」

5,000万円のバスを買った年、なぜ会社は赤字にならないのか?

01有形固定資産 ― 何年も使い続ける「稼ぐ道具」

会社が長期間(1年を超えて)使うために持っている、形のある資産を有形固定資産という。3級で登場するのは、次の4つだ。

3級で学ぶ有形固定資産
勘定科目具体例減価償却
建物本社ビル、店舗、車庫、倉庫する
備品パソコン、机、厨房機器、冷蔵庫、トレーニングマシンする
車両運搬具バス、トラック、営業車する
土地店舗や車庫の敷地しない

取得原価 ― 「使える状態にするまで」の費用はすべて含める

固定資産を買ったときは、購入代価に、使える状態にするまでにかかった付随費用を加えた金額を、取得原価とする。第5章の商品と同じ考え方だ。

FORMULA ― 公式

固定資産の取得原価

取得原価 = 購入代価 + 付随費用

主な付随費用の例
固定資産付随費用
建物仲介手数料、登記料
土地仲介手数料、登記料、整地費用
備品運送費、据付費、試運転費
車両運搬具架装費(座席や設備の取り付け)、登録手数料

例題ナイトオウル交通の新車購入

4月1日、新車を購入した。車両本体価格は46,000,000円。3列独立シートとカーテン、USB電源の架装費3,000,000円、登録手数料1,000,000円とともに、普通預金から支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳架装費・登録手数料も取得原価に含める
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具50,000,000普通預金50,000,000

3列独立シートの架装をしなければ、OWL LINERとして走らせることはできない。だから架装費は、バスという資産の値段の一部になる。

※固定資産を後払いで購入したときは、買掛金ではなく未払金を使う(第9章)。

02減価償却 ― 5,000万円を「5年」に配分する

バスは「5年間」稼ぎ続ける

5,000万円のバスは、買った年だけ使って捨てるものではない。ナイトオウル交通は、このバスを5年間、毎晩福岡線で走らせ、運賃を稼ぎ続ける。

もし5,000万円を買った年に全額費用にしたら、どうなるか。1年目は巨額の赤字、2年目から5年目は、バスの費用がゼロの「大黒字」。バスは毎年同じように働いているのに、利益はめちゃくちゃに乱高下してしまう。これでは、会社の本当の稼ぐ力が分からない。

そこで会計は、固定資産の取得原価を、それを使う期間(耐用年数)にわたって、少しずつ費用として配分する。この手続きを減価償却(げんかしょうきゃく)といい、各期に配分された費用を減価償却費という。

定額法 ― 毎年同じ金額を費用にする

3級では、毎年同じ金額ずつ減価償却費を計上する定額法を学ぶ。

FORMULA ― 公式

定額法

減価償却費(1年分)=(取得原価 - 残存価額)÷ 耐用年数

残存価額とは、耐用年数が終わったときに残ると見込まれる価値のことだ。現在の実務では残存価額をゼロとすることが多いが、試験では「取得原価の10%」と指示されることもある。問題文の指示に従おう。

例題ナイトオウル交通の新車の減価償却費

取得原価50,000,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法。

解答・解説を見る▼

50,000,000 ÷ 5年 = 10,000,000円(1年分)

支出(1年目に一括)
費用(5年に配分)
普通預金から支払い
5,000万円
1年目 1,000万円
2年目 1,000万円
3年目 1,000万円
4年目 1,000万円
5年目 1,000万円
5,000万円の支出を、5年間の費用に配分する

03答え合わせ ― 残りの4,000万円は「資産」として眠っている

ANSWER ― 答え合わせ

4,000万円は、消えたのではなく「来年以降の費用」として待機している

5,000万円のうち、1年目の費用は1,000万円。残りの4,000万円は、まだ費用になっていない。貸借対照表の上で、車両運搬具という資産として残っているのだ。

これは利益操作ではない。バスはこれから4年間、毎晩福岡線を走り、運賃を稼ぐ。その4年間に、残りの4,000万円が1,000万円ずつ費用になっていく。5年間を通算すれば、費用の合計はきっちり5,000万円。費用が「消えた」のではなく、バスが働く期間に合わせて、正しい年に割り振られているだけなのだ。

社外取締役の疑問はもっともだった。だが、もし買った年に5,000万円を全額費用にしていたら、そちらのほうが、バスの稼ぐ力を正しく表さない「ゆがんだ」決算書になっていたのである。

04記帳方法 ― 直接法と間接法

減価償却費の記帳には、2つの方法がある。

減価償却の2つの記帳方法
方法仕訳特徴
直接法減価償却費 / 車両運搬具固定資産の勘定を直接減らす。帳簿に取得原価が残らない
間接法減価償却費 / 減価償却累計額固定資産の勘定は取得原価のまま。減価償却の累計額を別の勘定に記録する
仕訳直接法:決算日に、新車の減価償却費10,000,000円を計上した
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費10,000,000車両運搬具10,000,000
仕訳間接法:決算日に、新車の減価償却費10,000,000円を計上した
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費10,000,000減価償却累計額10,000,000

間接法では、減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)という勘定に、これまでの減価償却費の合計を積み上げていく。減価償却累計額は、第11章の貸倒引当金と同じく、資産のマイナスを表す評価勘定だ(貸方残高)。

※出題区分表(2022年度適用)では、3級の記帳方法は間接法のみで、直接法は2級の範囲とされている。3級の試験は間接法で解けばよい。直接法は考え方の比較として押さえておこう。

車両運搬具(間接法・2年目末)
借方貸方
4/1 前期繰越50,000,0003/31 次期繰越50,000,000
減価償却累計額(2年目末)
借方貸方
次期繰越20,000,000前期繰越10,000,000
3/31 減価償却費10,000,000
20,000,00020,000,000
貸借対照表での表示(2年目末・間接法)
資産の部金額金額
車両運搬具50,000,000
減価償却累計額△20,000,00030,000,000

取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額を帳簿価額(簿価)という。間接法なら、「もともと5,000万円で買ったバスを、2年分(2,000万円)償却し、帳簿価額は3,000万円」という情報が、一目で分かる。

05期中に取得したら ― 月割で計算する

固定資産を期の途中で買ったときは、使い始めた月から決算月までの月数に応じて、減価償却費を月割で計算する。

例題7月に取得した場合

7月1日に、取得原価50,000,000円のバスを購入した。耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法。決算日は3月31日。当期の減価償却費を求めなさい。

解答・解説を見る▼

7月から3月までは9か月。

50,000,000 ÷ 5年 × 9/12 = 7,500,000円

仕訳間接法
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費7,500,000減価償却累計額7,500,000

月数は「取得月を含めて数える」。7月1日取得なら、7・8・9・10・11・12・1・2・3月の9か月だ。

06固定資産の売却 ― 「帳簿価額」と「売った値段」の差が損益になる

5年後。役目を終えたバスは、廃車にされるとは限らない。日本の中古バスは、品質の高さから東南アジアなどで人気があり、海外の業者に売却されることも多い。

固定資産を売却したときは、売却価額と帳簿価額を比べる。売却価額のほうが大きければ固定資産売却益(収益)、小さければ固定資産売却損(費用)だ。

FORMULA ― 公式

固定資産の売却損益

売却価額 - 帳簿価額(取得原価 - 減価償却累計額)= 売却益(マイナスなら売却損)

例題期首に売却した場合

ナイトオウル交通は、4年前に50,000,000円で取得したバス(減価償却累計額40,000,000円、間接法)を、期首の4月1日に海外の中古車業者に15,000,000円で売却した。代金は月末に受け取る。

解答・解説を見る▼

帳簿価額 = 50,000,000 - 40,000,000 = 10,000,000円

売却益 = 15,000,000 - 10,000,000 = 5,000,000円

仕訳バスと累計額を帳簿から消し、差額を売却益とする
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額40,000,000車両運搬具50,000,000
未収入金15,000,000固定資産売却益5,000,000

売却代金の後日受取りは、商品の売上ではないので未収入金(第9章)。

例題期中に売却した場合 ― 試験で最も狙われるパターン

同じバスを、期首ではなく9月30日に12,000,000円で売却し、代金は月末に受け取ることにした。決算日は3月31日、年間の減価償却費は10,000,000円(定額法・間接法)、期首の減価償却累計額は40,000,000円。

解答・解説を見る▼

期中に売却したときは、期首から売却した月までの減価償却費を月割で計上してから、売却損益を計算する。

当期の減価償却費 = 10,000,000 × 6/12 = 5,000,000円(4月〜9月の6か月)

売却時の帳簿価額 = 50,000,000 - 40,000,000 - 5,000,000 = 5,000,000円

売却益 = 12,000,000 - 5,000,000 = 7,000,000円

仕訳当期分の減価償却費も同時に計上する
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額40,000,000車両運搬具50,000,000
減価償却費5,000,000固定資産売却益7,000,000
未収入金12,000,000

例題売却損が出る場合(IRONWORKS 24のトレッドミル)

期首に、取得原価1,200,000円、減価償却累計額720,000円のトレッドミル(備品)を、300,000円で売却し、代金は現金で受け取った。

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帳簿価額 = 1,200,000 - 720,000 = 480,000円 → 300,000円で売ったので、180,000円の売却損

借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額720,000備品1,200,000
現金300,000
固定資産売却損180,000

07固定資産台帳 ― 1台ごとの「戸籍」

ナイトオウル交通は20台のバスを持っている。それぞれ取得した時期も、取得原価も、減価償却の進み具合も違う。そこで、固定資産を1つずつ管理する補助簿として固定資産台帳を設ける。

固定資産台帳(車両運搬具・抜粋) ×6年3月31日現在
取得年月日名称耐用年数取得原価期首減価償却累計額差引期首帳簿価額当期減価償却費
×2年4月1日3列シート車 A号5年50,000,00030,000,00020,000,00010,000,000
×4年4月1日3列シート車 K号5年50,000,00010,000,00040,000,00010,000,000
×5年7月1日3列シート車 S号5年50,000,000050,000,0007,500,000
合計150,000,00040,000,000110,000,00027,500,000

表は横にスクロールできます →

※第2問では、固定資産台帳の記入から、減価償却累計額勘定や減価償却費の金額を読み取らせる問題が出る。期中に取得した資産の月割計算(S号は×5年7月1日取得なので9か月分)を見落とさないこと。

08修繕か、改良か ― 資本的支出と収益的支出

バスのエンジンを修理したら、その費用はどうなるか。故障した部分を元の状態に戻すための支出(収益的支出)は、修繕費(費用)として処理する。

一方、座席をフルフラットに近いものに交換して価値を高めたり、改造によって耐用年数を延ばしたりする支出(資本的支出)は、固定資産の取得原価に加える。3級では修繕費の処理を押さえ、資本的支出の詳しい計算は2級で学ぶ。

仕訳バスのエアコンの故障を修理し、修理代300,000円を普通預金から支払った(収益的支出)
借方科目金額貸方科目金額
修繕費300,000普通預金300,000

09減価償却は「お金が出ていかない費用」である

ここで、経営の視点から最も重要なことを伝えておきたい。減価償却費は、お金が出ていかない費用だということだ。

バスの代金5,000万円は、買った日にすでに支払っている。2年目以降に計上される減価償却費1,000万円は、帳簿の上で費用になるだけで、その年に新たにお金が出ていくわけではない。だから、会社が本業で生み出すお金は、おおまかに言えば「利益+減価償却費」で見積もることができる。

THINK ― 判断してみよう

社長「今期は利益が足りない。減価償却を減らせないか?」

今期のナイトオウル交通は、燃料費の高騰で利益が伸び悩んでいる。銀行に提出する決算書を前に、社長がつぶやいた。「バスはまだまだ走れる。耐用年数を5年から8年に延ばせば、減価償却費が減って利益が出るだろう?」。あなたなら、どう答えるか?

考え方の例を見る▼

まず、会計のルールとして答える。「耐用年数は、経済的に使用できる期間を合理的に見積もって決めるものです。利益を出すために延ばすことはできません」。実際にバスの使用期間が延びる根拠(車両の改良、整備体制の強化など)があれば見直しはありうるが、その場合も理由と影響を説明する必要がある。

次に、銀行の視点で答える。「減価償却費を減らしても、銀行は見抜きます。そして、会社が現金を生み出す力(EBITDA)は1円も変わりません」。耐用年数をいじって作った利益は、銀行の信頼を失うリスクに見合わない。

そして、本当に伝えたいのはここだ。「利益が足りない本当の原因は、燃料費の高騰です。そちらに手を打ちましょう」。燃料費の上昇分を運賃に反映する時期、燃費の良い運転の徹底、路線ごとの採算の見直し。数字をいじるのではなく、事業を変える。それが、決算書を本当に良くする唯一の方法である。

102027年度〜 定率法と、固定資産の除却・廃棄

2027年4月以降の試験では、2級で学んでいた次の論点が、3級の範囲に加わる予定だ(暫定版)。

定率法 ― 最初に多く、後になるほど少なく

定率法は、毎期の期首の帳簿価額(未償却残高)に一定の償却率をかけて、減価償却費を計算する方法だ。最初の年に最も多く償却し、年が経つほど償却額が減っていく。

FORMULA ― 公式

定率法

減価償却費 =(取得原価 - 期首の減価償却累計額)× 償却率

例題トレッドミルを定率法で償却する

IRONWORKS 24は、取得原価1,000,000円のトレッドミル(備品)を、償却率40%の定率法で償却している。1年目〜3年目の減価償却費を求めなさい。

解答・解説を見る▼
定率法による減価償却費
年期首の帳簿価額減価償却費(×40%)期末の帳簿価額
1年目1,000,000400,000600,000
2年目600,000240,000360,000
3年目360,000144,000216,000

トレーニングマシンやパソコンのように、新しいうちに価値が大きく下がり、性能の陳腐化も早い資産には、定率法のほうが実態に合うと考えられている。

※実務の「200%定率法」で使う保証率・改定償却率は、3級では出題しないことが示されている(基礎的な仕組みの理解を目的とした簡易な出題)。

除却と廃棄 ― 使わなくなった固定資産を帳簿から消す

固定資産を使うのをやめて、帳簿から取り除くことを除却(じょきゃく)という。除却した資産にまだ売れる価値(スクラップとしての価値など)が見込まれる場合は、その見積額を貯蔵品(資産)とし、帳簿価額との差額を固定資産除却損(費用)とする。

処分する価値がなく、捨ててしまうことを廃棄という。廃棄したときは、帳簿価額と廃棄にかかった費用の合計を固定資産廃棄損(費用)とする。

例題IRONWORKS 24の古いマシン

(1) 取得原価1,200,000円、減価償却累計額1,080,000円のトレッドミルを除却した。部品として売却できる見込額は20,000円である。

(2) 取得原価1,200,000円、減価償却累計額1,080,000円のトレッドミルを廃棄した。廃棄費用30,000円は現金で支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 除却:処分見込額は貯蔵品、残りは除却損
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額1,080,000備品1,200,000
貯蔵品20,000
固定資産除却損100,000
仕訳(2) 廃棄:帳簿価額120,000円+廃棄費用30,000円=廃棄損150,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額1,080,000備品1,200,000
固定資産廃棄損150,000現金30,000

11確認問題

問1業務用冷蔵庫800,000円を購入し、搬入・据付費20,000円とともに、代金は翌月末に支払うことにした。仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳付随費用を含め、後払いは未払金
借方科目金額貸方科目金額
備品820,000未払金820,000

問2決算にあたり、次の固定資産の減価償却費を、定額法・間接法で計上する。それぞれの決算整理仕訳をしなさい。決算日は3月31日である。

(1) 建物:取得原価30,000,000円、残存価額は取得原価の10%、耐用年数30年

(2) 車両運搬具:当期の10月1日に取得、取得原価2,400,000円、残存価額ゼロ、耐用年数6年

解答・解説を見る▼
仕訳(1) (30,000,000-3,000,000)÷30年=900,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費900,000減価償却累計額900,000
仕訳(2) 2,400,000÷6年×6/12=200,000円(10月〜3月の6か月)
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費200,000減価償却累計額200,000

問3期首に、備品(取得原価600,000円、減価償却累計額360,000円、間接法)を200,000円で売却し、代金は月末に受け取ることにした。仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳帳簿価額240,000円を200,000円で売ったので、売却損40,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額360,000備品600,000
未収入金200,000
固定資産売却損40,000

問48月31日に、車両運搬具(取得原価3,000,000円、期首の減価償却累計額1,800,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法・間接法)を900,000円で売却し、代金は現金で受け取った。決算日は3月31日である。仕訳をしなさい。

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当期の減価償却費=3,000,000÷5年×5/12=250,000円(4月〜8月の5か月)

帳簿価額=3,000,000-1,800,000-250,000=950,000円 → 900,000円で売ったので売却損50,000円

借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額1,800,000車両運搬具3,000,000
減価償却費250,000
現金900,000
固定資産売却損50,000

問52027年度〜 取得原価500,000円の備品を、償却率25%の定率法で償却する。2年目の減価償却費を求めなさい。

解答・解説を見る▼

1年目:500,000×25%=125,000円

2年目:(500,000-125,000)×25%=93,750円

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓有形固定資産(建物・備品・車両運搬具・土地)は、購入代価+付随費用で取得原価を記録する
  • ✓減価償却は、取得原価を耐用年数にわたって費用に配分する手続き。時価の評価ではない
  • ✓定額法:(取得原価-残存価額)÷耐用年数。期中取得・期中売却は月割で計算する
  • ✓間接法では減価償却累計額(評価勘定)を使い、取得原価-累計額=帳簿価額
  • ✓売却損益=売却価額-帳簿価額。売却代金の後受けは未収入金
  • ✓減価償却費は「お金が出ていかない費用」。そのお金は、将来の設備更新の原資である
  • ✓2027年度からは、定率法・除却(除却損・貯蔵品)・廃棄(廃棄損)も3級に加わる予定

第5部 未来への投資と、会社の持ち主

第13章株式会社と純資産(資本金・繰越利益剰余金・配当)

毎年赤字のSaaS企業に、なぜ投資家は30億円を出すのか?

4年連続の赤字、累積赤字は10億円。それでも投資家は30億円の小切手を切った。株式会社という仕組み、株式の発行、利益の蓄積である繰越利益剰余金、そして株主への配当。「会社は誰のものか」を、純資産の勘定から読み解く。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸株式会社の仕組み(株主・取締役・有限責任)を理解する
  • ▸設立・増資による株式の発行の仕訳ができる
  • ▸当期純利益(純損失)と繰越利益剰余金の関係を理解する
  • ▸剰余金の配当と利益準備金の積立ての仕訳ができる
  • ▸赤字企業に資金が集まる理由を、会計とユニットエコノミクスの両面から説明できる
この章の目次▼
  1. 01株式会社 ― 「お金を出す人」と「経営する人」を分ける発明
  2. 02株式の発行 ― 出資されたお金は「資本金」
  3. 03繰越利益剰余金 ― 会社が稼いだ利益の「貯金箱」
  4. 04答え合わせ ― 投資家は「決算書」ではなく「未来の利益」を買っている
  5. 05剰余金の配当 ― 株主への「利益の分配」
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

累積赤字10億円の会社に、30億円が集まった日

飲食店向けのシフト管理クラウド「シフトクラウド」。創業から4年、売上は毎年1.5倍のペースで伸び、年間の契約売上(ARR)は6億円に達した。

だが、決算書の最終行は、創業以来ずっと赤字だ。今期の当期純損失は4億円。4年間の赤字を積み上げた累積赤字は10億円。預金の残高は4億円しかなく、このままのペースでお金を使い続ければ、約1年で資金が尽きる。

普通の会社なら、銀行は融資をためらうだろう。だが、この年の秋、シフトクラウドはベンチャーキャピタル数社から、30億円の出資を受けることに成功した。

毎年赤字を出し、累積赤字が10億円に達した会社に、なぜプロの投資家たちは30億円もの大金を投じたのか?

01株式会社 ― 「お金を出す人」と「経営する人」を分ける発明

問いを解く前に、株式会社の仕組みを押さえておこう。

株式会社は、多くの人から少しずつお金を集めて、1人では始められない大きな事業を行うための仕組みだ。会社にお金を出した人には、その証として株式が発行される。株式を持つ人を株主という。

株式会社の主な登場人物
登場人物役割
株主会社にお金を出資し、株式を持つ。会社の持ち主。株主総会で重要な事項を決める
株主総会株主が集まる、会社の最高意思決定機関。取締役の選任や配当の決定などを行う
取締役株主から経営を任された人。会社の業務を決定・執行する

02株式の発行 ― 出資されたお金は「資本金」

株式会社が株式を発行して出資を受けたら、払い込まれた金額を資本金(純資産)として処理する。会社の設立時に株式を発行する場合も、設立後に新たに株式を発行する場合(増資)も、3級では払込金額の全額を資本金とする。

例題シフトクラウドの設立と増資

(1) 創業時、株式200株を1株あたり50,000円で発行し、全額の払込みを受けて普通預金とした。

(2) 4年後、ベンチャーキャピタル数社に対して、株式2,000株を1株あたり1,500,000円で発行し、払込金額は普通預金に入金された。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 設立時:200株×50,000円=10,000,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金10,000,000資本金10,000,000
仕訳(2) 増資:2,000株×1,500,000円=3,000,000,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金3,000,000,000資本金3,000,000,000

同じ会社の株式が、創業時は1株5万円、4年後は1株150万円。投資家は、4年間で会社の価値が30倍になったと評価したことになる。

※創業から今回の増資までの間にも2回の増資を行っており、増資直前の資本金は12億円になっていた。

※2級では、払込金額のうち2分の1までを資本金としないで「資本準備金」とする処理を学ぶ。3級では、問題文に特に指示がない限り、全額を資本金とする。

03繰越利益剰余金 ― 会社が稼いだ利益の「貯金箱」

株主が出したお金が資本金なら、会社が自分で稼いだ利益はどこへ行くのか。答えは繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん・純資産)だ。

決算で計算された当期純利益は、繰越利益剰余金に振り替えられ、純資産を増やす。逆に当期純損失が出れば、繰越利益剰余金を減らす。詳しい手続きは第19章で学ぶが、ここでは流れだけを押さえておこう。

仕訳決算:当期純利益5,000,000円を、繰越利益剰余金に振り替えた(損益勘定から振り替える)
借方科目金額貸方科目金額
損益5,000,000繰越利益剰余金5,000,000
仕訳決算:当期純損失400,000,000円を、繰越利益剰余金に振り替えた
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金400,000,000損益400,000,000

※「損益」は、決算のときに収益と費用をすべて集めて当期純損益を計算するための勘定(第19章)。

赤字が続けば、繰越利益剰余金はマイナス(借方残高)になる。シフトクラウドの繰越利益剰余金は、4年間の赤字が積み重なって△10億円。株主が出した資本金のうち、10億円分を事業のために「使い果たした」状態だ。

資産 5億円
負債・純資産 5億円
普通預金
4億円
その他の資産 1億円
前受金 2億円
その他の負債 1億円
純資産 2億円
(資本金12億円-
繰越利益剰余金△10億円)
シフトクラウドの貸借対照表(増資の直前)

04答え合わせ ― 投資家は「決算書」ではなく「未来の利益」を買っている

ANSWER ― 答え合わせ

赤字の正体は「将来の売上を買うための投資」だった

投資家たちが見ていたのは、損益計算書の最終行ではない。赤字の中身だ。

シフトクラウドの費用の多くは、新しい顧客を獲得するための広告費や営業担当者の人件費、そしてサービスを改良する開発者の人件費だった。会計のルールでは、これらは使った年の費用になる。だが、その効果は何年にもわたって続く。

1店舗の顧客を獲得するのにかかる費用は約18万円。一方、獲得した店舗は月額15,000円を払い、平均で約100か月(8年以上)使い続ける。サーバー代などを差し引いた粗利は、1店舗あたり約120万円だ。

シフトクラウドの「1店舗あたり」の経済性(ユニットエコノミクス)

顧客獲得コスト(CAC)

18万円

獲得した年に全額費用になる

月額利用料

15,000円

粗利率80%

平均利用期間

約100か月

月間解約率1%

顧客生涯の粗利(LTV)

120万円

15,000円×80%×100か月

LTV÷CAC

約6.7倍

3倍以上なら優秀とされる

今期、シフトクラウドは約1,800店舗を新たに獲得し、そのための費用3億円以上を、今期の費用として計上した。会計上は大赤字だ。だが、その1,800店舗は、これから何年もかけて、獲得費用の数倍の粗利を生み出し続ける。

つまり、シフトクラウドの赤字は、「お金を失った」赤字ではなく、「将来の売上を前払いで買った」赤字なのだ。成長を速めるほど、目先の赤字は大きくなる。投資家は、この赤字の「質」を見抜き、30億円という燃料を注ぎ込んだのである。

増資によって、貸借対照表の資本金は42億円に、純資産は32億円に回復した。預金は34億円。約1年だった資金の余命は、一気に数年に延びた。

05剰余金の配当 ― 株主への「利益の分配」

最後に、黒字の会社の話をしよう。おかわり堂は、毎年安定して利益を出し、繰越利益剰余金を積み上げてきた。株主総会で、株主に利益の一部を分配することが決まった。これを剰余金の配当という。

配当は、株主総会の決議によって決まり、その後に支払われる。決議の時点では、まだお金は支払っていないので、株主に支払う義務を未払配当金(負債)として計上する。

配当で使う勘定科目
勘定科目要素内容
繰越利益剰余金純資産配当の原資。配当すると減る
未払配当金負債決議された配当金のうち、まだ支払っていない額
利益準備金純資産配当にあわせて、会社法の規定により積み立てる準備金

例題おかわり堂の株主総会

(1) 6月の定時株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、株主配当金3,000,000円を支払うことと、利益準備金300,000円を積み立てることが決議された。

(2) 7月、株主配当金3,000,000円を普通預金から支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 決議時:繰越利益剰余金を減らし、未払配当金と利益準備金に振り替える
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金3,300,000未払配当金3,000,000
利益準備金300,000
仕訳(2) 支払時
借方科目金額貸方科目金額
未払配当金3,000,000普通預金3,000,000
3級で登場する純資産の勘定
勘定科目内容
資本金株主が払い込んだ金額
利益準備金配当にあわせて積み立てた準備金(会社の利益が原資)
繰越利益剰余金会社が稼いだ利益の蓄積のうち、配当などに使っていない部分

THINK ― 判断してみよう

利益をどう使うか ― 配当か、出店か、返済か

おかわり堂は今期、7,000万円の当期純利益を出す見込みだ。手元の預金にも余裕がある。経営会議では意見が割れた。社長は「株主に報いたい。配当を倍にしよう」。営業担当の役員は「京都市外に3店舗出店するべきだ」。財務担当は「借入金を前倒しで返したい」。あなたなら、どう考えるか?

考え方の例を見る▼

これは資本配分と呼ばれる、経営の最も重要な判断の1つだ。判断の軸は「その1円を、どこに使えば最も価値を生むか」である。

  • 出店の採算を数字で確かめる:新店1店舗の投資額(内装・設備・保証金)と、見込まれる年間の利益(減価償却費を足し戻したキャッシュ)を比べ、何年で投資を回収できるかを計算する。牛肉高騰で原価率が上がっている今、既存店と同じ収益力が出せるのかを、厳しく見積もる。
  • 株主が期待するリターンを意識する:株主は、自分のお金を会社に預けている以上、一定のリターンを期待している。出店のリターンがそれを上回るなら出店を、下回るなら配当などで株主に返すほうが合理的だ。
  • 財務の安全性を確保する:序章のまんぷく食堂の教訓を忘れてはいけない。出店で資金を使いすぎず、借入金の返済計画に無理がないかを、資金繰り表で確かめる。
  • 配当方針は一貫させる:配当は、一度増やすと減らしにくい。利益に対する配当の割合(配当性向)の目安を決め、毎期その方針に沿って配当することで、株主の信頼を得られる。

結論は、全部を少しずつではなく、数字で優先順位をつけることだ。「配当を倍に」の前に、出店のリターンと資金繰りのシミュレーションを経営会議に出そう。

06確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 会社の設立にあたり、株式500株を1株あたり60,000円で発行し、全額の払込みを受けて普通預金とした。

(2) 増資のため、株式200株を1株あたり80,000円で発行し、払込金額は当座預金に入金された。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 500株×60,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金30,000,000資本金30,000,000
仕訳(2) 200株×80,000円
借方科目金額貸方科目金額
当座預金16,000,000資本金16,000,000

問2次の一連の取引を仕訳しなさい。

(1) 株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、株主配当金1,000,000円の支払いと、利益準備金100,000円の積立てが決議された。

(2) (1)の配当金を普通預金から支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金1,100,000未払配当金1,000,000
利益準備金100,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
未払配当金1,000,000普通預金1,000,000

問3決算で、当期純損失2,000,000円が計算された。繰越利益剰余金勘定への振替仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼
仕訳純損失は繰越利益剰余金を減らす(借方)
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金2,000,000損益2,000,000

問41店舗あたりの顧客獲得コストが30万円、月額利用料が1万円(粗利率80%)、平均利用期間が30か月のサービスがある。LTV(顧客生涯の粗利)とLTV÷CACを求め、このサービスの成長について考えを述べなさい。

解答・解説を見る▼

LTV=1万円×80%×30か月=24万円。LTV÷CAC=24万円÷30万円=0.8倍。

1店舗を獲得するたびに、獲得費用を回収できずに損をする構造になっている。この状態で広告費を増やして成長を速めると、赤字は「投資」ではなく「出血」になる。解約率を下げて平均利用期間を延ばすか、獲得コストを下げるか、利用料を見直すなど、成長の前にユニットエコノミクスの改善が必要だ。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓株式会社は、株主(出資者・有限責任)と取締役(経営者)を分けて、大きな資金を集める仕組み
  • ✓株式を発行したら、3級では払込金額の全額を資本金(純資産)とする
  • ✓当期純利益は繰越利益剰余金を増やし、当期純損失は減らす。繰越利益剰余金は利益の蓄積
  • ✓配当の決議時は「繰越利益剰余金/未払配当金・利益準備金」、支払時は「未払配当金/預金」
  • ✓利益準備金は、配当で会社の財産を空っぽにしないための安全装置
  • ✓会計上の赤字でも、その中身が将来の売上を生む投資なら、投資家は資金を出す。赤字の「質」を見抜くことが大切

第6部 国家と時間

第14章税金(租税公課・法人税等・消費税)

消費税は「預かったお金」。それを使い込んだ会社の末路

行列のできるラーメン店が、たった1枚の納付書で窮地に立たされた。会社が払う税金は、費用になる税金、利益にかかる税金、そして客から預かる税金の3種類。とりわけ消費税の仕組みを知らない経営者は、知らないうちに「他人のお金」を使い込んでいる。

読了目安 35分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸会社が負担する税金を3種類に分類できる
  • ▸固定資産税・印紙税などの租税公課の仕訳ができる
  • ▸法人税等の中間納付・決算・確定納付の仕訳ができる
  • ▸消費税(税抜方式)の仕訳と、決算での未払消費税の計算ができる
  • ▸消費税が資金繰りに与える影響を説明できる
この章の目次▼
  1. 01会社が払う税金は、3種類に分けて考える
  2. 02費用になる税金 ― 租税公課
  3. 03利益にかかる税金 ― 法人税、住民税及び事業税
  4. 04預かる税金 ― 消費税
  5. 05答え合わせ ― 1,200万円は、最初から「客のお金」だった
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

年商2億円の人気店を追い詰めた、1枚の納付書

京都・四条烏丸。濃厚な鶏白湯スープで行列が絶えないラーメン店「麺屋とりの巣」は、市内に5店舗を構え、年間の売上は税込で2億2,000万円に達していた。

決算から2か月後。経営者のもとに、その年の消費税の納付期限が迫っていた。納めるべき消費税は1,200万円。

ところが、会社の預金口座には300万円しかなかった。

売上は過去最高。店はいつも満席。不正もない。それなのに、なぜ1,200万円が払えないのか。そもそも、この1,200万円は、いったい誰のお金だったのか?

01会社が払う税金は、3種類に分けて考える

問いに入る前に、会社に関わる税金を整理しておこう。簿記では、税金を次の3つに分けて処理する。

会社に関わる税金の3分類
分類主な税金勘定科目
①費用になる税金固定資産税、自動車税、印紙税租税公課(費用)
②利益にかかる税金法人税、住民税、事業税法人税、住民税及び事業税
③預かる税金消費税、源泉所得税仮受消費税・仮払消費税、所得税預り金

①は、事業を営むために払う「経費」としての税金。②は、会社が稼いだ利益に対してかかる税金。③は、会社が負担するのではなく、客や従業員が負担する税金を、会社が一時的に預かって納める税金だ。この区別が、問いを解く鍵になる。

02費用になる税金 ― 租税公課

固定資産税は、土地・建物・事業用の設備などを持っていることに対してかかる税金だ。自動車税は自動車の所有者に、印紙税は領収書や契約書などの文書を作ったときにかかる(収入印紙を貼って納める)。

これらは、事業を営むための経費と同じ性質なので、租税公課(そぜいこうか・費用)で処理する。

例題ナイトオウル交通の租税公課

(1) 車庫の土地・建物に対する固定資産税の納税通知書(年税額1,200,000円)を受け取り、第1期分300,000円を普通預金から納付した。

(2) バス20台分の自動車税1,000,000円を、普通預金から納付した。

(3) 貸切バスの代金の領収書に貼るため、収入印紙20,000円分を現金で購入した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 固定資産税は租税公課(納付した分を計上)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課300,000普通預金300,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課1,000,000普通預金1,000,000
仕訳(3) 収入印紙の購入も租税公課
借方科目金額貸方科目金額
租税公課20,000現金20,000

※固定資産税の納税通知書を受け取った時点で、年税額の全額を「租税公課/未払金」と計上し、納付のつど未払金を減らす方法もある。問題文の指示に従おう。また、決算日に使わずに残っている収入印紙や郵便切手は、「貯蔵品」として資産に振り替える(第15章)。

03利益にかかる税金 ― 法人税、住民税及び事業税

会社が利益を出すと、その利益に対して法人税(国税)、住民税(地方税)、事業税(地方税)がかかる。簿記では、この3つをまとめて法人税、住民税及び事業税(法人税等)という勘定で処理する。

法人税等は、決算で利益が確定してから計算する。ただし、前期の税額が一定以上の会社は、期の途中で、前期の実績をもとにした税額の半分ほどを先に納める(中間申告・中間納付)。

法人税等の1年間の流れ

  1. 1

    期の途中:中間納付

    前期の実績などにもとづき、税額の一部を先に納める。まだ当期の税額は確定していないので「仮払法人税等」(資産)とする

  2. 2

    決算日:当期の税額を計上

    当期の利益にもとづく年税額を「法人税、住民税及び事業税」(費用)として計上し、中間納付額を差し引いた残りを「未払法人税等」(負債)とする

  3. 3

    決算後:確定申告・納付

    原則として決算日から2か月以内に申告し、未払法人税等を納付する

例題ナイトオウル交通の法人税等

(1) 11月、法人税等の中間申告を行い、6,000,000円を普通預金から納付した。

(2) 3月31日の決算で、当期の法人税等の年税額が14,000,000円と計算された。

(3) 5月、確定申告を行い、未払分を普通預金から納付した。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 中間納付:仮払法人税等(資産)
借方科目金額貸方科目金額
仮払法人税等6,000,000普通預金6,000,000
仕訳(2) 決算:年税額を計上し、中間納付額との差額を未払法人税等とする
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税14,000,000仮払法人税等6,000,000
未払法人税等8,000,000
仕訳(3) 確定納付
借方科目金額貸方科目金額
未払法人税等8,000,000普通預金8,000,000

04預かる税金 ― 消費税

いよいよ問いの核心、消費税だ。

1杯の牛丼をめぐる消費税のバトンリレー(税率10%で単純化)
段階売値(税抜)受け取った消費税支払った消費税納める消費税
洛北ミート → おかわり堂200円20円0円20円
おかわり堂 → 客500円50円20円30円
合計50円(=客が負担した消費税)

表は横にスクロールできます →

※実際には、食材の仕入れや持ち帰りの飲食料品には軽減税率(8%)が適用されるなど、取引ごとに税率が異なる。ここでは仕組みを示すため、税率を10%に統一している。

税抜方式の仕訳 ― 「仮払」と「仮受」で預かりを管理する

3級では、消費税を売上や仕入と区別して記録する税抜方式を学ぶ。

例題おかわり堂の消費税

(1) 洛北ミートから牛肉を仕入れ、代金440,000円(うち消費税40,000円)は掛けとした。

(2) 1日の売上は、店内飲食分が税抜500,000円(消費税10%)、持ち帰り分が税抜300,000円(消費税8%)で、代金は現金で受け取った。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 支払った消費税は「仮払消費税」
借方科目金額貸方科目金額
仕入400,000買掛金440,000
仮払消費税40,000
仕訳(2) 受け取った消費税は「仮受消費税」:50,000円+24,000円=74,000円
借方科目金額貸方科目金額
現金874,000売上800,000
仮受消費税74,000

売上・仕入は税抜の金額で記録し、消費税の部分は仮払消費税・仮受消費税として別に記録する。こうすることで、「預かっている消費税」と「支払った消費税」が帳簿の上で常に見えるようになる。

※牛丼チェーンでは、同じ牛丼でも店内で食べれば10%、持ち帰れば8%の消費税がかかる(軽減税率)。3級の試験では、問題文で示された税率(通常は10%)で計算すればよい。

決算 ― 差額が「納める消費税」になる

決算では、仮受消費税と仮払消費税を相殺し、その差額を未払消費税(負債)として計上する。

仕訳決算:仮受消費税の残高が5,200,000円、仮払消費税の残高が3,100,000円だった
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税5,200,000仮払消費税3,100,000
未払消費税2,100,000
仕訳確定申告にもとづき、未払消費税2,100,000円を普通預金から納付した
借方科目金額貸方科目金額
未払消費税2,100,000普通預金2,100,000

※仮払消費税のほうが多いときは、差額が税務署から還付される。この還付を受ける権利は「未収還付消費税」(資産)で処理する。

05答え合わせ ― 1,200万円は、最初から「客のお金」だった

ANSWER ― 答え合わせ

経営者は、預かったお金を自分の売上だと思って使っていた

麺屋とりの巣の年間売上、税込2億2,000万円。そのうち2,000万円は、客から預かった消費税だった。店の本当の売上(税抜)は2億円だ。

一方、食材や光熱費、家賃などの支払いに含まれていた消費税は800万円。差し引き1,200万円を、店は国に納めなければならない。

麺屋とりの巣の消費税(年間)
項目金額
売上で受け取った消費税(仮受消費税)2,000万円
仕入れ・経費で支払った消費税(仮払消費税)△800万円
納めるべき消費税(未払消費税)1,200万円

経営者は、税込の売上がすべて店のお金だと思い、新店の内装や設備に次々と使っていた。だが、そのうち1,200万円は、最初から国に納めるために客から預かっていたお金だった。

しかもラーメン店は、売上に占める人件費の割合が高い。給料には消費税がかからないため、人件費が多い事業ほど、差し引ける消費税(仮払消費税)が少なくなり、納める消費税が大きくなる。

税抜方式で仮受消費税を毎日記録していれば、「このお金は預かりものだ」ということが、帳簿の上で常に見えていたはずだ。

THINK ― 判断してみよう

消費税で二度とつまずかないために

麺屋とりの巣の経営者から、相談を受けた。「来年からは同じ失敗をしたくない。どうすればいいか」。あなたなら、どんな仕組みを提案するか?

考え方の例を見る▼

ポイントは、「預かったお金」を物理的にも心理的にも切り離すことだ。

  • 月次で未払消費税を計算する:毎月の試算表で、仮受消費税から仮払消費税を引き、その月に積み上がった「納めるべき消費税」を把握する。
  • 納税用の口座に毎月積み立てる:計算した金額を、毎月、普段使いの口座とは別の「納税専用口座」に移す。この口座のお金には手をつけないルールにする。
  • 中間納付を活用する:前年の納税額が一定以上の事業者は、消費税も期の途中に中間納付を行う。年1回の一括払いより、資金繰りの山が小さくなる。
  • 資金繰り表に納税予定を入れる:法人税等と消費税の納付月は、毎年ほぼ決まっている。数か月先の資金繰り表に必ず織り込み、設備投資の計画と重ならないようにする。

そして、経営判断の場では、売上を税抜で語る習慣をつける。「年商2億2,000万円の店」ではなく「年商2億円の店」。それだけで、使ってよいお金の感覚は大きく変わる。

06確認問題

問1次の取引を仕訳しなさい。

(1) 本社建物の固定資産税の第2期分100,000円を、普通預金から納付した。

(2) 収入印紙5,000円を購入し、現金で支払った。

(3) 法人税等の中間申告を行い、1,500,000円を普通預金から納付した。

(4) 決算で、当期の法人税等が3,800,000円と計算された。中間納付額は1,500,000円である。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課100,000普通預金100,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
租税公課5,000現金5,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
仮払法人税等1,500,000普通預金1,500,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税3,800,000仮払法人税等1,500,000
未払法人税等2,300,000

問2消費税の税率を10%、税抜方式として、次の取引を仕訳しなさい。

(1) 商品を仕入れ、代金440,000円(税込)は掛けとした。

(2) 商品を販売し、代金770,000円(税込)は掛けとした。

(3) 決算にあたり、(1)(2)の消費税を整理した(ほかに消費税の取引はない)。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 税抜400,000円・消費税40,000円
借方科目金額貸方科目金額
仕入400,000買掛金440,000
仮払消費税40,000
仕訳(2) 税抜700,000円・消費税70,000円
借方科目金額貸方科目金額
売掛金770,000売上700,000
仮受消費税70,000
仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税70,000仮払消費税40,000
未払消費税30,000

問3次のうち、「租税公課」で処理しないものを1つ選びなさい。

ア.固定資産税 イ.収入印紙の購入 ウ.法人税の中間納付 エ.自動車税

解答・解説を見る▼

ウ。法人税の中間納付は「仮払法人税等」で処理する。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓税金は「費用になる税金(租税公課)」「利益にかかる税金(法人税等)」「預かる税金(消費税・源泉所得税)」の3つに分けて考える
  • ✓固定資産税・自動車税・印紙税は租税公課(費用)
  • ✓法人税等:中間納付は仮払法人税等、決算で年税額を計上し、残りを未払法人税等とする
  • ✓消費税(税抜方式):支払った分は仮払消費税、受け取った分は仮受消費税。決算で相殺し、差額を未払消費税とする
  • ✓消費税は客から預かったお金。税込売上を自分のお金と思うと、納付のときに資金が足りなくなる

第6部 国家と時間

第15章経過勘定(前払費用・前受収益・未払費用・未収収益)と貯蔵品

年会費を先にもらったジムは、なぜそれを「売上」と呼べないのか?

お金が動いた日と、サービスを提供した日はずれる。そのずれを決算で修正し、「この期間に本当に稼いだ利益」を計算するための4つの勘定がある。期間のずれを調整する簿記の技術、経過勘定を学ぶ。

読了目安 40分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸発生主義と現金主義の違いを説明できる
  • ▸前払費用・前受収益(繰延べ)の決算整理ができる
  • ▸未払費用・未収収益(見越し)の決算整理ができる
  • ▸再振替仕訳の意味を理解し、仕訳できる
  • ▸貯蔵品(未使用の切手・収入印紙)の決算整理ができる
この章の目次▼
  1. 01発生主義 ― 「お金が動いた日」ではなく「価値が生まれた日」
  2. 02前払費用 ― 払いすぎた費用を、来期に繰り延べる
  3. 03前受収益 ― 受け取りすぎた収益を、来期に繰り延べる
  4. 04未払費用 ― まだ払っていない費用を、当期に見越す
  5. 05未収収益 ― まだ受け取っていない収益を、当期に見越す
  6. 06再振替仕訳 ― 翌期首に「元に戻す」
  7. 07勘定記入 ― 第2問の定番を1年分たどる
  8. 08貯蔵品 ― 使い残した切手と収入印紙
  9. 09確認問題

QUESTION ― この章の問い

3月に集めた2億円のうち、今期の売上は2,000万円

3月、IRONWORKS 24は大勝負に出た。決算月に合わせた「年払いプラン、2か月分無料」キャンペーン。通常なら月7,980円×12か月の会費が、年払いなら10か月分の79,800円で1年間使い放題になる。

キャンペーンは大当たりした。3月だけで3,000人が年払いプランに申し込み、2億3,940万円が一気に口座に振り込まれた。

「これで今期は過去最高の売上だ!」

決算の打ち合わせで、社長は満面の笑みを浮かべた。だが、経理部長の答えは冷ややかだった。

「社長。この2億3,940万円のうち、今期の売上にできるのは1,995万円だけです」

お金は確かに、今期のうちに口座に入っている。それなのに、なぜ売上にできないのか?

01発生主義 ― 「お金が動いた日」ではなく「価値が生まれた日」

問いを解く鍵は、会計の根本原則の1つ、発生主義だ。

期中の仕訳は、ふつう、お金が動いたときに行う。だから決算日には、お金の動きと「その期に本当に発生した収益・費用」との間に、ずれが残っている。このずれを修正するために使う勘定を経過勘定という。経過勘定は、次の4つだ。

経過勘定の4つの勘定
分類勘定要素どんなときに使うか
繰延べ前払費用資産費用を支払ったが、まだサービスを受けていない部分がある
繰延べ前受収益負債収益を受け取ったが、まだサービスを提供していない部分がある
見越し未払費用負債サービスを受けたが、まだ費用を支払っていない
見越し未収収益資産サービスを提供したが、まだ収益を受け取っていない

02前払費用 ― 払いすぎた費用を、来期に繰り延べる

ナイトオウル交通は、バスの車両保険の保険料を、1年分まとめて前払いしている。

例題前払保険料(ナイトオウル交通)

12月1日、バスの車両保険料1年分(12月1日〜翌年11月30日)2,400,000円を普通預金から支払った。決算日は3月31日である。

解答・解説を見る▼
仕訳12月1日:支払時(ふつうに費用で処理する)
借方科目金額貸方科目金額
保険料2,400,000普通預金2,400,000

3月31日の時点で、保険のサービスを受けたのは12月〜3月の4か月分だけ。4月〜11月の8か月分は、来期のための支払いだ。その分を当期の費用から取り除き、前払保険料(資産)として来期に繰り延べる。

前払分 = 2,400,000 × 8/12 = 1,600,000円

仕訳3月31日:決算整理(前払分を資産に振り替える)
借方科目金額貸方科目金額
前払保険料1,600,000保険料1,600,000

これで、当期の保険料は800,000円(4か月分)になった。

支払った保険料(12か月分)
行き先
保険料
2,400,000円
(12/1〜11/30)
当期の費用
800,000円
(12月〜3月)
前払保険料(資産)
1,600,000円
(4月〜11月)
2,400,000円の保険料を、当期と来期に分ける

03前受収益 ― 受け取りすぎた収益を、来期に繰り延べる

IRONWORKS 24の京都本店には、入口の一角を、プロテインスムージーのスタンドに貸しているスペースがある。家賃は半年分の前払いだ。

例題前受家賃(IRONWORKS 24)

2月1日、スムージースタンドから、6か月分(2月1日〜7月31日)の家賃600,000円が普通預金に振り込まれた。決算日は3月31日である。

解答・解説を見る▼
仕訳2月1日:受取時(ふつうに収益で処理する)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金600,000受取家賃600,000

3月31日の時点で、場所を貸したのは2月・3月の2か月分。4月〜7月の4か月分は、来期に場所を貸す義務が残っている。その分を当期の収益から取り除き、前受家賃(負債)として繰り延べる。

前受分 = 600,000 × 4/6 = 400,000円

仕訳3月31日:決算整理(前受分を負債に振り替える)
借方科目金額貸方科目金額
受取家賃400,000前受家賃400,000

ANSWER ― 答え合わせ

2億3,940万円のうち、11か月分は「これから提供するサービス」の代金

年払いプランの会費79,800円は、12か月分のジムの利用サービスの対価だ。3月に入会した会員に、3月31日までに提供したサービスは、3月の1か月分だけ。残りの11か月分は、来期にジムを使わせる義務が残っている。

発生主義では、収益は「お金を受け取ったとき」ではなく「サービスを提供したとき」に計上する。だから、今期の売上にできるのは、1か月分だけなのだ。

年払いプランの会費の行方
項目計算金額
3月に受け取った会費79,800円×3,000人239,400,000
うち今期の収益(3月の1か月分)239,400,000×1/1219,950,000
うち来期以降の収益(前受収益)239,400,000×11/12219,450,000
仕訳3月31日:決算整理(会費を「受取会費」で処理している場合)
借方科目金額貸方科目金額
受取会費219,450,000前受会費219,450,000

2億1,945万円は、帳簿の上では「お客様に1年間ジムを使わせる約束」という負債だ。もし来月ジムが閉鎖されれば、返金しなければならないお金である。社長が見ていた「過去最高の売上」は、来期の売上の前借りにすぎなかった。

※会費の勘定科目は会社が定める(ここでは「受取会費」)。3級の試験では、前受収益は主に受取家賃・受取地代・受取利息などで出題される。また、2級以降で学ぶ収益認識の基準では、こうした前受けの対価は「契約負債」として扱われる。

04未払費用 ― まだ払っていない費用を、当期に見越す

今度は逆のケースだ。おかわり堂の給料は、20日締め・25日払い。毎月21日から翌月20日までの労働に対する給料を、翌月25日に支払う。

例題未払給料(おかわり堂)

おかわり堂の給料は20日締め・25日払いである。決算日の3月31日時点で、3月21日〜31日の11日分の給料8,800,000円(深夜帯の割増分を含む)が、まだ支払われていない。

解答・解説を見る▼

3月21日〜31日の労働は、すでに当期に提供されている。給料を払うのは4月25日でも、費用はすでに当期に発生している。だから、当期の費用として見越し計上し、まだ払っていない義務を未払給料(負債)とする。

仕訳3月31日:決算整理(当期の費用として見越す)
借方科目金額貸方科目金額
給料8,800,000未払給料8,800,000

05未収収益 ― まだ受け取っていない収益を、当期に見越す

例題未収利息(洛北ミート)

洛北ミートは、10月1日に取引先に5,000,000円を年利率3%で貸し付けた。利息は1年分を翌年9月30日に後払いで受け取る約束である。決算日は3月31日。

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10月1日〜3月31日の6か月分の利息は、お金はまだ受け取っていないが、お金を貸すというサービスはすでに提供済みだ。当期の収益として見越し計上し、未収利息(資産)とする。

未収分 = 5,000,000 × 3% × 6/12 = 75,000円

仕訳3月31日:決算整理(当期の収益として見越す)
借方科目金額貸方科目金額
未収利息75,000受取利息75,000
4つの経過勘定の決算整理仕訳
種類決算整理仕訳当期の損益への影響
前払費用前払〇〇 / 〇〇(費用)費用を減らす
前受収益〇〇(収益) / 前受〇〇収益を減らす
未払費用〇〇(費用) / 未払〇〇費用を増やす
未収収益未収〇〇 / 〇〇(収益)収益を増やす

06再振替仕訳 ― 翌期首に「元に戻す」

経過勘定は、決算日の損益を正しく計算するための、一時的な修正だ。そこで、翌期の期首に、決算整理仕訳と逆の仕訳を行い、もとの費用・収益の勘定に戻す。これを再振替仕訳という。第4章の当座借越でも登場した手続きだ。

仕訳翌期4月1日:前払保険料の再振替仕訳
借方科目金額貸方科目金額
保険料1,600,000前払保険料1,600,000
仕訳翌期4月1日:未払給料の再振替仕訳
借方科目金額貸方科目金額
未払給料8,800,000給料8,800,000
保険料(翌期)
借方貸方
4/1 前払保険料1,600,000
12/1 普通預金2,400,000
前払保険料(翌期)
借方貸方
4/1 前期繰越1,600,0004/1 保険料1,600,000

※翌期の12月1日に、また1年分2,400,000円を支払えば、翌期の決算でも同じように8か月分を前払保険料に振り替える。翌期の保険料は、4月〜11月の8か月分(前期からの再振替分1,600,000円)と、12月〜3月の4か月分(800,000円)の合計2,400,000円となり、ちょうど12か月分になる。

07勘定記入 ― 第2問の定番を1年分たどる

試験の第2問では、経過勘定に関係する勘定に1年分の記入をさせ、締め切らせる問題がよく出る。期首の再振替、期中の支払い、決算整理、損益への振替、次期繰越が、1つの勘定に順番に並ぶ。

例題支払家賃勘定と前払家賃勘定の記入

ナイトオウル交通は、営業所の家賃を毎年8月1日に1年分(360,000円)前払いしている。前期末には、4月〜7月の4か月分120,000円を前払家賃として計上した。会計期間は4月1日〜3月31日である。当期の支払家賃勘定と前払家賃勘定に記入し、締め切りなさい。

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当期の流れ
日付内容仕訳
4/1前期末の前払分の再振替支払家賃 120,000 / 前払家賃 120,000
8/11年分の家賃の支払い支払家賃 360,000 / 普通預金 360,000
3/31翌期4月〜7月分の繰延べ(360,000×4/12)前払家賃 120,000 / 支払家賃 120,000
3/31当期の費用を損益勘定へ振替損益 360,000 / 支払家賃 360,000
支払家賃
借方貸方
4/1 前払家賃120,0003/31 前払家賃120,000
8/1 普通預金360,0003/31 損益360,000
480,000480,000
前払家賃
借方貸方
4/1 前期繰越120,0004/1 支払家賃120,000
3/31 支払家賃120,0003/31 次期繰越120,000
240,000240,000
4/1 前期繰越120,000

当期の支払家賃は、120,000+360,000-120,000=360,000円(ちょうど12か月分)。費用の勘定(支払家賃)は損益に振り替えて締め切り、資産の勘定(前払家賃)は次期繰越で締め切って、翌期首に前期繰越を記入する(第19章)。

08貯蔵品 ― 使い残した切手と収入印紙

第14章で、郵便切手は購入時に通信費、収入印紙は租税公課として費用処理すると学んだ。だが、決算日に使わずに残っている切手や印紙は、来期に使える「資産」だ。そこで、未使用分を貯蔵品(資産)に振り替える。

例題貯蔵品(ナイトオウル交通)

決算日に、郵便切手8,400円分と収入印紙20,000円分が未使用で残っていた。

解答・解説を見る▼
仕訳3月31日:決算整理
借方科目金額貸方科目金額
貯蔵品28,400通信費8,400
租税公課20,000
仕訳翌期4月1日:再振替仕訳
借方科目金額貸方科目金額
通信費8,400貯蔵品28,400
租税公課20,000

※事務用品などの消耗品は、3級では購入時に「消耗品費」として費用処理し、期末に未使用分があっても原則として資産に振り替えない。貯蔵品に振り替えるのは、主に郵便切手・収入印紙など、換金性の高いものである。

THINK ― 判断してみよう

「2か月分無料」の年払いキャンペーンは、本当に得なのか?

年払いプランは、通常価格の約17%引きだ。会計上は売上が来期に繰り延べられ、今期の業績にはほとんど貢献しない。社長は「割引しただけで、会社は損をしたのでは?」と不安になってきた。あなたなら、このキャンペーンをどう評価するか?

考え方の例を見る▼

損得は、会計上の利益だけでなく、お金の流れと顧客の行動で評価する。

  • 資金面の効果:3月に2億3,940万円の現金が一度に入った。この資金を新店のマシン投資に使えば、銀行から借りる必要がなくなり、利息を節約できる。17%の割引は、「1年分の前払いを受けるための金利」とも考えられる。これは銀行借入の金利よりずっと高い。だから、資金が本当に必要な場合に限って、割引の価値がある。
  • 解約率の改善:月払いの会員は、毎月やめる自由がある。年払いの会員は、少なくとも1年は在籍する。月払いの会員の平均在籍期間が、たとえば8か月なら、年払いで12か月在籍してもらうことは、割引後の会費でも売上を増やす効果がある。
  • リスク:前受収益は返金義務を伴う負債だ。集めたお金をすべて使い切ると、店舗の休業などで返金が必要になったときに資金が足りなくなる(第9章の前受金と同じ構造)。

結論は、「年払いの会員の継続率と、調達した資金の使い道まで含めて判断すべき」だ。会計上の売上が繰り延べられること自体は、損でも得でもない。それは単に、正しい時期に正しく計上されるというだけのことである。

09確認問題

問1決算日は3月31日である。次の決算整理仕訳をしなさい。

(1) 9月1日に1年分の保険料360,000円を支払い、全額を保険料として処理している。

(2) 12月1日に6か月分の地代180,000円を受け取り、全額を受取地代として処理している。

(3) 借入金2,000,000円(年利率3%)の利息は、毎年12月31日に1年分を後払いしている。当期の1月1日〜3月31日の利息を見越し計上する。

(4) 3月分の家賃120,000円をまだ受け取っていない。

(5) 郵便切手3,000円分と収入印紙10,000円分が未使用で残っている。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 前払分は4月〜8月の5か月:360,000×5/12=150,000円
借方科目金額貸方科目金額
前払保険料150,000保険料150,000
仕訳(2) 前受分は4月〜5月の2か月:180,000×2/6=60,000円
借方科目金額貸方科目金額
受取地代60,000前受地代60,000
仕訳(3) 3か月分:2,000,000×3%×3/12=15,000円
借方科目金額貸方科目金額
支払利息15,000未払利息15,000
仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
未収家賃120,000受取家賃120,000
仕訳(5)
借方科目金額貸方科目金額
貯蔵品13,000通信費3,000
租税公課10,000

問2問1の(1)について、翌期首の再振替仕訳をしなさい。また、翌期の9月1日に再び1年分の保険料360,000円を支払ったとすると、翌期の決算整理後の保険料勘定の残高はいくらになるか。

解答・解説を見る▼
仕訳翌期4月1日:再振替仕訳
借方科目金額貸方科目金額
保険料150,000前払保険料150,000

翌期の保険料:再振替150,000円+9月1日の支払い360,000円-翌期末の前払分150,000円=360,000円(ちょうど12か月分)

問3次の(1)〜(4)の下線部の勘定科目として、正しいものを語群から選びなさい。

(1) パソコンを購入し、代金は翌月払いとした。→ __ (2) 決算日に、当月分の給料が未払いだった。→ __ (3) 商品の内金を受け取った。→ __ (4) 決算日に、来期分の家賃を受け取っていた。→ __

語群:未払金、未払費用(未払給料)、前受金、前受収益(前受家賃)

解答・解説を見る▼

(1) 未払金 (2) 未払給料(未払費用) (3) 前受金 (4) 前受家賃(前受収益)

期中の個別取引から生じるのが未払金・前受金、継続的なサービスの契約について決算で調整するのが未払費用・前受収益だ。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓会計は発生主義。収益は価値を提供したとき、費用は価値を費やしたときに計上する
  • ✓繰延べ:前払費用(資産)・前受収益(負債)は、当期の費用・収益から来期分を取り除く
  • ✓見越し:未払費用(負債)・未収収益(資産)は、まだお金が動いていない当期分を計上する
  • ✓翌期首には、決算整理仕訳の逆の再振替仕訳を行い、二重計上を防ぐ
  • ✓未使用の切手・収入印紙は貯蔵品(資産)に振り替える
  • ✓前受けの売上を受取時に全額計上するのは、粉飾の王道。経過勘定は「いつの売上か」を厳格に区切るための仕組みである

第7部 決算

第16章帳簿の体系・伝票・証ひょう・訂正仕訳

3年間見つからなかった横領は、なぜ「1枚の紙」で暴かれたのか?

帳簿は、記録するためだけにあるのではない。取引を複数の帳簿と書類で照らし合わせることで、誤りと不正をあぶり出す「網」でもある。補助簿の体系、伝票、証ひょう、そして誤りを正す訂正仕訳を学ぶ。

読了目安 40分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸主要簿と補助簿の体系を理解し、取引ごとに記入する補助簿を判断できる
  • ▸入金伝票・出金伝票・振替伝票を起票できる(一部現金取引を含む)
  • ▸仕訳日計表を作成し、その役割を理解する
  • ▸請求書・領収書・通帳などの証ひょうから仕訳ができる
  • ▸誤った仕訳を訂正する訂正仕訳ができる
この章の目次▼
  1. 01帳簿の体系 ― 主要簿と補助簿
  2. 02取引ごとに、どの補助簿に記入するか
  3. 03伝票 ― 仕訳を「1取引1枚」の紙に書く
  4. 04証ひょう ― 取引の「証拠」から仕訳を起こす
  5. 05訂正仕訳 ― 間違えた仕訳の直し方
  6. 06答え合わせ ― 3つの書類の「照合」が網になる
  7. 07確認問題

QUESTION ― この章の問い

実在しない八百屋に、3年間で2,100万円

おかわり堂の本部経理部に、勤続15年のベテランがいた。仕入代金の支払いを一手に任され、誰よりも数字に詳しく、誰からも信頼されていた。

新しい財務担当役員が着任して3か月後、そのベテランによる横領が発覚した。手口はこうだ。実在しない野菜の卸売業者「丹波青果」の名前で請求書を偽造し、仕入代金として、自分が管理する口座に振り込む。1回あたり数十万円。年商13億円、仕入だけで年4億円を超える会社の中では、誰も気づかない金額だった。

3年間で、被害額は2,100万円に達していた。

3年間、税理士の決算チェックでも見つからなかった不正。それが、新任の財務担当役員が導入した、ある「たった1枚の紙」の照合ルールによって、わずか3か月で暴かれた。その紙とは何だったのか?

01帳簿の体系 ― 主要簿と補助簿

これまでの章で、さまざまな帳簿が登場した。ここで全体を整理しておこう。

帳簿の体系
分類帳簿役割
主要簿仕訳帳すべての取引を日付順に仕訳する
主要簿総勘定元帳すべての取引を勘定科目ごとに集計する
補助記入帳現金出納帳・当座預金出納帳・小口現金出納帳現金・預金の入出金の明細を記録する
補助記入帳仕入帳・売上帳仕入・売上の取引の明細を記録する
補助記入帳受取手形記入帳・支払手形記入帳手形の明細を記録する
補助元帳売掛金元帳・買掛金元帳取引先ごとの売掛金・買掛金を記録する
補助元帳商品有高帳商品の種類ごとの受入・払出・残高を記録する
補助元帳固定資産台帳固定資産を1つずつ管理する

主要簿は、すべての取引を記録する「骨格」だ。補助簿は、特定の取引や勘定の明細を記録する「詳細」である。補助簿のうち、取引の明細を発生順に記録するものを補助記入帳、特定の勘定の内訳を項目別に記録するものを補助元帳という。

02取引ごとに、どの補助簿に記入するか

試験の第2問では、「この取引は、どの補助簿に記入されるか」を問う問題がよく出る。解き方のコツは、まず仕訳を書き、仕訳に登場した勘定科目ごとに対応する補助簿を探すことだ。

勘定科目と補助簿の対応
仕訳に登場する勘定科目記入する補助簿
現金現金出納帳
当座預金当座預金出納帳
小口現金小口現金出納帳
仕入仕入帳 + 商品有高帳
売上売上帳 + 商品有高帳
売掛金売掛金元帳
買掛金買掛金元帳
受取手形受取手形記入帳
支払手形支払手形記入帳
建物・備品・車両運搬具・土地固定資産台帳

例題補助簿の選択

次の取引が記入される補助簿をすべて答えなさい。

(1) 商品400,000円を仕入れ、代金のうち半額は約束手形を振り出し、残額は掛けとした。

(2) 商品250,000円を売り上げ、代金は得意先振出の小切手で受け取った。

(3) 掛けで仕入れた商品のうち、20,000円を品違いのため返品した。

(4) 業務用の冷蔵庫300,000円を購入し、代金は翌月末に支払うこととした。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
仕入400,000支払手形200,000
買掛金200,000

→ 仕入帳、商品有高帳、支払手形記入帳、買掛金元帳

仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
現金250,000売上250,000

→ 現金出納帳、売上帳、商品有高帳

仕訳(3)
借方科目金額貸方科目金額
買掛金20,000仕入20,000

→ 仕入帳、商品有高帳、買掛金元帳(返品も、仕入帳と商品有高帳に記入する)

仕訳(4)
借方科目金額貸方科目金額
備品300,000未払金300,000

→ 固定資産台帳のみ(未払金には補助簿がない)

03伝票 ― 仕訳を「1取引1枚」の紙に書く

実務では、仕訳帳に直接仕訳を書く代わりに、取引ごとに伝票という紙片(またはシステムの入力画面)に仕訳を書くことが多い。伝票なら、1枚ずつ担当者が分担して作成し、上司が承認し、証拠書類と一緒に保管できる。

3級では、3種類の伝票を使う3伝票制を学ぶ。

3伝票制
伝票使う取引記入のしかた
入金伝票現金が増える取引借方は必ず「現金」なので、貸方の勘定科目と金額だけを書く
出金伝票現金が減る取引貸方は必ず「現金」なので、借方の勘定科目と金額だけを書く
振替伝票現金が動かない取引借方・貸方の両方を書く(ふつうの仕訳と同じ)
起票の例(おかわり堂・本部)
取引伝票記入する内容
学会の弁当代100,000円を現金で受け取った入金伝票売上 100,000
店舗の消耗品5,000円を現金で購入した出金伝票消耗品費 5,000
牛肉300,000円を掛けで仕入れた振替伝票仕入 300,000 / 買掛金 300,000

一部現金取引 ― 2つの起票方法

1つの取引の中に、現金の部分とそうでない部分が混ざっていることがある。たとえば「商品300,000円を売り上げ、100,000円は現金で受け取り、残額は掛けとした」。これを一部現金取引という。起票の方法は2つある。

例題一部現金取引の起票

商品300,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は現金で受け取り、残額は掛けとした。2つの方法で起票しなさい。

解答・解説を見る▼

方法①:取引を分解して起票する

現金で受け取った部分と、掛けの部分に分けて、2枚の伝票を書く。

仕訳入金伝票(借方は現金)
借方科目金額貸方科目金額
現金100,000売上100,000
仕訳振替伝票
借方科目金額貸方科目金額
売掛金200,000売上200,000

方法②:いったん全額を掛け取引とみなして起票する

全額をいったん掛けで売り上げたと考え、その直後に掛け代金の一部を現金で回収したと考える。

仕訳振替伝票(全額を掛けとみなす)
借方科目金額貸方科目金額
売掛金300,000売上300,000
仕訳入金伝票(掛け代金の一部を回収)
借方科目金額貸方科目金額
現金100,000売掛金100,000

どちらの方法でも、2枚の伝票を合計すると「現金100,000・売掛金200,000/売上300,000」になる。試験では、すでに記入されている伝票(たとえば入金伝票の科目が「売上」か「売掛金」か)から、どちらの方法で起票したのかを判断させる問題が出る。

仕訳日計表 ― 1日分の伝票を集計する

伝票は1日に何十枚、何百枚と作られる。1枚ずつ総勘定元帳に転記していては手間がかかりすぎる。そこで、1日分の伝票を勘定科目ごとに集計した仕訳日計表を作り、その合計額を総勘定元帳にまとめて転記する。

例題仕訳日計表の作成

ある日の伝票は次の5枚だった。仕訳日計表を作成しなさい。

入金伝票:売上 120,000 / 入金伝票:売掛金 80,000 / 出金伝票:仕入 50,000 / 出金伝票:旅費交通費 3,000 / 振替伝票:仕入 200,000 / 買掛金 200,000

解答・解説を見る▼
仕訳日計表
借方勘定科目貸方
200,000現金53,000
売掛金80,000
買掛金200,000
売上120,000
250,000仕入
3,000旅費交通費
453,000合計453,000
  • 現金の借方は、入金伝票の合計(120,000+80,000)。貸方は、出金伝票の合計(50,000+3,000)。
  • 仕入の借方は、出金伝票50,000円と振替伝票200,000円の合計。
  • 借方合計と貸方合計は必ず一致する(貸借平均の原理)。

04証ひょう ― 取引の「証拠」から仕訳を起こす

証ひょう(しょうひょう)とは、取引の事実を証明する書類のことだ。納品書、請求書、領収書、振込依頼書、銀行の通帳や当座勘定照合表などがある。経理担当者は、証ひょうにもとづいて仕訳を起こす。証ひょうのない仕訳は、原則として認められない。

主な証ひょう
証ひょう内容仕訳のヒント
納品書商品やサービスを納めたことを示す仕入・売上の数量と金額
請求書代金の支払いを求める掛けの金額、消費税、支払期日
領収書代金を受け取ったことを示す現金などで支払った費用
振込依頼書銀行での振込を依頼する支払いと振込手数料
通帳・当座勘定照合表口座の入出金の記録入金・引落しの内容

例題請求書から仕訳を起こす

おかわり堂は、厨房機器メーカーから業務用冷凍庫を購入し、次の請求書を受け取った。代金は翌月末に支払う。消費税は税抜方式で処理する。

請求書(株式会社おかわり堂 御中)
品名数量単価金額
業務用冷凍庫 FZ-9001600,000600,000
配送・設置費120,00020,000
小計620,000
消費税(10%)62,000
合計682,000
解答・解説を見る▼
仕訳配送・設置費は取得原価に含める。後払いなので未払金
借方科目金額貸方科目金額
備品620,000未払金682,000
仮払消費税62,000

冷凍庫は商品ではなく備品なので、買掛金ではなく未払金(第9章)。配送・設置費は付随費用として備品の取得原価に含める(第12章)。消費税は仮払消費税(第14章)。1枚の請求書に、これまでの章の知識が詰まっている。

例題通帳の記録から仕訳を起こす

洛北ミートの普通預金の通帳に、次の記録があった。

普通預金 入出金明細
日付摘要お支払金額お預り金額
10/31振込 ヤキニクホムラ720,000
10/31振込 チクサンカイシャB600,000
10/31振込手数料660

焼肉店「炎」は得意先(売掛金)、畜産会社Bは仕入先(買掛金)である。

解答・解説を見る▼
仕訳得意先からの入金は売掛金の回収
借方科目金額貸方科目金額
普通預金720,000売掛金720,000
仕訳仕入先への振込と、振込手数料
借方科目金額貸方科目金額
買掛金600,000普通預金600,660
支払手数料660

05訂正仕訳 ― 間違えた仕訳の直し方

帳簿に誤った仕訳を記録してしまったことが分かったら、誤った記録を消しゴムで消したり、上書きしたりしてはいけない。誤りを正すための新たな仕訳、訂正仕訳を記録する。

訂正仕訳の3ステップ

  1. 1

    誤った仕訳の「逆仕訳」を書く

    誤った記録を取り消す

  2. 2

    正しい仕訳を書く

    本来あるべき記録を加える

  3. 3

    2つを合算して、相殺できる部分を消す

    同じ勘定科目が借方と貸方にあれば相殺し、最小限の仕訳にまとめる

例題訂正仕訳

次の誤りを訂正する仕訳をしなさい。

(1) 店舗用の冷蔵庫(備品)150,000円を掛けで購入した際に、「仕入/買掛金」と処理していた。

(2) 得意先から売掛金98,000円が普通預金に振り込まれた際に、金額を89,000円と記録していた。

解答・解説を見る▼

(1)

仕訳① 誤った仕訳の逆仕訳
借方科目金額貸方科目金額
買掛金150,000仕入150,000
仕訳② 正しい仕訳
借方科目金額貸方科目金額
備品150,000未払金150,000
仕訳③ 訂正仕訳(①と②を合わせたもの。相殺できる科目はない)
借方科目金額貸方科目金額
備品150,000仕入150,000
買掛金150,000未払金150,000

(2) 正しい金額98,000円と、記録した89,000円の差額9,000円だけを追加すればよい。

仕訳訂正仕訳(不足していた9,000円を追加)
借方科目金額貸方科目金額
普通預金9,000売掛金9,000

06答え合わせ ― 3つの書類の「照合」が網になる

ANSWER ― 答え合わせ

請求書はあった。だが「納品書」と「受入の記録」がなかった

新任の財務担当役員が導入したルールは、シンプルなものだった。

「仕入代金を支払う前に、発注書・納品書・請求書の3つと、店舗の商品の受入記録を突き合わせ、すべて一致したものだけを支払う」

ベテランが偽造したのは、請求書だけだった。架空の「丹波青果」は実在しないので、店舗には野菜が1箱も届いていない。当然、店舗が作成する納品書の控えもなければ、商品の受入記録もない。

導入から3か月後、照合を担当した新人が気づいた。「丹波青果さんの請求書だけ、どの店舗にも納品書がありません」。

3年間、不正が見つからなかったのは、請求書の作成から支払いまでを、1人で完結できる仕組みだったからだ。帳簿の数字の合計はいつも合っていた。架空の仕入れは、「仕入/普通預金」という形式的には完璧な仕訳として記録されていたからだ。

不正を暴いたのは、帳簿の数字ではない。異なる部署が作る複数の証ひょうを照らし合わせる仕組みだった。複式簿記が「2つの側面」で記録の誤りを見つけるように、証ひょうの照合は「複数の書類」で取引の嘘を見つける。

THINK ― 判断してみよう

支払いの不正を防ぐ仕組みを設計せよ

横領事件を受けて、社長から「二度と同じことが起きない仕組みを作ってほしい」と依頼された。ただし、経理部の人数は増やせない。あなたなら、どんな仕組みを設計するか?

考え方の例を見る▼

ポイントは、「人を増やす」のではなく「1人で完結できない流れを作る」ことだ。

  • 3点照合の徹底:発注書・納品書(受入記録)・請求書が一致しない支払いは、システム上で実行できないようにする。
  • 取引先マスタの管理:新しい取引先の登録や振込口座の変更は、支払担当者ではなく、別の担当者の承認を必須にする。架空の取引先の登録を入口で止める。
  • 支払いの二重承認:振込データを作る人と、銀行で承認する人を分ける。一定額以上の支払いは、財務担当役員の承認を必須にする。
  • 月次の分析:取引先ごと・店舗ごとの仕入額の推移を毎月チェックし、売上に比べて不自然に増えている取引先や、実態のよく分からない取引先を洗い出す。
  • 担当替えと休暇:支払担当を定期的にローテーションし、年に1回は連続休暇を取らせる。

内部統制の目的は、社員を疑うことではない。誠実な社員が、疑われずに済む仕組みを作ることである。

07確認問題

問1次の取引が記入される補助簿をすべて答えなさい。

(1) 得意先に商品180,000円を売り上げ、代金は掛けとした。

(2) 買掛金250,000円を支払うため、小切手を振り出した。

(3) 売掛金300,000円を、得意先振出の約束手形で回収した。

解答・解説を見る▼

(1) 売上帳、商品有高帳、売掛金元帳

(2) 当座預金出納帳、買掛金元帳

(3) 受取手形記入帳、売掛金元帳

問2商品500,000円を仕入れ、代金のうち200,000円は現金で支払い、残額は掛けとした。この取引を、(1)取引を分解する方法と、(2)全額を掛け取引とみなす方法で起票しなさい(伝票の種類と記入内容を答える)。

解答・解説を見る▼

(1) 分解する方法

出金伝票:仕入 200,000

振替伝票:仕入 300,000 / 買掛金 300,000

(2) 全額を掛けとみなす方法

振替伝票:仕入 500,000 / 買掛金 500,000

出金伝票:買掛金 200,000

問3次の誤りを訂正する仕訳をしなさい。

(1) 事務用のパソコン(備品)50,000円を現金で購入した際に、「消耗品費」で処理していた。

(2) 売掛金の回収として得意先振出の小切手75,000円を受け取った際に、「当座預金/売掛金」と処理していた(受け取った小切手はまだ預け入れていない)。

解答・解説を見る▼
仕訳(1) 逆仕訳「現金/消耗品費」と正しい仕訳「備品/現金」を合算し、現金を相殺
借方科目金額貸方科目金額
備品50,000消耗品費50,000
仕訳(2) 逆仕訳「売掛金/当座預金」と正しい仕訳「現金/売掛金」を合算し、売掛金を相殺
借方科目金額貸方科目金額
現金75,000当座預金75,000

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓帳簿は主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)と補助簿(補助記入帳・補助元帳)からなる
  • ✓補助簿の選択は「仕訳を書き、勘定科目ごとに対応する帳簿を探す」
  • ✓3伝票制:入金伝票(借方は現金)、出金伝票(貸方は現金)、振替伝票(現金なし)。一部現金取引は2つの起票方法がある
  • ✓仕訳日計表で1日分の伝票を集計し、合計を総勘定元帳に転記する
  • ✓証ひょう(請求書・領収書・通帳など)にもとづいて仕訳を起こす。証ひょうの照合は不正を防ぐ網になる
  • ✓訂正仕訳は「逆仕訳+正しい仕訳」を合算して相殺する

第7部 決算

第17章試算表(合計試算表・残高試算表・合計残高試算表)

1,000件の仕訳に紛れた、たった1つのミスをどう見つけるか?

月末の試算表が、9,000円合わない。新人は徹夜で1,000件の仕訳を見直し、ベテランは5分で原因を突き止めた。貸借平均の原理を使った自己検証の道具、試算表の作り方と、プロのミスの探し方を学ぶ。

読了目安 30分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸試算表の目的(記録の検証と全体像の把握)を理解する
  • ▸合計試算表・残高試算表・合計残高試算表を作成できる
  • ▸試算表が一致しないときに、差額から誤りの原因を推理できる
  • ▸試算表では発見できない誤りを説明できる
この章の目次▼
  1. 01試算表 ― 帳簿の「健康診断」
  2. 02試算表の3つの形
  3. 03試算表の作り方
  4. 04答え合わせ ― 差額は、ミスの「指紋」を残している
  5. 05試算表では見つからない誤り
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

新人は徹夜し、ベテランは5分で見つけた

10月の月末。洛北ミートの経理部で、入社1年目の谷口が青ざめていた。

月次の残高試算表を作ったところ、借方の合計と貸方の合計が一致しない。差額は9,000円。貸方のほうが少ない。

この1か月の仕訳は約1,000件。谷口は、仕訳帳と総勘定元帳を1行ずつ突き合わせ始めた。夜10時を過ぎても、原因は見つからない。

翌朝、出社したベテランの島田は、谷口の差額のメモを一目見るなり言った。

「9,000円か。9で割り切れるね。数字の並びが逆になっているところを探してごらん。たぶん、売掛金の貸方だ」

5分後、島田の言葉どおりの場所から、ミスが見つかった。

なぜ島田は、差額を見ただけで、ミスの種類と場所まで言い当てられたのか?

01試算表 ― 帳簿の「健康診断」

試算表(しさんひょう)とは、総勘定元帳のすべての勘定の金額を1つの表に集めたものだ。英語では Trial Balance(T/B)と呼ぶ。

試算表には、2つの目的がある。

試算表の2つの目的
目的内容
①記録の検証貸借平均の原理により、借方合計と貸方合計は必ず一致する。一致しなければ、仕訳や転記のどこかに誤りがある
②全体像の把握すべての勘定の残高が1枚にまとまるので、月末や期末の時点の財産と損益の状況が一目で分かる。決算の出発点にもなる

第2章で学んだとおり、すべての仕訳は借方と貸方が同額で、それを転記するのだから、すべての勘定の借方の合計と貸方の合計は必ず一致する。試算表は、この性質を使って帳簿の正しさを確かめる、いわば帳簿の健康診断だ。

02試算表の3つの形

試算表には、何を集めるかによって3つの形がある。

試算表の種類
種類集める金額特徴
合計試算表各勘定の借方合計と貸方合計取引の総量が分かる。転記の検証に向く
残高試算表各勘定の残高(借方残高または貸方残高)財産と損益の状態が分かる。決算で使う
合計残高試算表合計と残高の両方両方の情報を1枚で示す

具体例で見てみよう。IRONWORKS 24の京都本店の4月末の総勘定元帳から、合計残高試算表を作ると次のようになる。

合計残高試算表(IRONWORKS 24 京都本店・4月30日)
借方残高借方合計勘定科目貸方合計貸方残高
430,0001,250,000現金820,000
1,500,0003,600,000普通預金2,100,000
440,0001,940,000クレジット売掛金1,500,000
6,000,0006,000,000備品
300,000未払金800,000500,000
200,000借入金4,000,0003,800,000
資本金3,000,0003,000,000
繰越利益剰余金820,000820,000
売上2,000,0002,000,000
900,000900,000給料
600,000600,000支払家賃
180,000180,000水道光熱費
60,00060,000支払手数料
10,00010,000支払利息
10,120,00015,040,000合計15,040,00010,120,000

表は横にスクロールできます →

※中央の2列(借方合計・貸方合計)だけを取り出したものが合計試算表、両端の2列(借方残高・貸方残高)だけを取り出したものが残高試算表だ。合計の列には、月初の残高(前月繰越)も含まれている。

借方残高 10,120,000円
貸方残高 10,120,000円
資産
8,370,000円
費用
1,750,000円
負債
4,300,000円
純資産
3,820,000円
収益
2,000,000円
残高試算表の構造(IRONWORKS 24 京都本店・4月30日)

03試算表の作り方

試算表を作成する手順

  1. 1

    総勘定元帳の各勘定の借方合計・貸方合計を計算する

    前月繰越(期首の残高)も忘れずに含める

  2. 2

    合計試算表に記入する

    各勘定の借方合計・貸方合計をそのまま写す

  3. 3

    残高を計算する

    借方合計と貸方合計の差額を、大きいほうの側に記入する

  4. 4

    縦に合計し、貸借の一致を確かめる

    合計試算表・残高試算表それぞれで、借方合計=貸方合計になっているか検算する

04答え合わせ ― 差額は、ミスの「指紋」を残している

ANSWER ― 答え合わせ

差額9,000円が「9で割り切れる」ことの意味

島田が使ったのは、試算表の差額からミスの種類を推理する、経理のプロの定石だ。

差額からミスを推理する3つの定石
差額の特徴疑われるミス例
差額そのものの金額の取引がある一方の側への転記漏れ借方に9,000円を転記し忘れた
差額の半分の金額の取引がある貸借を逆に転記した借方に転記すべき4,500円を貸方に転記した(差額は2倍の9,000円になる)
差額が9で割り切れる数字の並びの入れ替え・桁違い98,000円を89,000円と転記した、1,000円を10,000円と転記した

数字の並び(隣り合う桁)を入れ替えたり、桁を1つずらしたりした誤りでは、正しい金額と誤った金額の差が、必ず9の倍数になる。たとえば98,000と89,000の差は9,000、1,000と10,000の差も9,000だ。

差額が9,000円で、貸方のほうが少ない。だから島田は、「貸方に、本来より9,000円少なく転記された金額がある。おそらく数字の入れ替えだ」と推理した。そして、月末に大口の入金が集中する売掛金の貸方から探すよう指示したのだ。

実際、得意先から振り込まれた売掛金98,000円の仕訳は正しく記録されていたが、売掛金勘定の貸方に転記する際に、89,000円と数字の並びを逆にして書き写していた。

1,000件の仕訳を総当たりで調べる前に、差額という「指紋」から容疑者を絞り込む。これが、プロとアマチュアの差である。

05試算表では見つからない誤り

ただし、試算表は万能ではない。貸借の金額が同じように狂う誤りは、試算表の貸借が一致してしまうため、発見できない。

試算表で発見できない誤り
誤りの種類例発見できない理由
仕訳そのものの記録漏れ取引を1件まるごと記録し忘れた借方にも貸方にも記録がないので、貸借はそろう
仕訳の二重記録同じ取引を2回記録した借方も貸方も同額ずつ多くなる
勘定科目の誤り未払金とすべきところを買掛金で記録した金額は正しく、貸借はそろう
貸借逆の仕訳「現金/売上」を「売上/現金」と記録した借方・貸方の合計はそれぞれ同額のまま
貸借両方の同じ金額の誤り98,000円の取引を、仕訳の段階で89,000円と記録した借方も貸方も同じように少なくなる
誤りの相殺借方で1,000円多く、別の借方で1,000円少なく転記した誤りが打ち消し合う

THINK ― 判断してみよう

月次の試算表は、何日で出すべきか

おかわり堂では、これまで月次の試算表が完成するのは、翌月の25日ごろだった。第5章の牛肉の在庫の件で痛い目を見た社長は、こう言った。「月末から1か月近くたってから数字を見ても、手遅れだ」。あなたなら、月次の試算表をいつまでに、どうやって出す体制を作るか?

考え方の例を見る▼

目標は「翌月5営業日以内」だ。数字は鮮度が命である。牛肉の原価率の急上昇も、資金繰りの悪化も、早く気づけば打てる手が増える。

そのための主な施策は次のとおりだ。

  • 日次で記帳する:伝票や証ひょうを月末にまとめて処理するのをやめ、毎日入力する。POSレジや銀行の入出金データは、会計システムに自動で取り込む。
  • 締め日のルールを決める:店舗からの請求書・納品書の提出期限を「翌月2営業日」など明確に決める。
  • 見積りを許容する:月末に金額が確定しない費用(光熱費など)は、合理的な見積額で計上し、確定後に差額を調整する。月次の数字は、速さと正確さのバランスが大事だ。
  • 月次の決算整理を行う:主要食材の月末在庫を数え(月次棚卸し)、減価償却費や賞与などの月割額も毎月計上する。これで、月次の試算表が「本当の月次の損益」を表すようになる。
  • 差額の放置をしない:試算表の差額や現金過不足は、その月のうちに必ず原因を突き止める。

速く正確な月次決算は、経営の「計器盤」だ。計器盤の数字が1か月遅れていたら、どんな名パイロットでも墜落を避けられない。

06確認問題

問1次の総勘定元帳の借方合計・貸方合計をもとに、残高試算表を作成しなさい。

現金:借方600,000・貸方420,000/売掛金:借方800,000・貸方500,000/買掛金:借方300,000・貸方650,000/資本金:貸方300,000/売上:貸方600,000/仕入:借方570,000/給料:借方200,000

解答・解説を見る▼
残高試算表
借方残高勘定科目貸方残高
180,000現金
300,000売掛金
買掛金350,000
資本金300,000
売上600,000
570,000仕入
200,000給料
1,250,000合計1,250,000

各勘定の借方合計と貸方合計の差額を、大きいほうの側に記入する。最後に借方合計と貸方合計が1,250,000円で一致することを確かめる。

問2次の誤りのうち、試算表の作成によって発見できるものを1つ選びなさい。

ア.商品を掛けで売り上げた取引の仕訳を、まるごと記録し忘れた。

イ.買掛金の支払い50,000円を、買掛金勘定の借方に5,000円と転記した。

ウ.備品の購入代金の後払いを、未払金ではなく買掛金で仕訳した。

エ.同じ仕入取引を、2回仕訳して転記した。

解答・解説を見る▼

イ。借方だけが45,000円少なくなるので、試算表の貸借が一致しなくなる。差額45,000円は9で割り切れる(桁違いのミス)。ア・ウ・エは、貸借の金額がそろったままなので発見できない。

問3残高試算表の貸借差額が3,600円(貸方のほうが少ない)だった。考えられる原因を、差額の推理の定石を使って2つ挙げなさい。

解答・解説を見る▼

例:

  • 貸方に転記すべき3,600円の転記漏れ(差額そのもの)
  • 貸方に転記すべき1,800円を、借方に転記した(差額の半分)
  • 数字の入れ替え・桁違い(3,600は9で割り切れる)。たとえば、貸方に4,000円と転記すべきところを400円と転記した(差額3,600円)

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓試算表は、総勘定元帳の全勘定を1枚に集めた表。記録の検証と全体像の把握が目的
  • ✓合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の3種類がある。残高は、資産・費用が借方、負債・純資産・収益が貸方(評価勘定は貸方)
  • ✓試算表等式:資産+費用=負債+純資産+収益
  • ✓貸借が一致しないときは、差額そのもの・差額の半分・9の倍数から、ミスの種類を推理する
  • ✓記録漏れ・二重記録・勘定科目の誤り・貸借逆の仕訳などは、試算表では発見できない
  • ✓差額は埋めるものではなく、突き止めるもの。月次の試算表は、速く正確に出すことで経営判断に役立つ

第7部 決算

第18章決算整理と精算表

決算日の夜、会社の利益は書き換わる。

試算表の利益は312万円。一晩明けた決算書の利益は140万円。現金は1円も動いていない。決算整理という「最後の仕上げ」が、帳簿の記録を、その期の本当の姿に変える。これまでの全章の知識を総動員して、精算表を完成させよう。

読了目安 50分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸決算の手続きの全体像を理解する
  • ▸3級の決算整理事項をすべて仕訳できる
  • ▸8桁精算表を作成できる
  • ▸決算整理が利益にどう影響するかを説明できる
この章の目次▼
  1. 01決算 ― 1年間の記録を「通知表」に変える
  2. 023級の決算整理事項 ― これまでの全章の総復習
  3. 03ケーススタディ ― おかわり堂ケータリングの決算
  4. 04決算整理仕訳 ― 1つずつ確実に
  5. 05精算表 ― 決算の全体像を1枚で見渡す
  6. 06答え合わせ ― 決算整理は「真実の利益」への翻訳である
  7. 07月次決算をしている場合の決算整理
  8. 08確認問題

QUESTION ― この章の問い

一晩で消えた172万円

おかわり堂には、大学の学会や企業の研修会に仕出し弁当を届ける子会社がある。「おかわり堂ケータリング」。社員8名の小さな会社だ。

3月31日の夜。決算整理前の残高試算表を見た社長は、収益の合計から費用の合計を引いて、満足げにうなずいた。

「今期の利益は312万3,000円。上出来だ」

翌朝、経理担当者が完成させた決算書を見て、社長は目を疑った。当期純利益は140万円。わずか一晩で、172万3,000円が消えていた。

夜のうちに、何か大きな取引があったわけではない。誰も不正をしていない。現金も預金も、1円も動いていない。

それなのに、なぜ利益は書き換わったのか?

01決算 ― 1年間の記録を「通知表」に変える

期中の帳簿は、取引が起きるたびに、主にお金やモノの動きに合わせて記録されている。だが、それだけでは、その期間の本当の成績は分からない。売れ残った在庫は仕入に含まれたままだし、バスや設備の価値の目減りも、来期分まで払った保険料も、まだ反映されていない。

そこで期末に、帳簿の記録を、その期の正しい財政状態と経営成績を表す形に修正する。これが決算であり、その中心となる修正の手続きを決算整理という。

決算の手続きの流れ

  1. 1

    決算整理前残高試算表を作る

    期中の記録の正しさを確かめ、決算の出発点とする(第17章)

  2. 2

    決算整理事項を確認する

    在庫の棚卸し、減価償却、経過勘定など、修正すべき事項を洗い出す

  3. 3

    決算整理仕訳を行う

    修正を仕訳として記録し、総勘定元帳に転記する

  4. 4

    決算整理後残高試算表・精算表を作る

    修正後の残高を確かめ、財務諸表の下書きを作る

  5. 5

    帳簿を締め切る

    収益・費用を損益勘定に集め、当期純利益を繰越利益剰余金に振り替える(第19章)

  6. 6

    財務諸表を作る

    損益計算書と貸借対照表を完成させる(第19章)

023級の決算整理事項 ― これまでの全章の総復習

3級で出題される決算整理事項は、ほぼ次の表のとおりだ。そのすべてを、あなたはすでに学んでいる。

3級の主な決算整理事項
決算整理事項決算整理仕訳の形学んだ章
現金過不足の整理雑損(または正しい勘定)/現金過不足第3章
当座借越の振替当座預金/当座借越(または借入金)第4章
売上原価の算定仕入/繰越商品、繰越商品/仕入(売上原価の行で計算する場合は3本の仕訳)第5章
貸倒引当金の設定貸倒引当金繰入/貸倒引当金第11章
減価償却減価償却費/減価償却累計額第12章
月次決算をしている場合の減価償却など未計上の月の分だけを追加で計上本章
消費税の整理仮受消費税/仮払消費税・未払消費税第14章
法人税等の計上法人税、住民税及び事業税/仮払法人税等・未払法人税等第14章
経過勘定(前払・前受・未払・未収)前払〇〇/〇〇 など第15章
貯蔵品の振替貯蔵品/通信費・租税公課第15章
期中の未処理事項・誤りの訂正内容に応じて第9・16章

03ケーススタディ ― おかわり堂ケータリングの決算

では、問いの舞台となった、おかわり堂ケータリングの決算に取り組もう。会計期間は×7年4月1日〜×8年3月31日である。

決算整理前残高試算表(×8年3月31日)
借方勘定科目貸方
412,000現金
6,000現金過不足
当座預金150,000
5,357,000普通預金
2,800,000売掛金
240,000繰越商品
920,000仮払消費税
200,000仮払法人税等
4,200,000備品
2,400,000車両運搬具
500,000差入保証金
買掛金1,150,000
借入金2,000,000
仮受消費税1,860,000
貸倒引当金12,000
備品減価償却累計額1,200,000
車両運搬具減価償却累計額960,000
資本金5,000,000
繰越利益剰余金1,580,000
売上18,600,000
受取手数料60,000
9,500,000仕入
3,600,000給料
1,320,000支払家賃
240,000保険料
480,000水道光熱費
96,000通信費
85,000租税公課
186,000消耗品費
30,000支払利息
32,572,000合計32,572,000

表は横にスクロールできます →

決算整理事項
番号内容
1現金過不足6,000円(借方残高)のうち4,000円は、郵便切手の購入(通信費)の記入漏れと判明した。残額は原因不明のため雑損とする。
2当座預金の貸方残高150,000円は当座借越によるものであり、当座借越勘定に振り替える。
3期末商品棚卸高は280,000円である。売上原価は「仕入」の行で計算する。
4売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。
5有形固定資産について、定額法(残存価額ゼロ)により減価償却を行う(間接法)。備品のうち3,600,000円は耐用年数6年。残りの600,000円は×7年10月1日に購入した保冷配送ボックスで、耐用年数5年(月割計算)。車両運搬具は耐用年数5年。
6収入印紙の未使用分が12,000円ある。
7保険料240,000円は、×7年7月1日に1年分を支払ったものである。
8借入金2,000,000円(年利率3%)の利息は、毎年9月30日に1年分を後払いしている。当期の未払分を計上する。
9受取手数料のうち15,000円は、次期の分を前受けしたものである。
10消費税(税抜方式)の処理を行う。
11法人税等の金額は、税引前当期純利益の30%とする。

04決算整理仕訳 ― 1つずつ確実に

精算表に取りかかる前に、まず決算整理仕訳をすべて書き出す。これが、第3問を正確に解くための最大のコツだ。

仕訳1. 現金過不足の整理
借方科目金額貸方科目金額
通信費4,000現金過不足6,000
雑損2,000
仕訳2. 当座借越の振替
借方科目金額貸方科目金額
当座預金150,000当座借越150,000
仕訳3. 売上原価の算定(しーくりくりしー)
借方科目金額貸方科目金額
仕入240,000繰越商品240,000
繰越商品280,000仕入280,000
仕訳4. 貸倒引当金の設定:2,800,000×2%=56,000円、56,000-12,000=44,000円
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入44,000貸倒引当金44,000
仕訳5. 減価償却:備品 3,600,000÷6年=600,000円+600,000÷5年×6/12=60,000円、車両 2,400,000÷5年=480,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費1,140,000備品減価償却累計額660,000
車両運搬具減価償却累計額480,000
仕訳6. 貯蔵品への振替
借方科目金額貸方科目金額
貯蔵品12,000租税公課12,000
仕訳7. 前払保険料:×8年4月1日〜6月30日の3か月分 240,000×3/12=60,000円
借方科目金額貸方科目金額
前払保険料60,000保険料60,000
仕訳8. 未払利息:×7年10月1日〜×8年3月31日の6か月分 2,000,000×3%×6/12=30,000円
借方科目金額貸方科目金額
支払利息30,000未払利息30,000
仕訳9. 前受手数料
借方科目金額貸方科目金額
受取手数料15,000前受手数料15,000
仕訳10. 消費税の整理
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税1,860,000仮払消費税920,000
未払消費税940,000

法人税等(11)は、税引前当期純利益が確定してから計算する。それには精算表を完成させる必要がある。

05精算表 ― 決算の全体像を1枚で見渡す

精算表は、決算整理前残高試算表から出発して、決算整理を加え、損益計算書と貸借対照表の数字までを1枚の表で作る作業表だ。3級で使うのは、試算表・修正記入・損益計算書・貸借対照表の各欄に借方・貸方がある8桁精算表である。

まず、法人税等を計上する前の損益計算書欄を集計すると、収益合計は18,645,000円(売上18,600,000+受取手数料45,000)、費用合計は16,645,000円。税引前当期純利益は2,000,000円だ。

仕訳11. 法人税等の計上:2,000,000×30%=600,000円、未払分は600,000-200,000=400,000円
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税600,000仮払法人税等200,000
未払法人税等400,000

これで、すべての修正がそろった。完成した精算表は次のとおりだ。

精算表(×8年3月31日)
勘定科目試算表修正記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金412,000412,000
現金過不足6,0006,000
当座預金150,000150,000
普通預金5,357,0005,357,000
売掛金2,800,0002,800,000
繰越商品240,000280,000240,000280,000
仮払消費税920,000920,000
仮払法人税等200,000200,000
備品4,200,0004,200,000
車両運搬具2,400,0002,400,000
差入保証金500,000500,000
買掛金1,150,0001,150,000
借入金2,000,0002,000,000
仮受消費税1,860,0001,860,000
貸倒引当金12,00044,00056,000
備品減価償却累計額1,200,000660,0001,860,000
車両運搬具減価償却累計額960,000480,0001,440,000
資本金5,000,0005,000,000
繰越利益剰余金1,580,0001,580,000
売上18,600,00018,600,000
受取手数料60,00015,00045,000
仕入9,500,000240,000280,0009,460,000
給料3,600,0003,600,000
支払家賃1,320,0001,320,000
保険料240,00060,000180,000
水道光熱費480,000480,000
通信費96,0004,000100,000
租税公課85,00012,00073,000
消耗品費186,000186,000
支払利息30,00030,00060,000
(試算表合計)32,572,00032,572,000
雑損2,0002,000
当座借越150,000150,000
貸倒引当金繰入44,00044,000
減価償却費1,140,0001,140,000
貯蔵品12,00012,000
前払保険料60,00060,000
未払利息30,00030,000
前受手数料15,00015,000
未払消費税940,000940,000
法人税、住民税及び事業税600,000600,000
未払法人税等400,000400,000
当期純利益1,400,0001,400,000
合計4,437,0004,437,00018,645,00018,645,00016,021,00016,021,000

表は横にスクロールできます →

※試算表欄の合計は、もとの勘定科目の行の直後に記入する。修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄の合計は、追加した行も含めた最終行に記入する。仮払消費税・仮受消費税・現金過不足・当座預金・仮払法人税等の行は、決算整理によって残高がゼロになるので、損益計算書欄にも貸借対照表欄にも金額が入らない。

06答え合わせ ― 決算整理は「真実の利益」への翻訳である

ANSWER ― 答え合わせ

172万3,000円は、11の「修正」に分解できる

社長が見た312万3,000円は、決算整理前の試算表の収益合計(18,660,000円)から費用合計(15,537,000円)を引いた数字だった。そこには、売れ残った在庫も、設備の価値の目減りも、税金も、まだ反映されていなかった。

決算整理が当期純利益に与えた影響
決算整理利益への影響
決算整理前の試算表で計算した利益3,123,000
売上原価の算定(期末在庫が期首より40,000円多い)40,000
減価償却費△1,140,000
貸倒引当金繰入△44,000
現金過不足の整理(通信費・雑損)△6,000
貯蔵品への振替12,000
前払保険料(来期分を費用から除く)60,000
未払利息(当期分を費用に加える)△30,000
前受手数料(来期分を収益から除く)△15,000
法人税、住民税及び事業税△600,000
当期純利益1,400,000

(当座借越の振替と消費税の整理は、資産・負債の間の振替なので、利益には影響しない。)

一晩で消えた172万3,000円の内訳のうち、最大のものは減価償却費の114万円だ。お金はとっくに支払っている設備の購入代金を、今期の負担分として費用に割り振ったのである。

決算整理で、新たにお金が動くことはない。だが、決算整理を経なければ、帳簿は「お金がどう動いたか」の記録にとどまり、「この1年でいくら稼いだのか」という問いには答えられない。決算整理とは、期中の記録を、発生主義と費用収益対応にもとづく真実の利益へと翻訳する作業なのだ。

07月次決算をしている場合の決算整理

第17章で見たように、多くの会社は1年に1回の決算だけでなく、毎月の月次決算で損益を把握している。その場合、減価償却費などは、年間の見込額を12か月で割った月割額を毎月計上していく。

すると、決算日の時点では、すでに11か月分(4月〜2月)が計上済みになっている。決算整理で計上するのは、まだ計上していない月(決算月)の分だけだ。

例題月次で減価償却費を計上している場合

建物の減価償却費は、年間見積額360,000円を月割で毎月計上している。決算整理前残高試算表の減価償却費は330,000円(4月〜2月の11か月分)である。決算月(3月)分も同様に計上する。決算整理仕訳をしなさい。

解答・解説を見る▼

月割額=360,000÷12=30,000円。計上済みの11か月分330,000円に、3月分を加える。

仕訳決算月の1か月分だけを追加計上する
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費30,000建物減価償却累計額30,000

損益計算書の減価償却費は、330,000+30,000=360,000円(12か月分)になる。ここで1年分の360,000円を計上してしまうと、11か月分が二重に計上されるので注意しよう。

THINK ― 判断してみよう

銀行の担当者「試算表と決算書で、なぜ利益がこんなに違うのですか?」

おかわり堂ケータリングは、毎月、メインバンクに月次の試算表を提出している。2月末の試算表を見て「今期は300万円を超える利益ですね」と言っていた銀行の担当者が、決算書を見て首をかしげた。「最終的な利益が140万円とは、ずいぶん減りましたね。何かあったのですか?」。あなたなら、どう説明し、今後どう改善するか?

考え方の例を見る▼

まず、上の表のように利益が減った理由を分解して説明する。最大の要因は減価償却費114万円と法人税等60万円であり、事業の実態が悪化したわけではないことを示す。特に減価償却費は「お金が出ていかない費用」なので、本業で生み出した現金(利益+減価償却費)は約254万円あることも、あわせて伝えるとよい。

そのうえで、月次の試算表の質を上げることを約束する。第17章で学んだように、減価償却費・賞与・法人税等の見込額を毎月月割で計上し、主要な在庫を月末に数えれば、月次の利益は年度末の利益とほぼ同じ基準で計算される。そうすれば、銀行も経営者も、1年中「本当の利益」を見ながら判断できる。

銀行が最も嫌うのは、利益が少ないことではなく、説明できない変動だ。数字の変化を、根拠をもって説明できる会社は、信頼される。

08確認問題

問1次の資料にもとづき、精算表の一部(繰越商品・仕入・貸倒引当金・保険料の各行)を完成させなさい。

試算表欄:繰越商品 借方50,000/仕入 借方400,000/貸倒引当金 貸方3,000/保険料 借方36,000

決算整理事項:(1) 期末商品棚卸高は60,000円。売上原価は「仕入」の行で計算する。(2) 売掛金の期末残高300,000円に対し2%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。(3) 保険料は当期の7月1日に1年分を支払ったもので、前払分を計上する(決算日は3月31日)。

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
仕入50,000繰越商品50,000
繰越商品60,000仕入60,000
仕訳(2) 300,000×2%=6,000円、6,000-3,000=3,000円
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入3,000貸倒引当金3,000
仕訳(3) 4月〜6月の3か月分 36,000×3/12=9,000円
借方科目金額貸方科目金額
前払保険料9,000保険料9,000
精算表(一部)
勘定科目試算表修正記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
繰越商品50,00060,00050,00060,000
貸倒引当金3,0003,0006,000
仕入400,00050,00060,000390,000
保険料36,0009,00027,000
貸倒引当金繰入3,0003,000
前払保険料9,0009,000

表は横にスクロールできます →

問2精算表で、損益計算書欄の借方合計(当期純利益を記入する前)が8,200,000円、貸方合計が8,750,000円だった。当期純利益はいくらで、精算表のどの欄に記入するか。

解答・解説を見る▼

当期純利益=8,750,000-8,200,000=550,000円。

損益計算書欄の借方と、貸借対照表欄の貸方に記入する。(費用より収益が多いので、損益計算書欄の借方に差額を記入して貸借をそろえる。貸借対照表欄では、純資産の増加として貸方に記入する。)

問3決算整理事項のうち、当期純利益に影響を与えないものを2つ選びなさい。

ア.当座預金の貸方残高を当座借越勘定に振り替える イ.減価償却費を計上する ウ.仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を未払消費税とする エ.保険料の前払分を計上する

解答・解説を見る▼

アとウ。どちらも資産・負債どうしの振替であり、収益・費用の勘定が登場しないので、当期純利益は変わらない。

問4備品の減価償却は、年間見積額144,000円を月割で毎月計上している(月次決算)。決算整理前残高試算表の減価償却費は132,000円である。決算月の分も同様に計上する。決算整理仕訳と、損益計算書に表示する減価償却費の金額を答えなさい。

解答・解説を見る▼

月割額=144,000÷12=12,000円。132,000円は11か月分なので、決算月の1か月分を計上する。

借方科目金額貸方科目金額
減価償却費12,000備品減価償却累計額12,000

損益計算書の減価償却費=132,000+12,000=144,000円

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓決算整理は、期中の記録を、その期の正しい財政状態と経営成績に修正する手続き
  • ✓3級の決算整理事項は、現金過不足・当座借越・売上原価・貸倒引当金・減価償却・消費税・法人税等・経過勘定・貯蔵品
  • ✓月次決算で毎月計上している費用は、決算では未計上の月の分だけを追加で計上する
  • ✓精算表は、試算表から損益計算書・貸借対照表までを1枚で作る作業表。同じ側なら足し、反対側なら引く
  • ✓当期純利益は損益計算書欄の借方と貸借対照表欄の貸方に記入する。両欄の差額の一致が検算になる
  • ✓決算整理で現金は動かない。だが、利益は「お金の動き」から「真実の利益」へと翻訳される
  • ✓第3問は、まず決算整理仕訳をすべて書き出してから解答する

第7部 決算

第19章帳簿の締切と財務諸表の作成

毎年3月31日、帳簿の半分は「消え」、半分は「生き残る」。なぜ?

決算の最後に、売上や給料の勘定はゼロに戻され、現金や借入金の勘定は次の期へ引き継がれる。帳簿を締め切る手続きと、損益計算書・貸借対照表の完成。1年間の記録の、最後の仕上げに取りかかろう。

読了目安 45分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸収益・費用を損益勘定に振り替え、当期純利益を繰越利益剰余金に振り替えられる
  • ▸英米式決算法で、資産・負債・純資産の勘定を締め切れる
  • ▸決算整理後残高試算表から、損益計算書と貸借対照表(勘定式)を作成できる
  • ▸財務諸表の表示科目のルールを使いこなせる
  • ▸2枚の財務諸表から、会社の収益性と安全性を読み取れる
この章の目次▼
  1. 012種類の勘定 ― 「フロー」と「ストック」
  2. 02決算振替 ― 収益と費用を「損益」に集める
  3. 03英米式決算法 ― 資産・負債・純資産を締め切る
  4. 04財務諸表の作成 ― 決算整理後残高試算表から
  5. 05財務諸表の表示ルール ― 「勘定科目」と「表示科目」は違う
  6. 06確認問題

QUESTION ― この章の問い

決算日の深夜、帳簿の半分が「ゼロ」になる

3月31日、深夜。おかわり堂ケータリングの経理担当者は、総勘定元帳を1ページずつ締め切っていた。

売上の勘定。1年間で1,860万円が積み上がった勘定に、彼女は最後の記入をして、残高をゼロにした。給料の勘定も、仕入の勘定も、支払家賃の勘定も、次々とゼロになっていく。1年分の記録が、帳簿の上から消えていく。

ところが、現金の勘定、売掛金の勘定、借入金の勘定、資本金の勘定は、ゼロにしない。残高に「次期繰越」と書き添えて、そのまま翌年のページへと引き継いでいく。

同じ総勘定元帳の中で、ある勘定は毎年ゼロに戻され、ある勘定は何十年も残高を引き継いでいく。この違いは、いったい何なのか? そして、ゼロにされた1年分の売上や費用は、どこへ消えたのか?

012種類の勘定 ― 「フロー」と「ストック」

問いの答えは、勘定の性質の違いにある。

では、ゼロにされた1年分の収益と費用はどこへ行くのか。答えは、損益という勘定を経由して、繰越利益剰余金へ流れ込む。

02決算振替 ― 収益と費用を「損益」に集める

帳簿の締切は、次の3つのステップで行う。第18章で決算整理を終えたおかわり堂ケータリングの数字で見ていこう。

収益・費用の締切の手順

  1. 1

    収益の勘定の残高を、損益勘定の貸方に振り替える

    売上や受取手数料の勘定は、借方に同額を書いてゼロになる

  2. 2

    費用の勘定の残高を、損益勘定の借方に振り替える

    仕入や給料の勘定は、貸方に同額を書いてゼロになる

  3. 3

    損益勘定の残高(当期純利益)を、繰越利益剰余金勘定に振り替える

    損益勘定もゼロになり、利益は純資産として次期へ引き継がれる

仕訳① 収益の勘定を損益勘定へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
売上18,600,000損益18,645,000
受取手数料45,000
仕訳② 費用の勘定を損益勘定へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
損益17,245,000仕入9,460,000
給料3,600,000
支払家賃1,320,000
保険料180,000
水道光熱費480,000
通信費100,000
租税公課73,000
消耗品費186,000
貸倒引当金繰入44,000
減価償却費1,140,000
支払利息60,000
雑損2,000
法人税、住民税及び事業税600,000
仕訳③ 当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える
借方科目金額貸方科目金額
損益1,400,000繰越利益剰余金1,400,000
損益
借方貸方
3/31 仕入9,460,0003/31 売上18,600,000
3/31 給料3,600,0003/31 受取手数料45,000
3/31 その他の費用4,185,000
3/31 繰越利益剰余金1,400,000
18,645,00018,645,000

※「その他の費用」は、支払家賃から法人税、住民税及び事業税までの11の費用(合計4,185,000円)を、紙面の都合でまとめたもの。実際の損益勘定には、勘定科目ごとに記入する。当期純損失の場合は、③が「繰越利益剰余金/損益」となる。

ANSWER ― 答え合わせ

消えた売上は、「純資産」の中で生きている

1年分の売上や費用の勘定がゼロになるのは、記録を捨てるためではない。その1年間の成績を損益勘定に集約し、差額である当期純利益だけを、純資産(繰越利益剰余金)として次期へ引き継ぐためだ。

売上1,860万円も、仕入946万円も、給料360万円も、個々の勘定としては消える。だが、それらが生み出した「140万円の利益」という成果は、繰越利益剰余金の中に積み上がり、会社の財産として生き続ける。

毎年リセットされるフローの勘定と、永遠に引き継がれるストックの勘定。その2つをつなぐ唯一の橋が、損益勘定から繰越利益剰余金への振替なのだ。おかわり堂ケータリングの繰越利益剰余金は、創業以来の利益の蓄積である158万円に、今期の140万円が加わり、298万円になった。

03英米式決算法 ― 資産・負債・純資産を締め切る

資産・負債・純資産の勘定は、残高を次期に繰り越して締め切る。3級では、仕訳をせずに、勘定の上で直接「次期繰越」と記入して締め切る英米式決算法を学ぶ。

英米式決算法による締切

  1. 1

    残高の反対側に「次期繰越」と記入する

    資産の勘定(借方残高)なら貸方に、負債・純資産の勘定(貸方残高)なら借方に、残高と同額を「次期繰越」として記入する(実務では赤字で書く)

  2. 2

    借方と貸方の合計を一致させて締め切る

    合計額を記入し、二重線を引いて締め切る

  3. 3

    翌期首に「前期繰越」と記入する

    次期の最初の日付で、もとの側に「前期繰越」として残高を記入する(開始記入)

現金
借方貸方
4/1 前期繰越380,000期中の支払い2,968,000
期中の入金3,000,0003/31 次期繰越412,000
3,380,0003,380,000
4/1 前期繰越412,000
繰越利益剰余金
借方貸方
3/31 次期繰越2,980,0004/1 前期繰越1,580,000
3/31 損益1,400,000
2,980,0002,980,000
4/1 前期繰越2,980,000

※現金勘定の期中の入出金は、紙面の都合で合計額にまとめている。英米式決算法では、資産・負債・純資産の締切に仕訳は行わない。締め切った後、各勘定の次期繰越の金額を集めて繰越試算表を作り、借方合計と貸方合計の一致を確かめる。

04財務諸表の作成 ― 決算整理後残高試算表から

いよいよ最後の仕上げだ。決算整理後の各勘定の残高を集めた決算整理後残高試算表から、損益計算書と貸借対照表を作る。第3問では、この試算表(または決算整理前残高試算表と決算整理事項)をもとに、財務諸表を作らせる問題がよく出る。

決算整理後残高試算表(×8年3月31日)
借方勘定科目貸方
412,000現金
5,357,000普通預金
2,800,000売掛金
280,000繰越商品
12,000貯蔵品
60,000前払保険料
4,200,000備品
2,400,000車両運搬具
500,000差入保証金
買掛金1,150,000
当座借越150,000
借入金2,000,000
未払消費税940,000
未払法人税等400,000
未払利息30,000
前受手数料15,000
貸倒引当金56,000
備品減価償却累計額1,860,000
車両運搬具減価償却累計額1,440,000
資本金5,000,000
繰越利益剰余金1,580,000
売上18,600,000
受取手数料45,000
9,460,000仕入
3,600,000給料
1,320,000支払家賃
180,000保険料
480,000水道光熱費
100,000通信費
73,000租税公課
186,000消耗品費
44,000貸倒引当金繰入
1,140,000減価償却費
60,000支払利息
2,000雑損
600,000法人税、住民税及び事業税
33,266,000合計33,266,000

表は横にスクロールできます →

※決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は、まだ当期純利益を振り替える前の金額(1,580,000円)であることに注意。

損益計算書(勘定式)

損益計算書 おかわり堂ケータリング株式会社 ×7年4月1日から×8年3月31日まで
費用金額収益金額
売上原価9,460,000売上高18,600,000
給料3,600,000受取手数料45,000
支払家賃1,320,000
保険料180,000
水道光熱費480,000
通信費100,000
租税公課73,000
消耗品費186,000
貸倒引当金繰入44,000
減価償却費1,140,000
支払利息60,000
雑損2,000
法人税、住民税及び事業税600,000
当期純利益1,400,000
合計18,645,000合計18,645,000

貸借対照表(勘定式)

貸借対照表 おかわり堂ケータリング株式会社 ×8年3月31日
資産内訳金額負債及び純資産金額
現金預金5,769,000買掛金1,150,000
売掛金2,800,000借入金2,150,000
貸倒引当金△56,0002,744,000未払費用30,000
商品280,000前受収益15,000
貯蔵品12,000未払消費税940,000
前払費用60,000未払法人税等400,000
備品4,200,000資本金5,000,000
減価償却累計額△1,860,0002,340,000繰越利益剰余金2,980,000
車両運搬具2,400,000
減価償却累計額△1,440,000960,000
差入保証金500,000
合計12,665,000合計12,665,000

表は横にスクロールできます →

※現金と普通預金は「現金預金」としてまとめて表示している(問題で別々の科目が指定されていれば、それに従う)。借入金2,150,000円は、借入金2,000,000円と当座借越150,000円の合計。

05財務諸表の表示ルール ― 「勘定科目」と「表示科目」は違う

財務諸表では、帳簿の勘定科目をそのまま使わず、読み手に分かりやすい表示科目に置き換えるものがある。第3問で最も点差がつくのが、この表示のルールだ。

勘定科目と表示科目の主な違い
勘定科目財務諸表での表示注意点
売上売上高損益計算書
仕入(決算整理後)売上原価損益計算書。整理後の仕入勘定の残高
繰越商品商品貸借対照表
現金・普通預金・当座預金現金預金まとめて表示することが多い
貸倒引当金売掛金などから控除して表示「売掛金 2,800,000 貸倒引当金 △56,000 → 2,744,000」
減価償却累計額各固定資産から控除して表示固定資産ごとに差し引く
前払保険料・前払家賃など前払費用貸借対照表
未収利息・未収家賃など未収収益貸借対照表
未払利息・未払給料など未払費用貸借対照表
前受家賃・前受手数料など前受収益貸借対照表
当座借越借入金貸借対照表
繰越利益剰余金繰越利益剰余金(当期純利益を加えた金額)試算表の金額+当期純利益

THINK ― 判断してみよう

投資家と銀行は、最初にどちらの決算書を開くのか?

おかわり堂ケータリングの社長が尋ねてきた。「来月、新しいメインバンク候補の銀行と、出資を検討している投資ファンドの両方に決算書を見せることになった。彼らは、損益計算書と貸借対照表の、どちらを先に見るのかな?」。あなたなら、どう答え、どんな準備をするか?

考え方の例を見る▼

答えは「相手によって違う。そして、プロは必ず2枚をつなげて読む」だ。

銀行は、多くの場合、貸借対照表から開く。銀行の最大の関心は「貸したお金が返ってくるか」だからだ。純資産は十分か(債務超過ではないか)、借入金は過大ではないか、手元の現金預金は十分か。そのうえで損益計算書を見て、返済の原資となる利益とキャッシュを生む力を確かめる。

投資家は、多くの場合、損益計算書から開く。売上の成長率と利益率から、会社の稼ぐ力と将来性を見るためだ。そのうえで貸借対照表と組み合わせて、預けたお金がどれだけ効率よく利益を生んでいるかを確かめる。

おかわり堂ケータリングの主な経営指標

売上総利益率

49.1%

(18,600,000-9,460,000)÷18,600,000

当期純利益率

7.5%

1,400,000÷18,600,000

自己資本比率

63.0%

純資産7,980,000÷総資産12,665,000

ROE(自己資本利益率)

17.5%

1,400,000÷7,980,000(期末の純資産で計算)

準備としては、この4つの指標を前期と比べた資料を用意したい。自己資本比率63%は、銀行に対して「財務の安全性は高い」と示す材料になる。ROE17.5%は、投資家に対して「預かったお金を効率よく増やしている」と示す材料になる。

ただし、どちらの相手にも必ず聞かれる質問がある。「この利益は、来年も続くのか?」。決算書は過去の通知表だ。財務の仕事は、通知表を正確に作ったうえで、そこからこれから先の見通しを数字で語ることである。

06確認問題

問1決算整理後の収益・費用の勘定残高は次のとおりだった。(1)収益の振替、(2)費用の振替、(3)当期純利益の振替の仕訳をしなさい。

売上 800,000円、受取利息 5,000円、仕入(売上原価)500,000円、給料 200,000円

解答・解説を見る▼
仕訳(1)
借方科目金額貸方科目金額
売上800,000損益805,000
受取利息5,000
仕訳(2)
借方科目金額貸方科目金額
損益700,000仕入500,000
給料200,000
仕訳(3) 805,000-700,000=105,000円
借方科目金額貸方科目金額
損益105,000繰越利益剰余金105,000

問2決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は300,000円(貸方)、当期純利益は120,000円だった。貸借対照表に表示する繰越利益剰余金はいくらか。また、当期純損失50,000円だった場合はいくらか。

解答・解説を見る▼

当期純利益の場合:300,000+120,000=420,000円

当期純損失の場合:300,000-50,000=250,000円

問3次の勘定科目を、貸借対照表または損益計算書の表示科目に直しなさい。

(1) 繰越商品 (2) 前払保険料 (3) 未払家賃 (4) 前受地代 (5) 仕入(決算整理後) (6) 当座借越

解答・解説を見る▼

(1) 商品 (2) 前払費用 (3) 未払費用 (4) 前受収益 (5) 売上原価 (6) 借入金

問4英米式決算法により買掛金勘定を締め切る。期中の借方合計(支払い・返品)は4,200,000円、貸方合計(前期繰越と仕入)は4,750,000円だった。次期繰越の金額と、それを記入する側を答えなさい。

解答・解説を見る▼

4,750,000-4,200,000=550,000円を、借方に「次期繰越」として記入する(買掛金は負債なので貸方残高。残高の反対側に記入して締め切る)。翌期首には、貸方に「前期繰越 550,000」と記入する。

SUMMARY

この章のまとめ

  • ✓収益・費用はフローの勘定。期末に損益勘定へ振り替えてゼロにし、毎年数え直す
  • ✓損益勘定の残高(当期純利益)は、繰越利益剰余金へ振り替える。これがフローとストックをつなぐ唯一の橋
  • ✓資産・負債・純資産はストックの勘定。英米式決算法で「次期繰越」と記入して締め切り、翌期首に「前期繰越」と記入する
  • ✓財務諸表は決算整理後残高試算表から作る。売上→売上高、仕入→売上原価、繰越商品→商品などの表示ルールに注意
  • ✓貸借対照表の繰越利益剰余金=試算表の金額+当期純利益
  • ✓銀行は貸借対照表から、投資家は損益計算書から読み始めることが多い。プロは必ず2枚をつなげて読む

EPILOGUE

終章2級・1級、そして実務へ

利益は同じ1,000万円。なのに、1社は上場し、1社は倒産した。

同じ利益を出した2つの会社の、正反対の運命。最後の問いを解く鍵は、本書で学んだすべての知識を組み合わせた先にある「第3の財務諸表」だ。21の問いを振り返り、2級・1級、そして経営の現場へと続く道を示す。

読了目安 25分難易度 ★★☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸21の問いの答えを振り返り、簿記の全体像を1枚の地図として持つ
  • ▸キャッシュ・フロー計算書の考え方を理解し、利益と現金のズレを説明できる
  • ▸決算書を読むときのチェックポイントを身につける
  • ▸2級・1級で学ぶ内容と、学習の進め方を知る
この章の目次▼
  1. 01序章の問いを、もう一度解く
  2. 02第3の財務諸表 ― キャッシュ・フロー計算書
  3. 03答え合わせ ― 運命を分けたのは「お金の流れ方」
  4. 0421の問いと、その答え ― 1枚の地図にする
  5. 05この先の道 ― 2級・1級、そして実務へ

QUESTION ― この章の問い

同じ利益、正反対の運命

ある年、京都で創業した2つの会社が、そろって1,000万円の当期純利益を計上した。

1社は、飲食店向けに食材を卸す会社。もう1社は、24時間営業のフィットネスジム。業種は違うが、どちらも売上は伸び盛りで、利益の額もまったく同じだった。

5年後。ジムは新規店舗を次々と出し、株式市場への上場を果たした。一方、食材の卸売会社は、急成長の途中で資金が尽き、倒産した。

同じ年に、同じ利益を出した2社。損益計算書の最終行は、どちらも「1,000万円」だった。2社の運命を分けたものは、いったい何だったのか?

01序章の問いを、もう一度解く

最終章の問いに挑む前に、序章に戻ろう。行列の絶えない定食屋「まんぷく食堂」は、なぜ黒字のまま倒産したのか。

序章を読んだときのあなたは、「利益と現金は違う」という言葉を、まだ実感をもって理解できなかったかもしれない。だが今のあなたは、その意味を勘定科目のレベルで説明できるはずだ。

まんぷく食堂の「お金の出口」を、勘定科目で説明する
お金の出口仕訳利益への影響学んだ章
新店の内装・厨房設備建物・備品 / 普通預金買った年は影響なし。減価償却で少しずつ費用に第12章
新店の保証金差入保証金 / 普通預金影響なし(資産のまま)第9章
借入金の元本返済借入金 / 普通預金影響なし(負債の減少)第9章
食材在庫の増加仕入 / 買掛金など(期末に繰越商品へ)期末在庫は費用にならない第5章
法人税等の納付未払法人税等 / 普通預金前期に費用計上済み第14章

どの仕訳も、借方は費用ではなく、資産の増加か負債の減少だ。だから利益は減らない。しかし貸方は「普通預金」。お金は確実に出ていく。まんぷく食堂のオーナーに足りなかったのは、この仕訳の両側を同時に見る目だった。複式簿記とは、まさにその目のことなのだ。

02第3の財務諸表 ― キャッシュ・フロー計算書

損益計算書は「利益」を、貸借対照表は「財産の状態」を表す。そして、1年間の「現金の増減」を、その原因別に表すのが、第3の財務諸表、キャッシュ・フロー計算書だ(本格的には1級で学ぶ)。

キャッシュ・フロー計算書は、現金の動きを3つに分けて示す。

キャッシュ・フロー計算書の3つの区分
区分内容主な例
営業活動によるキャッシュ・フロー本業で稼いだ(失った)現金商品の販売・仕入、給料・経費の支払い、法人税等の支払い
投資活動によるキャッシュ・フロー将来のための投資に使った(回収した)現金固定資産の購入・売却、貸付けと回収
財務活動によるキャッシュ・フロー資金の調達と返済借入れと返済、株式の発行、配当の支払い

なかでも重要なのが、営業活動によるキャッシュ・フローだ。これは、当期純利益から出発して、「利益とお金のズレ」を調整する形で計算できる(間接法)。

FORMULA ― 公式

営業活動によるキャッシュ・フロー(間接法・3級の知識で読める簡略版)

当期純利益

+ 減価償却費(お金が出ていかない費用)

- 売掛金などの増加(売れたが、まだ入金されていない)

- 在庫の増加(お金が商品の形で眠っている)

+ 買掛金などの増加(仕入れたが、まだ支払っていない)

+ 前受金・前受収益の増加(サービス提供前に入金された)

どの項目も、あなたはすでに知っている。減価償却費は第12章、売掛金は第7章、在庫は第5章、前受収益は第15章で学んだ。キャッシュ・フロー計算書とは、本書で学んだ「利益と現金のズレ」を、1枚の表に整理したものにすぎない。

03答え合わせ ― 運命を分けたのは「お金の流れ方」

ANSWER ― 答え合わせ

2社の「第3の財務諸表」を並べてみる

同じ1,000万円の利益を出した年の、2社のキャッシュ・フローを比べてみよう(単位:万円、簡略化)。

利益は同じ。キャッシュ・フローは正反対
項目食材の卸売会社24時間ジム
当期純利益1,0001,000
+ 減価償却費2001,500
- 売掛金の増加△2,5000
- 在庫の増加△6000
+ 買掛金の増加7000
+ 前受収益(年払い会費)の増加0900
営業活動によるキャッシュ・フロー△1,2003,400
投資活動(冷蔵倉庫/新店のマシン)△800△3,000
財務活動(短期の借入れ)2,0000
現金の増減0400

卸売会社は、売上が伸びるほど売掛金と在庫が膨らみ(第7章)、本業で現金を失っていた。利益は出ているのに、営業活動のキャッシュ・フローはマイナス1,200万円。足りない現金を、銀行からの短期の借入れで埋め続けていた。そして数年後、金利の上昇と取引先の貸倒れ(第11章)が重なり、銀行が追加の融資を断ったとき、会社は資金繰りに行き詰まった。

ジムは、会費を前払いで受け取り(第15章)、在庫も売掛金もほとんどない。高額なマシンの減価償却費(第12章)はお金が出ていかない費用だから、利益以上の現金が手元に残る。営業活動で生んだ3,400万円で、新店のマシン3,000万円を自分の力でまかない、借金に頼らずに成長を続けた。

2社の運命を分けたのは、利益の額ではない。利益が、どんな形で手元に残るか――つまり、ビジネスモデルが生み出すお金の流れ方だったのである。

0421の問いと、その答え ― 1枚の地図にする

本書で解いてきた問いを振り返ろう。どの問いの答えも、簿記の1つのルールに対応している。

本書の21の問い
章問い答えの鍵
序章満席の人気店が、黒字のまま倒産した利益と現金は別物。設備・保証金・返済・在庫・税金
第1章口座に1億円ある会社は、金持ちか豊かさは純資産(資産-負債)で測る
第2章1億円の契約は記録せず、30万円の盗難は記録する簿記上の取引=財産の増減
第3章レジの3,200円の不足、犯人は誰か現金過不足。疑う前に記録する
第4章残高ゼロの口座から500万円が払えた当座借越。マイナス残高は借金
第5章過去最高の売上なのに、利益が半分以上消えた仕入≠売上原価。しーくりくりしー
第6章同じ牛肉で、利益が2つある先入先出法と移動平均法。継続性の原則
第7章売れたのに、口座にお金がない売掛金と運転資金。CCC
第8章紙切れ1枚で黒字の会社が倒れた手形の不渡りと連鎖倒産
第9章バスの代金は買掛金ではない商品以外の後払いは未払金
第10章時給1,250円のバイトの本当のコスト深夜割増と法定福利費
第11章1,000万円の貸倒れで、損失は550万円貸倒引当金。費用収益対応
第12章5,000万円のバスを買っても赤字にならない減価償却。費用配分の原則
第13章赤字のSaaSに30億円が集まった資本金と、赤字の「質」
第14章年商2億円の店が消費税を払えない消費税は預かったお金
第15章年会費の前受けは売上ではない発生主義と経過勘定
第16章3年間の横領が1枚の紙で暴かれた証ひょうの照合と職務分掌
第17章1,000件の仕訳から1つのミスを探す試算表と差額の推理
第18章決算日の夜、利益が書き換わる決算整理と精算表
第19章帳簿の半分は消え、半分は残るフローとストック、繰越利益剰余金
終章同じ利益で、上場と倒産に分かれた第3の財務諸表、キャッシュ・フロー
1年間の動き(フロー)
期末の状態(ストック)
損益計算書
収益-費用=当期純利益
キャッシュ・フロー計算書
現金の増減とその理由
(期首の貸借対照表から出発)
貸借対照表
繰越利益剰余金+当期純利益
貸借対照表
現金預金=期首+現金の増減
簿記の全体像 ― 3枚の財務諸表は1つにつながっている

損益計算書の当期純利益は、貸借対照表の繰越利益剰余金に流れ込む(第19章)。キャッシュ・フロー計算書の現金の増減は、貸借対照表の現金預金の変化と一致する。3枚の財務諸表は、複式簿記という1つのエンジンから生まれた、同じ会社の3つの顔なのだ。

THINK ― 判断してみよう

就職・転職・投資の前に、決算書のどこを見るか

あなたは、ある会社への転職を考えている(あるいは、その会社の株を買おうとしている)。決算書を手に入れた。限られた時間で、どこを見れば、その会社の「本当の姿」に近づけるだろうか?

考え方の例を見る▼

本書の知識を使えば、次の5つの問いで、多くのことが分かる。

  1. 売上は伸びているか、粗利率は保たれているか(損益計算書):売上の成長と、売上総利益率の推移を見る。売上が伸びても粗利率が下がり続けていれば、値下げで売上を買っている可能性がある(第5章)。
  2. 利益と営業キャッシュ・フローは見合っているか(キャッシュ・フロー計算書):利益が出ているのに、営業活動のキャッシュ・フローが何年もマイナスなら要注意だ(終章)。
  3. 売掛金と在庫は、売上以上に膨らんでいないか(貸借対照表):回収日数や在庫日数の悪化は、資金繰りの悪化や、時に粉飾のサインになる(第5・7章)。
  4. 自己資本比率は十分か、債務超過ではないか(貸借対照表):借金に頼りすぎていないかを見る(第1章)。
  5. 手元の現金預金と借入金のバランスはどうか(貸借対照表):借入金から現金預金を引いた「実質的な借金」が、稼ぐ力に比べて重すぎないかを見る。

決算書は、会社が世界に向けて出している、最も正直な手紙だ。読み方を知っている人にだけ、その手紙の行間が見える。

05この先の道 ― 2級・1級、そして実務へ

3級で手に入れたのは、簿記というOSだ。この上に、さらに強力なアプリケーションをインストールしていくことができる。

2級で学ぶ主な内容
分野主な論点本書とのつながり
商業簿記連結会計おかわり堂とケータリング子会社のグループ決算(第18章)
商業簿記税効果会計会計上の利益と税金の計算のズレ(第14章)
商業簿記リース会計・ソフトウェアバスのリース、ゲーム開発費の資産計上(第12章)
商業簿記有価証券・外貨建取引余剰資金の運用、輸入牛肉の為替リスク
商業簿記収益認識ジムの年会費、乗車券の前受け(第9・15章)
商業簿記引当金・株主資本等変動計算書賞与・退職金への備え、純資産の変動(第10・13章)
工業簿記原価計算おかわり堂のセントラルキッチンで作る惣菜の原価
工業簿記標準原価計算・CVP分析原価差異の分析、深夜営業の損益分岐点(第10章)

1級では、会計基準の背後にある理論、企業結合や連結の高度な論点、キャッシュ・フロー計算書、そして経営判断のための管理会計を学ぶ。その先には、公認会計士や税理士、企業の経理・財務部門など、会社の数字を扱う仕事への道が続いている。

3級合格までのラストスパート

  1. 1

    本書の確認問題をもう一度解く

    間違えた問題の章だけを読み直す。問いと答え合わせを思い出せば、ルールも思い出せる

  2. 2

    付録Cの仕訳道場を3周する

    1問30秒を目標に。第1問の45点はここで決まる

  3. 3

    付録Bの攻略法を読み、付録Dの模擬試験を解く

    60分を計って、第1問→第3問→第2問の順で解き、採点結果から復習する章を決める

  4. 4

    試験の直前は「緑のボックス」だけを読む

    各章の「試験の急所」に、出題のポイントが凝縮されている


最後に、ひとつだけ伝えたい。

簿記は、過去の取引を記録する技術だ。だが、本書の21の問いが示したとおり、その記録は、会社の未来を左右する。黒字倒産も、粉飾も、連鎖倒産も、上場も――すべては、日々の仕訳の積み重ねの先にある。

経済のルールは、これからも変わり続ける。紙の手形は消え、決済は電子化され、AIが仕訳を自動で切る時代が来た。それでも、500年前にヴェネツィアの商人が手にした「左右に分けて記録する」という仕組みの価値は、少しも色あせていない。むしろ、数字があふれる時代だからこそ、その数字の意味を読み解ける人の価値は、ますます高まっていく。

あなたはもう、決算書を読める。

次は、その数字を自分の手で作り、より良く変えていく側に立つ番だ。

SUMMARY

本書のまとめ

  • ✓簿記は、会社の成績と財産を表す財務諸表を作り、読むための技術である
  • ✓利益と現金は違う。その違いを生むのは、設備投資・在庫・売掛金・借入金・税金・前受けなどの「時間差」
  • ✓すべての取引を左右2つの側面から記録する複式簿記は、誤りと不正を見つけ、利益と財産を同時に計算する
  • ✓決算整理は、お金の動きの記録を、発生主義にもとづく真実の利益へと翻訳する
  • ✓損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書は、1つの会社の3つの顔。必ずつなげて読む
  • ✓3級は終点ではなく、2級・1級、そして経営の現場へと続く道の入口である

APPENDIX

付録A勘定科目・完全辞典

3級の勘定科目を、5つの要素で一望する

3級で登場する勘定科目を、資産・負債・純資産・収益・費用、そして評価勘定とその他に分類した一覧。迷ったときは、ホームポジションと「ひとことで言うと」を確認しよう。各科目の詳しい解説は、右端の章で読める。

読了目安 辞書として随時難易度 ★☆☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸勘定科目を見た瞬間に、5つの要素のどれかを判断できる
  • ▸まぎらわしい勘定科目の違いを整理できる
  • ▸財務諸表での表示科目を確認できる
この章の目次▼
  1. 01使い方
  2. 02資産 ― ホームポジションは借方(左)
  3. 03負債 ― ホームポジションは貸方(右)
  4. 04純資産 ― ホームポジションは貸方(右)
  5. 05収益 ― ホームポジションは貸方(右)
  6. 06費用 ― ホームポジションは借方(左)
  7. 07評価勘定とその他の勘定
  8. 08まぎらわしい勘定科目の見分け方
  9. 09財務諸表での表示科目

01使い方

02資産 ― ホームポジションは借方(左)

資産の勘定科目
勘定科目ひとことで言うと章
現金
げんきん
通貨と通貨代用証券(他人振出小切手など)3章
小口現金
こぐちげんきん
小口の支払いのために前渡しした現金4章
当座預金
とうざよきん
小切手・手形の決済に使う預金4章
普通預金
ふつうよきん
いつでも出し入れできる預金4章
定期預金
ていきよきん
一定期間引き出せない預金4章
売掛金
うりかけきん
商品を掛けで売った代金を受け取る権利7章
クレジット売掛金
くれじっとうりかけきん
カード(キャッシュレス)決済の代金を決済会社から受け取る権利7章
受取商品券
うけとりしょうひんけん
他社発行の商品券を受け取ったときの、代金を受け取る権利7章
受取手形 2027年度〜範囲外
うけとりてがた
商品代金として受け取った約束手形8章
電子記録債権
でんしきろくさいけん
電子的に記録された、代金を受け取る権利8章
手形貸付金
てがたかしつけきん
手形を受け取ってお金を貸した権利8章
貸付金
かしつけきん
お金を貸した権利9章
従業員貸付金
じゅうぎょういんかしつけきん
従業員にお金を貸した権利9章
役員貸付金
やくいんかしつけきん
取締役などの役員にお金を貸した権利9章
未収入金
みしゅうにゅうきん
商品以外のものを売った代金を受け取る権利9章
前払金
まえばらいきん
商品の手付金・内金を払ったときの、商品を受け取る権利9章
仮払金
かりばらいきん
内容・金額が未確定の支払い(旅費の概算払い、ICカードのチャージ)9章
差入保証金
さしいれほしょうきん
店舗や事務所を借りるときに差し入れた敷金・保証金9章
立替金・従業員立替金
たてかえきん
相手が払うべきお金を立て替えたときの、返してもらう権利10章
繰越商品
くりこししょうひん
三分法で、期末に売れ残っている商品(在庫)5章
商品 2027年度〜
しょうひん
売上原価対立法で使う、商品の在庫5章
貯蔵品
ちょぞうひん
未使用の切手・収入印紙など。除却した固定資産の処分見込額15章
仮払消費税
かりばらいしょうひぜい
仕入や経費で支払った消費税14章
仮払法人税等
かりばらいほうじんぜいとう
法人税等の中間納付額14章
前払費用(前払保険料など)
まえばらいひよう
支払った費用のうち、来期以降の分15章
未収収益(未収利息など)
みしゅうしゅうえき
提供したサービスの対価で、まだ受け取っていない分15章
建物
たてもの
店舗・事務所・倉庫など12章
備品
びひん
パソコン・机・厨房機器・トレーニングマシンなど12章
車両運搬具
しゃりょううんぱんぐ
バス・トラック・営業車など12章
土地
とち
店舗や車庫の敷地。減価償却しない12章

03負債 ― ホームポジションは貸方(右)

負債の勘定科目
勘定科目ひとことで言うと章
買掛金
かいかけきん
商品を掛けで仕入れた代金を支払う義務7章
支払手形 2027年度〜範囲外
しはらいてがた
商品代金の支払いのために振り出した約束手形8章
電子記録債務
でんしきろくさいむ
電子的に記録された、代金を支払う義務8章
手形借入金
てがたかりいれきん
手形を振り出してお金を借りた義務8章
借入金
かりいれきん
お金を借りた義務9章
役員借入金
やくいんかりいれきん
社長などの役員からお金を借りた義務9章
当座借越
とうざかりこし
当座預金の残高を超えて支払った分(銀行からの借入れ)4章
未払金
みばらいきん
商品以外のものを買った代金を支払う義務9章
前受金
まえうけきん
手付金・内金や乗車券代金など、商品・サービスの提供前に受け取ったお金9章
仮受金
かりうけきん
内容が不明な入金9章
預り金
あずかりきん
他人から一時的に預かったお金10章
所得税預り金
しょとくぜいあずかりきん
給料から天引きした源泉所得税10章
社会保険料預り金
しゃかいほけんりょうあずかりきん
給料から天引きした社会保険料(本人負担分)10章
住民税預り金
じゅうみんぜいあずかりきん
給料から天引きした住民税10章
従業員預り金
じゅうぎょういんあずかりきん
社員旅行の積立金など、従業員から預かったお金10章
仮受消費税
かりうけしょうひぜい
売上で受け取った消費税14章
未払消費税
みばらいしょうひぜい
決算で確定した、納付すべき消費税14章
未払法人税等
みばらいほうじんぜいとう
決算で確定した、納付すべき法人税等の未払分14章
未払配当金
みばらいはいとうきん
株主総会で決議された、未払いの配当金13章
未払費用(未払給料など)
みばらいひよう
受けたサービスの対価で、まだ支払っていない分15章
前受収益(前受家賃など)
まえうけしゅうえき
受け取った収益のうち、来期以降の分15章

04純資産 ― ホームポジションは貸方(右)

純資産の勘定科目
勘定科目ひとことで言うと章
資本金
しほんきん
株主が払い込んだ金額(3級では全額を資本金とする)13章
利益準備金
りえきじゅんびきん
配当にあわせて会社法により積み立てる準備金13章
繰越利益剰余金
くりこしりえきじょうよきん
会社が稼いだ利益の蓄積のうち、配当などに使っていない部分13・19章

05収益 ― ホームポジションは貸方(右)

収益の勘定科目
勘定科目ひとことで言うと章
売上
うりあげ
商品・サービスを提供した対価(売価で記録)5章
受取手数料
うけとりてすうりょう
仲介などで受け取った手数料2章
受取家賃
うけとりやちん
建物を貸して受け取った家賃15章
受取地代
うけとりちだい
土地を貸して受け取った地代2章
受取利息
うけとりりそく
預金や貸付金の利息9章
雑益
ざつえき
原因不明の現金の超過など、少額の雑多な収益3章
固定資産売却益
こていしさんばいきゃくえき
固定資産を帳簿価額より高く売った差額12章
償却債権取立益
しょうきゃくさいけんとりたてえき
前期以前に貸倒れ処理した債権を回収できた額11章
貸倒引当金戻入
かしだおれひきあてきんもどしいれ
貸倒引当金の残高が設定額を上回った分11章
商品売買益
しょうひんばいばいえき
分記法で使う売価と原価の差額(分記法は現在の3級の出題範囲外。参考)5章

06費用 ― ホームポジションは借方(左)

費用の勘定科目
勘定科目ひとことで言うと章
仕入
しいれ
三分法で、商品を仕入れた金額(付随費用を含む)。決算整理後は売上原価を表す5章
売上原価
うりあげげんか
売上原価を「売上原価」勘定で計算するときに使う。2027年度〜は売上原価対立法でも使う5章
発送費
はっそうひ
商品を発送するために当社が負担した送料5章
給料
きゅうりょう
従業員に支払う給料(総支給額)10章
法定福利費
ほうていふくりひ
社会保険料の会社負担分10章
広告宣伝費
こうこくせんでんひ
広告・宣伝のための費用13章
支払手数料
しはらいてすうりょう
仲介手数料・振込手数料・カードの決済手数料など7章
支払利息
しはらいりそく
借入金などの利息9章
旅費交通費
りょひこうつうひ
電車・バス・タクシー代、出張の宿泊費など9章
通信費
つうしんひ
電話代・郵便切手代など4章
消耗品費
しょうもうひんひ
文房具・洗剤など、すぐに使う物品の購入費4章
水道光熱費
すいどうこうねつひ
水道代・電気代・ガス代18章
支払家賃
しはらいやちん
建物を借りて支払う家賃9章
支払地代
しはらいちだい
土地を借りて支払う地代15章
保険料
ほけんりょう
火災保険・自動車保険などの保険料15章
租税公課
そぜいこうか
固定資産税・自動車税・印紙税など14章
修繕費
しゅうぜんひ
建物・設備を元の状態に戻すための修理代12章
減価償却費
げんかしょうきゃくひ
固定資産の取得原価のうち、当期に配分した額12章
貸倒損失
かしだおれそんしつ
回収できなくなった債権のうち、引当金で充当できない額11章
貸倒引当金繰入
かしだおれひきあてきんくりいれ
決算で貸倒引当金を補充した額11章
保管費
ほかんひ
倉庫会社に支払う商品の保管料など付録C
諸会費
しょかいひ
商工会議所や業界団体などに支払う会費付録C
雑費
ざっぴ
他のどの費用にも当てはまらない少額の費用-
雑損
ざっそん
原因不明の現金の不足など、少額の雑多な損失3章
固定資産売却損
こていしさんばいきゃくそん
固定資産を帳簿価額より安く売った差額12章
固定資産除却損 2027年度〜
こていしさんじょきゃくそん
固定資産を除却したときの、帳簿価額と処分見込額の差額12章
固定資産廃棄損 2027年度〜
こていしさんはいきそん
固定資産を廃棄したときの帳簿価額と廃棄費用12章
法人税、住民税及び事業税
ほうじんぜい、じゅうみんぜいおよびじぎょうぜい
当期の利益にかかる税金14章

07評価勘定とその他の勘定

評価勘定(資産のマイナスを表す。残高は貸方)
勘定科目ひとことで言うと章
貸倒引当金
かしだおれひきあてきん
売掛金などのうち、回収できないと見込まれる額11章
減価償却累計額
げんかしょうきゃくるいけいがく
これまでに計上した減価償却費の合計(間接法)12章
その他の勘定(一時的に使い、最終的には残らない)
勘定科目ひとことで言うと章
現金過不足
げんきんかぶそく
現金の帳簿残高と実際有高のズレの仮置き場。決算で整理する3章
損益
そんえき
決算で収益・費用を集めて当期純利益を計算する勘定19章

08まぎらわしい勘定科目の見分け方

間違えやすいペア
ペア見分け方
売掛金 と 未収入金商品の代金なら売掛金、商品以外(備品・車両など)の代金なら未収入金
買掛金 と 未払金商品の代金なら買掛金、商品以外の代金なら未払金
未払金 と 未払費用個別の取引で確定した債務なら未払金、継続的なサービスの未払分(決算整理)なら未払費用
前受金 と 前受収益商品・サービスの代金の前受けなら前受金、継続的なサービスの収益の繰延べ(決算整理)なら前受収益
前払金 と 前払費用商品の手付金なら前払金、継続的なサービスの費用の繰延べ(決算整理)なら前払費用
仮受金 と 前受金 と 預り金内容不明なら仮受金、商品代金の前受けなら前受金、他人のお金を預かったなら預り金
受取手形 と 手形貸付金商品代金として受け取った手形なら受取手形、お金を貸して受け取った手形なら手形貸付金
現金 と 当座預金他人振出の小切手を受け取ったら現金、自己振出の小切手が戻ってきたら当座預金
通信費 と 租税公課 と 貯蔵品切手は通信費、収入印紙は租税公課。決算日に未使用なら貯蔵品
租税公課 と 法人税等固定資産税・印紙税などは租税公課、利益にかかる税金は法人税、住民税及び事業税
貸倒損失 と 貸倒引当金当期発生の債権の貸倒れは貸倒損失、前期以前の債権はまず貸倒引当金を取り崩す

09財務諸表での表示科目

帳簿の勘定科目と、財務諸表の表示科目
勘定科目表示科目財務諸表
売上売上高損益計算書
仕入(決算整理後)売上原価損益計算書
繰越商品商品貸借対照表
現金・当座預金・普通預金など現金預金貸借対照表
前払保険料・前払家賃など前払費用貸借対照表
未収利息・未収家賃など未収収益貸借対照表
未払給料・未払利息など未払費用貸借対照表
前受家賃・前受地代など前受収益貸借対照表
当座借越借入金貸借対照表
貸倒引当金・減価償却累計額対象の資産から控除して表示貸借対照表
繰越利益剰余金繰越利益剰余金(試算表の金額+当期純利益)貸借対照表

※本付録は、日本商工会議所の「商業簿記標準・許容勘定科目表」などを参考に、本書で扱った勘定科目を整理したもの。試験問題では、同じ内容に別の科目名(例:「当座借越」に代えて「借入金」)が指定されることがある。必ず問題文の指示に従うこと。

APPENDIX

付録B試験攻略マニュアル

60分で70点を取りにいく、合格のための作戦書

試験は、知識の量ではなく「点の取り方」で決まる。出題構成、時間配分、解く順番、頻出論点、ケアレスミスのパターン、そして学習計画。限られた時間をどう使うかを決めて、合格までの道のりを設計しよう。

読了目安 20分難易度 ★☆☆

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸試験の出題構成と配点を正確に知る
  • ▸時間配分と解く順番の作戦を立てる
  • ▸第1問・第2問・第3問それぞれの攻略法を身につける
  • ▸自分に合った学習計画を立てる
この章の目次▼
  1. 01試験の基本情報
  2. 02出題構成と配点
  3. 03時間配分と解く順番
  4. 04第1問の攻略 ― 仕訳15問
  5. 05第2問の攻略 ― 帳簿・伝票・理論
  6. 06第3問の攻略 ― 決算
  7. 07ケアレスミス・ワースト10
  8. 08学習計画 ― 4週間プランと8週間プラン
  9. 092027年度からの出題区分表の改定(暫定版)
  10. 10試験直前チェックリスト

QUESTION ― この章の問い

知識が同じ2人の、合否を分けたもの

同じ教材で、同じ時間だけ勉強した2人の受験生がいた。模擬問題を解かせると、2人とも、時間をかければほぼ満点が取れる。

ところが本番の結果は、1人が88点で合格、もう1人は64点で不合格だった。

不合格だったほうは、試験後にこう振り返った。「第2問の帳簿の問題で手が止まって、時間を使いすぎた。気づいたら残り15分。第3問の決算は半分も埋められなかった」。

知識は同じ。違ったのは、60分という限られた資源の使い方だった。

01試験の基本情報

日商簿記3級の概要
項目内容
主催日本商工会議所・各地の商工会議所
試験方式統一試験(ペーパー試験:例年6月・11月・2月)と、ネット試験(テストセンターでのパソコン受験:随時)
試験時間60分
満点・合格基準100点満点、70点以上で合格
出題範囲商工会議所簿記検定試験 出題区分表にもとづく(2026年度は2022年度適用の区分表)
持ち物電卓(四則演算などの計算機能のみのもの。関数電卓などは不可)、筆記用具(統一試験)

※受験料、試験日、申込方法、持ち込みの細かな条件などは変更されることがある。受験前に必ず、日本商工会議所と受験地の商工会議所の公式情報を確認しよう。

統一試験とネット試験の違い
項目統一試験ネット試験
解答方法紙の答案用紙に手書きパソコンで入力(勘定科目はプルダウンなどで選択)
試験日年3回の指定日テストセンターの空き状況に応じて随時
計算用紙問題用紙の余白など計算用紙が配布される
合否の判明試験の後日試験終了後、その場で判明する
出題範囲・合格基準同じ同じ

02出題構成と配点

出題構成(例年の傾向)
大問配点主な内容
第1問45点仕訳問題15問(1問3点)。期中取引が中心で、証ひょうから仕訳する問題も含む
第2問20点小問2問程度。勘定記入、補助簿の記入・選択、伝票、商品有高帳、固定資産台帳、語句の選択など
第3問35点決算問題。財務諸表の作成、精算表の作成、決算整理後残高試算表の作成のいずれか

合格ラインの作り方(例)

第1問

39点/45点

15問中13問正解

第2問

10点/20点

半分取れれば十分

第3問

25点/35点

決算整理の7割を正確に

合計

74点

70点の合格ラインを超える

03時間配分と解く順番

おすすめの順番と時間配分

  1. 1

    第1問(仕訳15問):約20分

    1問80秒が目安。迷った問題は印をつけて飛ばし、最後に戻る

  2. 2

    第3問(決算):約25分

    決算整理仕訳を先にすべて書き出してから、解答欄に記入する

  3. 3

    第2問(帳簿など):約10分

    解ける小問から解く。見慣れない形式なら、取れる空欄だけを埋める

  4. 4

    見直し:約5分

    第1問の勘定科目と金額、第3問の合計の一致を確認する

04第1問の攻略 ― 仕訳15問

第1問の頻出論点
論点出題のされ方の例復習する章
現金過不足原因の一部が判明、決算での整理第3章
預金・小切手・小口現金複数口座間の振替、小口現金の報告と補給第4章
商品売買諸掛り、返品、手付金の充当、消費税第5・14章
クレジット売掛金・受取商品券手数料の計上、商品券での受取り第7章
手形・電子記録債権発生記録、決済、手形借入れ第8章
その他の債権債務未払金、仮払金の精算、ICカード、差入保証金、役員・従業員との貸し借り第9章
給料・預り金天引き、社会保険料の納付と法定福利費第10章
貸倒れ当期発生と前期発生の区別、償却債権取立益第11章
固定資産付随費用、期中売却第12章
株式・配当増資、配当の決議と支払い第13章
税金固定資産税、法人税等の中間納付、消費税の納付第14章
証ひょう請求書・領収書・通帳からの仕訳第16章
訂正仕訳勘定科目や金額の誤りの訂正第16章

05第2問の攻略 ― 帳簿・伝票・理論

第2問の主な出題形式と攻略法
形式攻略法復習する章
勘定記入(T字勘定の空欄補充)前期繰越・再振替・期中取引・決算整理・次期繰越の順に、勘定の1年間の流れを再現する第15・19章
補助簿の選択まず仕訳を書き、勘定科目ごとに補助簿を当てはめる第16章
商品有高帳払出欄は原価。先入先出法は単価ごとに行を分ける第6章
伝票・仕訳日計表一部現金取引の起票方法を、入金・出金伝票の相手科目から判断する第16章
売掛金元帳・買掛金元帳取引先ごとの残高と、総勘定元帳の残高の一致を使う第7章
固定資産台帳期中取得の月割に注意して、減価償却累計額を計算する第12章
語句の選択(理論)用語の意味を、自分の言葉で説明できるようにしておく全章の「重要理論」

06第3問の攻略 ― 決算

第3問を解く手順

  1. 1

    「期中の未処理事項」を先に処理する

    仮受金の内容判明、記帳漏れ、誤記の訂正など。これを先にやらないと、売掛金や消費税の金額がずれる

  2. 2

    決算整理仕訳をすべて書き出す

    問題用紙の余白に、決算整理事項の順に仕訳を書く。金額の計算式も書く

  3. 3

    勘定科目ごとに金額を集計する

    試算表の金額に、仕訳の金額を同じ側なら足し、反対側なら引く

  4. 4

    法人税等を最後に計算する

    税引前当期純利益が確定してから計算する

  5. 5

    解答欄に記入し、合計の一致を確かめる

    精算表なら損益計算書欄と貸借対照表欄の当期純利益の一致、財務諸表なら左右の合計の一致を確認する

07ケアレスミス・ワースト10

よくあるケアレスミスと対策
ミス対策
他人振出小切手の受取りを当座預金にする「他人振出の受取り=現金」と即答できるまで反復する(第3・4章)
当期発生の債権の貸倒れで引当金を取り崩す「いつ発生した債権か」を最初に確認する(第11章)
送料を受け取る取引で、売上に含め忘れる「受け取る送料は売上、払う送料は発送費」(第5章)
固定資産の後払いを買掛金にする固定資産の後払いは必ず未払金(第9章)
クレジット売掛金を手数料込みの金額にする手数料を差し引いた金額がクレジット売掛金(第7章)
社会保険料の会社負担分を預り金にする会社負担分は法定福利費(第10章)
配当の決議時に普通預金を減らす決議時は未払配当金、支払時に預金を減らす(第13章)
再振替仕訳を忘れる経過勘定・貯蔵品・当座借越は、翌期首に逆仕訳(第4・15章)
税込金額のまま仕入・売上を計上する税抜方式では、本体価格と消費税を分ける(第14章)
現金過不足の残額をすべて雑益(雑損)と決めつける最後は貸借差額で判断する(第3章)

08学習計画 ― 4週間プランと8週間プラン

4週間プラン(1日1.5〜2時間・短期集中型)
週学習内容
第1週序章〜第6章(簿記の基本、現金預金、商品売買)。章末の確認問題を毎日解く
第2週第7章〜第13章(債権債務、貸倒れ、固定資産、純資産)。付録Cの該当分野を解く
第3週第14章〜終章(税金、経過勘定、帳簿、試算表、決算)。第18・19章の総合例題を自力で解き直す
第4週付録Cの仕訳道場を3周。付録Dの模擬試験と、模擬問題・過去問を60分計って3回以上。間違えた論点の章を読み直す
8週間プラン(1日1時間・社会人向け)
週学習内容
第1〜2週序章〜第6章。週末に確認問題をまとめて解き直す
第3〜4週第7章〜第13章。通勤時間に各章の「試験の急所」を読む
第5〜6週第14章〜終章。精算表と財務諸表を、紙に書いて最低2回作る
第7週付録Cの仕訳道場を1日1分野ずつ。間違えた問題に印をつける
第8週付録Dの模擬試験と、模擬問題・過去問を60分計って解く。印をつけた仕訳を再挑戦する

092027年度からの出題区分表の改定(暫定版)

2025年12月に、日本商工会議所から、2027年4月1日以降の試験に適用する出題区分表の暫定版が公表された。受験時期によって出題範囲が変わるので注意しよう。

3級の主な変更点(2025年12月公表の暫定版にもとづく)
区分内容
削除される見込み紙の手形・小切手に関する論点(紙の手形・小切手が2027年3月末で利用廃止される予定のため)
2級から3級へ移行売上原価対立法(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)
2級から3級へ移行固定資産の除却・廃棄
2級から3級へ移行定率法(基礎的な仕組みの理解を目的とした簡易な出題。200%定率法の保証率などは出題しない)
整理・明記普通預金の明記、クレジット売掛金に「キャッシュレス決済を含む」と追記、電子記録債権・債務を売掛金・買掛金の区分に整理
リース3級の範囲外。支払家賃・支払地代は従来どおりの処理で出題

※本書は、2026年度(2027年3月まで)の試験に適用される現行の出題区分(2022年度適用版)を網羅したうえで、上記の追加論点を第5章(売上原価対立法)と第12章(定率法・除却・廃棄)で解説している。暫定版の内容は今後更新される可能性があるため、受験前に日本商工会議所の公式サイトで最新の出題区分表を必ず確認すること。

10試験直前チェックリスト

SUMMARY

前日・当日に確認すること

  • ✓受験票(統一試験)や予約内容(ネット試験)、本人確認書類を確認した
  • ✓電卓の電池は十分か。使い慣れた電卓を持っていく
  • ✓第1問→第3問→第2問の順番と、時間配分を決めた
  • ✓各章の「試験の急所」(緑のボックス)を読み返した
  • ✓付録Aの「まぎらわしい勘定科目の見分け方」を確認した
  • ✓しーくりくりしー、差額補充法、月割計算、経過勘定の4つの形を、白紙に書けるか試した
  • ✓貸借対照表の繰越利益剰余金には、当期純利益を加える

APPENDIX

付録C仕訳道場(第1問対策・64問)

1問30秒で切れるまで ― 仕訳道場64問

第1問の45点は、仕訳の反射神経で決まる。全64問を分野別に並べた。答えを見る前に、必ず紙に仕訳を書くこと。3周目に、すべてを1問30秒以内で解けるようになっていれば、第1問はもう怖くない。

読了目安 1周60分難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸3級の第1問で出題される仕訳のパターンを網羅的に練習する
  • ▸1問30秒以内で正確に仕訳できる反射神経を身につける
  • ▸間違えた論点を特定し、本編の該当章で復習する
この章の目次▼
  1. 01道場の使い方
  2. 02現金・預金(第3・4章)
  3. 03商品売買(第5・6・7・14章)
  4. 04債権・債務(第7・8・9章)
  5. 05貸倒れ(第11章)
  6. 06給料・税金(第10・14章)
  7. 07固定資産(第12章)
  8. 08純資産(第13章)
  9. 09そのほかの費用(第9・14章・付録A)
  10. 10決算整理・訂正仕訳(第15〜19章)

01道場の使い方

02現金・預金(第3・4章)

問1得意先から売掛金120,000円を、同店振出の小切手で回収した。

解答・解説を見る▼
仕訳他人振出小切手は現金
借方科目金額貸方科目金額
現金120,000売掛金120,000

問2現金の実際有高が、帳簿残高より3,000円少なかった。原因は不明である。

解答・解説を見る▼
仕訳期中の不足:帳簿の現金を実際有高に合わせる
借方科目金額貸方科目金額
現金過不足3,000現金3,000

問3決算において、現金過不足(借方残高3,000円)のうち2,000円は、郵便切手の購入の記入漏れと判明した。残額は原因不明である。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
通信費2,000現金過不足3,000
雑損1,000

問4普通預金A銀行の口座から、普通預金B銀行の口座へ500,000円を振り替えた。振込手数料440円がA銀行の口座から引き落とされた。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
普通預金B銀行500,000普通預金A銀行500,440
支払手数料440

問5小口係から、電車代4,200円、文房具代1,800円の支払いの報告を受け、ただちに同額の小切手を振り出して補給した。

解答・解説を見る▼
仕訳報告と補給が同時なので、小口現金は相殺される
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費4,200当座預金6,000
消耗品費1,800

問6決算日に、当座預金勘定の貸方残高80,000円を借入金勘定に振り替えた(当座借越契約あり)。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
当座預金80,000借入金80,000

問7買掛金250,000円の支払いのため、小切手を振り出した。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
買掛金250,000当座預金250,000

03商品売買(第5・6・7・14章)

問1商品300,000円を仕入れ、代金のうち50,000円は注文時に支払った手付金と相殺し、残額は掛けとした。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
仕入300,000前払金50,000
買掛金250,000

問2商品500,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は注文時に受け取った内金と相殺し、残額は掛けとした。また、当社負担の送料5,000円を現金で支払った。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
前受金100,000売上500,000
売掛金400,000
発送費5,000現金5,000

問3商品200,000円を仕入れ、代金は掛けとした。引取運賃6,000円は現金で支払った。

解答・解説を見る▼
仕訳引取運賃は仕入に含める
借方科目金額貸方科目金額
仕入206,000買掛金200,000
現金6,000

問4掛けで販売した商品のうち、12,000円分が品違いのため返品された。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
売上12,000売掛金12,000

問5商品を仕入れ、代金220,000円(消費税10%を含む)は掛けとした。消費税は税抜方式で処理する。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
仕入200,000買掛金220,000
仮払消費税20,000

問6商品80,000円をクレジットカード払いの条件で販売した。カード会社への手数料(販売代金の2%)は販売時に計上する。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
クレジット売掛金78,400売上80,000
支払手数料1,600

問7商品15,000円を販売し、代金のうち10,000円は自治体発行の商品券で、残額は現金で受け取った。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
受取商品券10,000売上15,000
現金5,000

問8商品を販売し、送料3,000円を加えた合計83,000円を掛けとした。配送業者には送料3,000円を現金で支払った。

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仕訳受け取る送料は売上に含める
借方科目金額貸方科目金額
売掛金83,000売上83,000
発送費3,000現金3,000

問92027年度〜 売上原価対立法により、原価40,000円の商品を65,000円で販売し、代金は掛けとした。

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借方科目金額貸方科目金額
売掛金65,000売上65,000
売上原価40,000商品40,000

04債権・債務(第7・8・9章)

問1買掛金300,000円の支払いのため、取引銀行を通じて電子記録債務の発生記録を行った。

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借方科目金額貸方科目金額
買掛金300,000電子記録債務300,000

問2電子記録債権200,000円の支払期日が到来し、普通預金に入金された。

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借方科目金額貸方科目金額
普通預金200,000電子記録債権200,000

問3売掛金400,000円の回収として、得意先振出の約束手形を受け取った。

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借方科目金額貸方科目金額
受取手形400,000売掛金400,000

問4取引先に、期間9か月・年利率4%で1,000,000円を貸し付けていたが、本日満期となり、利息とともに普通預金に返済された。

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仕訳利息:1,000,000×4%×9/12=30,000円
借方科目金額貸方科目金額
普通預金1,030,000貸付金1,000,000
受取利息30,000

問5銀行から500,000円を借り入れ、同額の約束手形を振り出した。利息10,000円を差し引かれ、残額が当座預金に入金された。

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借方科目金額貸方科目金額
当座預金490,000手形借入金500,000
支払利息10,000

問6営業用の車両1,800,000円を購入し、代金は月末に支払うことにした。

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仕訳商品ではないので未払金
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具1,800,000未払金1,800,000

問7出張から戻った従業員から、旅費として46,000円を使ったとの報告を受け、出張前に渡していた概算額50,000円との差額を現金で受け取った。

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借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費46,000仮払金50,000
現金4,000

問8交通系ICカードに現金20,000円をチャージした(仮払金で処理する)。

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借方科目金額貸方科目金額
仮払金20,000現金20,000

問9先日、普通預金に入金された内容不明の70,000円(仮受金で処理済み)は、得意先からの売掛金の回収であることが判明した。

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借方科目金額貸方科目金額
仮受金70,000売掛金70,000

問10店舗の賃借にあたり、敷金300,000円、1か月分の家賃150,000円、仲介手数料150,000円を普通預金から支払った。

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借方科目金額貸方科目金額
差入保証金300,000普通預金600,000
支払家賃150,000
支払手数料150,000

問11不要になった備品(帳簿価額60,000円)を60,000円で売却し、代金は翌月に受け取ることにした。

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仕訳商品以外の売却代金は未収入金
借方科目金額貸方科目金額
未収入金60,000備品60,000

問12資金繰りのため、社長個人から2,000,000円を借り入れ、普通預金に入金された。

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仕訳役員からの借入れは役員借入金
借方科目金額貸方科目金額
普通預金2,000,000役員借入金2,000,000

問13従業員に、住宅資金として400,000円を貸し付け、普通預金から振り込んだ。

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仕訳従業員への貸付けは従業員貸付金
借方科目金額貸方科目金額
従業員貸付金400,000普通預金400,000

05貸倒れ(第11章)

問1前期に発生した売掛金25,000円が貸し倒れた。貸倒引当金の残高は18,000円である。

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借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金18,000売掛金25,000
貸倒損失7,000

問2当期に発生した売掛金40,000円が貸し倒れた。貸倒引当金の残高は30,000円である。

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仕訳当期発生の債権なので、引当金は使わない
借方科目金額貸方科目金額
貸倒損失40,000売掛金40,000

問3前期に貸倒れとして処理した売掛金のうち、15,000円を現金で回収した。

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借方科目金額貸方科目金額
現金15,000償却債権取立益15,000

06給料・税金(第10・14章)

問1従業員の給料280,000円の支払いにあたり、所得税8,000円と社会保険料(本人負担分)40,000円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ。

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借方科目金額貸方科目金額
給料280,000所得税預り金8,000
社会保険料預り金40,000
普通預金232,000

問2社会保険料について、従業員負担分40,000円と会社負担分40,000円を合わせて普通預金から納付した。

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借方科目金額貸方科目金額
社会保険料預り金40,000普通預金80,000
法定福利費40,000

問3従業員が負担すべき携帯電話代6,000円を、会社が現金で立て替えた(立替金勘定を用いる)。

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借方科目金額貸方科目金額
立替金6,000現金6,000

問4店舗の固定資産税の第1期分160,000円を、普通預金から納付した。

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借方科目金額貸方科目金額
租税公課160,000普通預金160,000

問5収入印紙10,000円と郵便切手4,000円を購入し、現金で支払った。

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借方科目金額貸方科目金額
租税公課10,000現金14,000
通信費4,000

問6法人税等の中間申告を行い、300,000円を普通預金から納付した。

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借方科目金額貸方科目金額
仮払法人税等300,000普通預金300,000

問7決算で、当期の法人税等が720,000円と計算された。中間納付額は300,000円である。

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借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税720,000仮払法人税等300,000
未払法人税等420,000

問8決算にあたり、仮受消費税480,000円と仮払消費税310,000円を相殺し、差額を未払消費税とした。

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借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税480,000仮払消費税310,000
未払消費税170,000

07固定資産(第12章)

問1店舗用の建物20,000,000円を購入し、仲介手数料600,000円・登記料200,000円とともに普通預金から支払った。

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仕訳付随費用は建物の取得原価に含める
借方科目金額貸方科目金額
建物20,800,000普通預金20,800,000

問2店舗用の土地3,000,000円を購入し、仲介手数料90,000円・登記料30,000円とともに普通預金から支払った。

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仕訳付随費用は取得原価に含める
借方科目金額貸方科目金額
土地3,120,000普通預金3,120,000

問3決算(3月31日)にあたり、当期の12月1日に取得した備品(取得原価900,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロ)の減価償却を、定額法・間接法で行う。

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仕訳900,000÷5年×4/12=60,000円(12月〜3月の4か月)
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費60,000減価償却累計額60,000

問4期首に、備品(取得原価400,000円、減価償却累計額240,000円、間接法)を100,000円で売却し、代金は月末に受け取ることにした。

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仕訳帳簿価額160,000円を100,000円で売却 → 売却損60,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額240,000備品400,000
未収入金100,000
固定資産売却損60,000

問56月30日に、車両運搬具(取得原価2,000,000円、期首の減価償却累計額1,200,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法・間接法)を750,000円で売却し、代金は現金で受け取った。決算日は3月31日である。

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仕訳当期の償却費:2,000,000÷5年×3/12=100,000円。帳簿価額700,000円 → 売却益50,000円
借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額1,200,000車両運搬具2,000,000
減価償却費100,000固定資産売却益50,000
現金750,000

問6店舗の壁の塗り替え(原状回復のための修理)を行い、代金150,000円を現金で支払った。

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借方科目金額貸方科目金額
修繕費150,000現金150,000

問72027年度〜 備品(取得原価500,000円、減価償却累計額450,000円)を除却した。処分見込額は10,000円である。

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借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額450,000備品500,000
貯蔵品10,000
固定資産除却損40,000

08純資産(第13章)

問1増資のため、株式100株を1株あたり70,000円で発行し、払込金額は当座預金に入金された。

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借方科目金額貸方科目金額
当座預金7,000,000資本金7,000,000

問2株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、株主配当金800,000円と利益準備金の積立て80,000円が決議された。

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借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金880,000未払配当金800,000
利益準備金80,000

問3決算で当期純損失450,000円が計算されたので、繰越利益剰余金勘定に振り替えた。

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借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金450,000損益450,000

09そのほかの費用(第9・14章・付録A)

問1地元の商工会議所の年会費30,000円を、現金で支払った。

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仕訳団体の会費は諸会費
借方科目金額貸方科目金額
諸会費30,000現金30,000

問2倉庫会社に、商品の保管料18,000円を普通預金から支払った。

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仕訳商品の保管料は保管費
借方科目金額貸方科目金額
保管費18,000普通預金18,000

問3新店のオープンを知らせるチラシの印刷代80,000円を、現金で支払った。

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仕訳広告・宣伝のための費用は広告宣伝費
借方科目金額貸方科目金額
広告宣伝費80,000現金80,000

問4駐車場として借りている土地の地代50,000円を、普通預金から支払った。

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仕訳土地を借りて支払う地代は支払地代(建物の賃借なら支払家賃)
借方科目金額貸方科目金額
支払地代50,000普通預金50,000

問5店舗で購読している新聞の代金4,000円を、現金で支払った(ほかに適当な勘定科目はない)。

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仕訳どの費用にも当てはまらない少額の費用は雑費
借方科目金額貸方科目金額
雑費4,000現金4,000

10決算整理・訂正仕訳(第15〜19章)

問1期首商品棚卸高は60,000円、期末商品棚卸高は75,000円である。売上原価を仕入勘定で算定する。

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借方科目金額貸方科目金額
仕入60,000繰越商品60,000
繰越商品75,000仕入75,000

問2売掛金500,000円と電子記録債権300,000円の期末残高に対して、3%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。貸倒引当金の残高は10,000円である。

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仕訳(500,000+300,000)×3%=24,000円、24,000-10,000=14,000円
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入14,000貸倒引当金14,000

問311月1日に6か月分の家賃300,000円を受け取り、全額を受取家賃として処理していた。決算日(3月31日)に前受分を計上する。

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仕訳前受分は4月の1か月:300,000×1/6=50,000円
借方科目金額貸方科目金額
受取家賃50,000前受家賃50,000

問4借入金1,200,000円(年利率2.5%)の利息は、毎年1月31日に1年分を後払いしている。決算日(3月31日)に未払分を計上する。

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仕訳2月〜3月の2か月:1,200,000×2.5%×2/12=5,000円
借方科目金額貸方科目金額
支払利息5,000未払利息5,000

問5決算日に、未使用の収入印紙6,000円と郵便切手2,000円が残っていた。

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借方科目金額貸方科目金額
貯蔵品8,000租税公課6,000
通信費2,000

問6期首に、前期末に計上した前払保険料24,000円の再振替仕訳を行った。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
保険料24,000前払保険料24,000

問7得意先から普通預金に振り込まれた売掛金36,000円を、誤って63,000円と記帳していた。これを訂正する。

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仕訳27,000円多く記録していたので、差額を逆に戻す
借方科目金額貸方科目金額
売掛金27,000普通預金27,000

問8決算整理後の収益(売上950,000円)と費用(仕入620,000円、給料210,000円)を損益勘定に振り替え、当期純利益を繰越利益剰余金に振り替えた。3つの仕訳をしなさい。

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仕訳収益の振替
借方科目金額貸方科目金額
売上950,000損益950,000
仕訳費用の振替
借方科目金額貸方科目金額
損益830,000仕入620,000
給料210,000
仕訳当期純利益の振替:950,000-830,000=120,000円
借方科目金額貸方科目金額
損益120,000繰越利益剰余金120,000

問9車両運搬具の減価償却は、年間見積額600,000円を月割で毎月計上している(月次決算)。決算整理前残高試算表の減価償却費は550,000円である。決算月(3月)の分も同様に計上する。

解答・解説を見る▼
仕訳月割額50,000円。計上済みの11か月分に、決算月の1か月分だけを加える
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費50,000車両運搬具減価償却累計額50,000

SUMMARY

道場を出る前に

  • ✓間違えた問題は、分野の見出しにある章の「試験の急所」を読み直してから、もう一度解く
  • ✓3周目は、すべての問題を1問30秒以内で解くことを目標にする
  • ✓本番では、仕訳を書いたら必ず「借方合計=貸方合計」を確かめる
  • ✓迷ったときは、5要素のホームポジションと「増えたらホームポジション、減ったら反対側」の原則に立ち返る

APPENDIX

付録D模擬試験(本試験形式・60分)

60分で解いてみよう ― 本試験形式の模擬試験

第1問(仕訳15問・45点)、第2問(20点)、第3問(35点)。本番と同じ構成と配点の模擬試験だ。時間を計って解き、解答と解き方の手順で採点しよう。

読了目安 60分+採点難易度 ★★★

GOALS

この章で学ぶこと

  • ▸本番と同じ形式・時間で、3級の問題を最後まで解き切る
  • ▸第3問の「期中の未処理事項」と「決算整理事項」を、手順どおりに処理する
  • ▸採点結果から、復習すべき章を特定する
この章の目次▼
  1. 01受験のルール
  2. 02第1問(45点:各3点)
  3. 03第2問(20点)
  4. 04第3問(35点)
  5. 05採点と復習

01受験のルール

模擬試験のルール
項目内容
試験時間60分(タイマーをセットしてから始める)
配点第1問45点、第2問20点、第3問35点(100点満点)
合格ライン70点以上
使ってよいもの電卓、計算用の白紙
解く順番(おすすめ)第1問 → 第3問 → 第2問

02第1問(45点:各3点)

問1商品450,000円(税抜価格)を仕入れ、代金のうち50,000円は注文時に支払った手付金と相殺し、残額は消費税(10%)とあわせて掛けとした。消費税は税抜方式で処理する。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
仕入450,000前払金50,000
仮払消費税45,000買掛金445,000

消費税は450,000×10%=45,000円。支払総額495,000円のうち、手付金50,000円を差し引いた445,000円が買掛金になる(第5・9・14章)。

問2商品380,000円をクレジットカード払いの条件で販売した。カード会社への手数料(販売代金の3%)は販売時に計上する。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
クレジット売掛金368,600売上380,000
支払手数料11,400

手数料は380,000×3%=11,400円。売上は総額で計上する(第7章)。

問3従業員の給料620,000円の支払いにあたり、所得税18,000円、住民税22,000円、社会保険料(本人負担分)64,000円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
給料620,000所得税預り金18,000
住民税預り金22,000
社会保険料預り金64,000
普通預金516,000

給料は総支給額で計上し、天引き額は預り金とする(第10章)。

問4社会保険料について、従業員負担分64,000円と会社負担分64,000円を合わせて、普通預金から納付した。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
社会保険料預り金64,000普通預金128,000
法定福利費64,000

会社負担分は法定福利費(第10章)。

問5業務用のオーブン1,200,000円を購入し、据付費30,000円とともに、代金は月末に支払うことにした(勘定科目は備品)。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
備品1,230,000未払金1,230,000

据付費は取得原価に含め、商品以外の後払いは未払金(第9・12章)。

問69月30日に、備品(取得原価900,000円、期首の減価償却累計額540,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法、間接法)を200,000円で売却し、代金は翌月末に受け取ることにした。決算日は3月31日であり、当期分の減価償却費は月割で計上する。

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借方科目金額貸方科目金額
備品減価償却累計額540,000備品900,000
減価償却費90,000
未収入金200,000
固定資産売却損70,000

当期の減価償却費=900,000÷5年×6/12=90,000円(4月〜9月)。帳簿価額=900,000-540,000-90,000=270,000円。200,000円で売ったので売却損70,000円(第12章)。

問7前期に発生した売掛金150,000円が、得意先の倒産により回収不能となった。貸倒引当金の残高は90,000円である。

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借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金90,000売掛金150,000
貸倒損失60,000

前期発生の債権は、まず貸倒引当金を取り崩し、不足分を貸倒損失とする(第11章)。

問8決算において、現金過不足勘定の貸方残高4,500円の原因を調べたところ、受取手数料6,000円の記入漏れと、郵便切手代800円の記入漏れが判明した。残額は原因不明である。

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借方科目金額貸方科目金額
現金過不足4,500受取手数料6,000
通信費800
雑損700

貸方残高の現金過不足を借方に書いてゼロにし、判明した原因を仕訳したうえで、貸借差額700円(借方)を雑損とする(第3章)。

問9増資のため、株式300株を1株あたり50,000円で発行し、払込金額は普通預金に入金された。

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借方科目金額貸方科目金額
普通預金15,000,000資本金15,000,000

3級では払込金額の全額を資本金とする(第13章)。

問10株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、株主配当金600,000円と利益準備金60,000円の積立てが決議された。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金660,000未払配当金600,000
利益準備金60,000

決議の時点ではまだ支払っていないので未払配当金(第13章)。

問11買掛金280,000円の支払いのため、取引銀行を通じて電子記録債務の発生記録を行った。

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借方科目金額貸方科目金額
買掛金280,000電子記録債務280,000

(第8章)

問12銀行から、借入期間9か月、年利率3.2%で2,000,000円を借り入れ、利息を差し引かれた残額が普通預金に入金された。

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借方科目金額貸方科目金額
普通預金1,952,000借入金2,000,000
支払利息48,000

利息=2,000,000×3.2%×9/12=48,000円(第9章)。

問13出張から戻った従業員から、タクシー代4,800円と宿泊費12,000円の領収書の提出を受け、出張前に渡していた概算額20,000円との差額を現金で受け取った。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費16,800仮払金20,000
現金3,200

概算払いは仮払金で処理していたので、確定した旅費に振り替え、残額を回収する(第9章)。

問14店舗を賃借し、保証金400,000円、1か月分の家賃200,000円、不動産会社への仲介手数料200,000円を普通預金から支払った。

解答・解説を見る▼
借方科目金額貸方科目金額
差入保証金400,000普通預金800,000
支払家賃200,000
支払手数料200,000

保証金は返ってくる権利なので資産(第9章)。

問15得意先から商品の内金50,000円を現金で受け取った際に、誤って売上として処理していたことが判明した。これを訂正する。

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借方科目金額貸方科目金額
売上50,000前受金50,000

誤った仕訳「現金/売上」の逆仕訳「売上/現金」と、正しい仕訳「現金/前受金」を合算し、現金を相殺する(第16章)。

03第2問(20点)

問1(10点:各2点)

当期(4月1日〜3月31日)の保険料勘定と前払保険料勘定の記入である。保険料は、毎年11月1日に1年分(216,000円)を普通預金から支払っている。前期末には、4月〜10月の7か月分を前払保険料として計上した。空欄(ア)〜(オ)に当てはまる勘定科目または金額を答えなさい。

保険料
借方貸方
4/1 (ア)126,0003/31 前払保険料(ウ)
11/1 普通預金216,0003/31 (エ)(オ)
(イ)(イ)
前払保険料
借方貸方
4/1 前期繰越126,0004/1 保険料126,000
3/31 保険料(ウ)3/31 次期繰越(ウ)

問1第2問・問1の解答

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(ア)前払保険料 (イ)342,000 (ウ)126,000 (エ)損益 (オ)216,000

保険料
借方貸方
4/1 前払保険料126,0003/31 前払保険料126,000
11/1 普通預金216,0003/31 損益216,000
342,000342,000
前払保険料
借方貸方
4/1 前期繰越126,0004/1 保険料126,000
3/31 保険料126,0003/31 次期繰越126,000
252,000252,000
  • 4/1:前期末の前払分の再振替(保険料/前払保険料)。
  • 3/31:11月1日に支払った1年分のうち、翌期4月〜10月の7か月分を繰り延べる。216,000×7/12=126,000円。
  • 3/31:当期の保険料(126,000+216,000-126,000=216,000円)を損益勘定に振り替えて締め切る(第15・19章)。

問2(10点:各2点)

次の文の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる語句を、下の語群から選びなさい。

  1. 仕訳帳に記入した取引を、総勘定元帳の各勘定に書き移す手続きを(ア)という。
  2. すべての勘定の借方の合計と貸方の合計が一致することを、(イ)の原理という。
  3. 期中に費用として処理した支払額のうち、次期以降の分を資産として繰り延べるときに用いる勘定を、まとめて(ウ)という。
  4. 資産・負債・純資産の勘定に「次期繰越」と記入して締め切り、翌期首に「前期繰越」と記入する決算の方法を、(エ)決算法という。
  5. 売掛金元帳や商品有高帳のように、特定の勘定の内訳を記録する補助簿を(オ)という。

語群:仕訳/転記/試算表/貸借平均/前払費用/未払費用/英米式/大陸式/補助元帳/補助記入帳

問1第2問・問2の解答

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(ア)転記 (イ)貸借平均 (ウ)前払費用 (エ)英米式 (オ)補助元帳

現金出納帳や仕入帳のように、取引の明細を発生順に記録する補助簿は「補助記入帳」。特定の勘定の内訳を記録するのが「補助元帳」だ(第2・15・16・19章)。

04第3問(35点)

株式会社アイアンワークス(24時間ジム「IRONWORKS 24」を運営し、店内でプロテインなどの商品も販売している)の、次の資料にもとづいて、損益計算書と貸借対照表を作成しなさい。会計期間は×8年4月1日〜×9年3月31日である。

資料1:決算整理前残高試算表(×9年3月31日)
借方勘定科目貸方
286,000現金
5,450,000普通預金
260,000売掛金
640,000クレジット売掛金
180,000繰越商品
1,020,000仮払消費税
150,000仮払法人税等
6,000,000備品
1,500,000差入保証金
買掛金520,000
借入金2,400,000
仮受金80,000
仮受消費税1,860,000
貸倒引当金6,000
備品減価償却累計額2,300,000
資本金5,000,000
繰越利益剰余金1,209,400
売上18,600,000
受取手数料116,600
2,400,000仕入
7,800,000給料
990,000法定福利費
2,750,000支払家賃
960,000水道光熱費
180,000保険料
300,000広告宣伝費
1,100,000減価償却費
90,000租税公課
36,000支払利息
32,092,000合計32,092,000

表は横にスクロールできます →

資料2:決算日までに処理していなかった事項
番号内容
1仮受金80,000円は、法人会員からの売掛金の回収であることが判明した。
2法人会員から売掛金60,000円が普通預金に振り込まれていたが、記帳していなかった。
資料3:決算整理事項
番号内容
1期末商品棚卸高は210,000円である。
2売掛金とクレジット売掛金の期末残高に対して、1%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。
3備品の減価償却は、年間見積額1,200,000円(定額法・間接法)を月割で毎月計上しており、4月〜2月の11か月分は計上済みである。決算月も同様に計上する。
4収入印紙の未使用分が8,000円ある。
5保険料180,000円は、×8年7月1日に1年分を支払ったものである。
63月分の家賃250,000円が未払いである。
7借入金2,400,000円(年利率2%)の利息は、毎年12月31日に1年分を後払いしている。当期の未払分を計上する。
8受取手数料のうち30,000円は、次期の分を前受けしたものである。
9消費税(税抜方式)の処理を行う。
10法人税等は、税引前当期純利益の30%とする。

問1第3問の解答と解き方

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手順1 期中の未処理事項を先に処理する

仕訳資料2の1:仮受金の内容判明
借方科目金額貸方科目金額
仮受金80,000売掛金80,000
仕訳資料2の2:売掛金の回収の記帳漏れ
借方科目金額貸方科目金額
普通預金60,000売掛金60,000

売掛金は260,000-80,000-60,000=120,000円に減る。これを先に処理しないと、手順2の貸倒引当金がずれる。

手順2 決算整理仕訳をすべて書き出す

仕訳1. 売上原価(仕入の行で計算)
借方科目金額貸方科目金額
仕入180,000繰越商品180,000
繰越商品210,000仕入210,000
仕訳2. 貸倒引当金:(120,000+640,000)×1%=7,600円、7,600-6,000=1,600円
借方科目金額貸方科目金額
貸倒引当金繰入1,600貸倒引当金1,600
仕訳3. 減価償却(月次決算):1,200,000÷12=100,000円(3月分のみ)
借方科目金額貸方科目金額
減価償却費100,000備品減価償却累計額100,000
仕訳4. 貯蔵品
借方科目金額貸方科目金額
貯蔵品8,000租税公課8,000
仕訳5. 前払保険料:×9年4月〜6月の3か月分 180,000×3/12=45,000円
借方科目金額貸方科目金額
前払保険料45,000保険料45,000
仕訳6. 未払家賃
借方科目金額貸方科目金額
支払家賃250,000未払家賃250,000
仕訳7. 未払利息:1月〜3月の3か月分 2,400,000×2%×3/12=12,000円
借方科目金額貸方科目金額
支払利息12,000未払利息12,000
仕訳8. 前受手数料
借方科目金額貸方科目金額
受取手数料30,000前受手数料30,000
仕訳9. 消費税
借方科目金額貸方科目金額
仮受消費税1,860,000仮払消費税1,020,000
未払消費税840,000

手順3 税引前当期純利益を出し、法人税等を計上する

収益:売上18,600,000+受取手数料86,600=18,686,600円

費用:16,886,600円(下の損益計算書の法人税等より上の合計)

税引前当期純利益=18,686,600-16,886,600=1,800,000円

仕訳10. 法人税等:1,800,000×30%=540,000円、未払分540,000-150,000=390,000円
借方科目金額貸方科目金額
法人税、住民税及び事業税540,000仮払法人税等150,000
未払法人税等390,000

手順4 財務諸表に表示する

損益計算書(×8年4月1日〜×9年3月31日)
費用金額収益金額
売上原価2,370,000売上高18,600,000
給料7,800,000受取手数料86,600
法定福利費990,000
支払家賃3,000,000
水道光熱費960,000
保険料135,000
広告宣伝費300,000
減価償却費1,200,000
租税公課82,000
貸倒引当金繰入1,600
支払利息48,000
法人税、住民税及び事業税540,000
当期純利益1,260,000
合計18,686,600合計18,686,600
貸借対照表(×9年3月31日)
資産内訳金額負債及び純資産金額
現金286,000買掛金520,000
普通預金5,510,000借入金2,400,000
売掛金120,000未払費用262,000
貸倒引当金△1,200118,800前受収益30,000
クレジット売掛金640,000未払消費税840,000
貸倒引当金△6,400633,600未払法人税等390,000
商品210,000資本金5,000,000
貯蔵品8,000繰越利益剰余金2,469,400
前払費用45,000
備品6,000,000
減価償却累計額△2,400,0003,600,000
差入保証金1,500,000
合計11,911,400合計11,911,400

表は横にスクロールできます →

手順5 必ず確認するポイント

  • 売上原価=180,000+2,400,000-210,000=2,370,000円
  • 支払家賃=2,750,000+250,000=3,000,000円、支払利息=36,000+12,000=48,000円
  • 減価償却費は1,100,000+100,000=1,200,000円(1年分)。累計額は2,300,000+100,000=2,400,000円
  • 未払費用=未払家賃250,000+未払利息12,000=262,000円
  • 貸倒引当金は、売掛金・クレジット売掛金のそれぞれから1%ずつ控除して表示する
  • 繰越利益剰余金=1,209,400+当期純利益1,260,000=2,469,400円(試算表の金額のまま書かない)
  • 損益計算書と貸借対照表の、それぞれの左右の合計が一致する

05採点と復習

配点と採点の目安
大問配点採点のしかた
第1問45点1問3点。借方・貸方の勘定科目と金額がすべて合っていて正解
第2問 問110点空欄1つ2点
第2問 問210点空欄1つ2点
第3問35点損益計算書・貸借対照表の金額の正答数÷全体の金額の数×35点(目安)

採点したら、次の順で復習する

  1. 1

    70点以上なら合格圏

    間違えた問題の章の「試験の急所」を読み直し、同じ問題をもう一度解く

  2. 2

    第1問が36点未満なら

    付録Cの仕訳道場を、1問30秒になるまでくり返す

  3. 3

    第3問が25点未満なら

    第18章の決算整理仕訳を白紙に書き出す練習をし、第19章の表示ルールを確認する

  4. 4

    最後に

    ネット試験の模擬問題や過去問で、別の問題を60分で解いて仕上げる

SUMMARY

模擬試験のまとめ

  • ✓解く順番は第1問→第3問→第2問。配点の大きい問題から確実に取る
  • ✓第3問は「未処理事項→決算整理仕訳→法人税等→表示」の順に、すべての仕訳を書き出してから解答する
  • ✓月次決算の減価償却は決算月の分だけ、貸倒引当金は未処理事項を処理した後の残高で計算する
  • ✓貸借対照表の繰越利益剰余金には当期純利益を加える